P.06 回想:〜☆月△日 ヨーロッパ某所にて・追記〜
6月16日に、一部修正しております。
妖精達に惑わされそうになった「泉の森」。
空港に向かう列車の中で手記をまとめていた時の事。
以前訪れた「泉の森」近辺に住んでいる子供達から聞いた、ジョン爺の話し以外にももうひとつ噂があったことをふと思い出した。
「『泉の森』の奥深くに、幽霊屋敷がある」
「幽霊屋敷には、スリーピースのスーツを着た男の幽霊が出るらしい」
「幽霊に捕まったらとり憑かれてしまい、二度と屋敷から出られなくなる」
等々・・・。
妙に具体的で曖昧な噂だった。
何故過去形かと言うと・・・。
実は私は、幽霊屋敷の側を通った事があった。
確かに、痛みかけた屋敷の壁には蔦が這いまわり、外壁の八割を覆っていて不気味な印象があった。
でも・・・。
花壇には色とりどりの花が植えてあって、温室にも緑鮮やかな観用植物が茂っている。
そして何より・・・。
一組の男女がベンチに腰かけ、楽しそうに談笑していた。
・・・はて?
「男性」って点はOK。
確かにスリーピースのスーツを着ている。
補足するのなら、ワインレッドのリボンタイを締めている事だろうか。
でも、足があるし影もある。
・・・立派な人間さんではありませんか?
それはそれとして。
ひとり増えてない?
ダークグリーンのドレスを身に纏い、長い金髪を結い上げた女性が男性の隣にいる。
噂とは全然違う事に、私は驚いた。
それとも、幽霊さん(人間さん?)の事情が変わったのかな?
どうでもいいけど。
女性が私に気づき、微笑みかけてきた。
男性は私に気づいていないようだ。
私は女性の幽霊さんに会釈を返すと、そのまま踵を返した。
お邪魔したら、悪そうだったし・・・。
もちろん、真相をばらす気なんて毛頭ない。
世の中、知らない方がいい事がある方がいいもんね。
「アンジェラさん?どうされましたか?」
「いいえ。そこの木にリスがいたものですから・・・」
ふたりの声を、私は背中越しに聞いた。
ちょっと得したような、ちょっと残念なような気持ちになった事は内緒だ・・・。
fin...
回想〜☆月△日 ヨーロッパ某所にて・追記〜
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
実はこのお話は、私の執筆した他作品「近くて、遠くで・・・」の後書きの最後の方に出したなぞなぞの答えであり、「近くて、遠くで・・・」とリンクしています。
そして、「近くて、遠くで・・・」の「彼女」の名前も出しました。
*アンジェラ
「彼女」の名前です。
由来としては「アンジェラス(Angelus)」が基になっています。
意味としては、キリスト教用語で「お告げの祈り」もしくは、お祈りをする時間を告げる「お告げの鐘」という意味でも使用されます。
歩が「泉の森」を探索していて、ふたりの住む家をたまたま見つけてしまった。と言うわけです。
超常現象や未解決ミステリー等を解明しようとする番組や著書がありますが、本当にごく一部の物(特にミステリー関係)に関しては「謎のままにしておいた方がステキなんじゃないかなぁ?」と歩は思っています。
そんな考えもあったので、即興で書かせて頂きました。
歩の旅は、まだまだ続きます。