P.04:〜旅の途中で〜
少しネガティブ風味有り。
苦手な方は閲覧注意願います。
私は歩。
旅が趣味の人間である。
旅の相棒は大きな革のトランクひとつ。
気の向くまま、時間の流れるまま、私はどこまでも行く。
そんな旅の途中の話である・・・。
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旅に出るときに、彼に必ずやるやりとり。
「今度はどこまで行くんだ?」
"うーん。・・・行ける所までかなぁ?"
「必ず帰ってきてくれるか?」
いつも彼はこう聞いてくる。
"当然。どうしたの?"
「時々不安になるんだ」
"何が?"
「歩が旅に出るたびに、二度と帰ってこないんじゃないかって・・・」
"・・・・・・・・・・・"
「なあ、答えてくれよ。帰ってきてくれるよな?」
私は不安そうな彼の顔を見る。
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私は実は、何度かこのままいなくなってしまおうと考えた事があった。
家族、友達、そして恋人全て捨てて、本当にこの世の果てまで歩いていって・・・。
終着駅も決めていた。
それは・・・壮大な岩々が連なる峡谷。
彼の方が先に見て、私に写真を送ってくれた。
それは私も見てみたかった景色だった。
彼が見た同じ景色を、一度でいいから見て、
そして、その後は。
私はまだ、その選択肢は捨てずにいる。
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でも、私は笑顔で
"何言ってるの。ちゃんと帰ってきますって"
"お土産もたくさん買ってくるし、土産話だってたくさんしますから"
彼はほっとした顔になった。
「わかった。楽しみにしてるよ。いってらっしゃい」
と、笑顔で送り出したくれた。
さて、今度はどこに行こうか。
そろそろ桜のシーズンだよなぁ。
どこか桜のキレイなところに行こうか。
私はトランクを担ぎなおし、見送ってくれている彼に大きく手を振った。
fin...
旅日記シリーズ〜旅の途中で〜、また書くことが出来ました^^
今回は、ちょっと私の暗黒面に触れてますが・・・。気分を害しちゃったらゴメンナサイ。
*歩が見たかった景色
「グランドキャニオン」の事です。
ある人曰く、その場に佇み、景観に圧倒されて、その場で涙する人もいるとか。
「自分って何てちっぽけな存在なんだろう」「何て壮大な景観なんだろう」と思うようです。
とても感動的な風景なんでしょうね。
そこで夕日と星空を見てみたいと思っている歩でした。
・・・念のため書いておきますが、ちゃんと帰ってきますからね?