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旅日記  作者: 山菜歩
16/20

P.15: 〜△月×日 アフリカ某所にて〜

私は歩。

旅が趣味の人間である。

旅の相棒は大きな革のトランクひとつ。

気の向くまま、時間の流れるまま、私はどこまでも行く。

そんな旅の途中の話である・・・。





何だか変わった・・・と言うより、変な名前が多い部族だ。


たまたま電車から降りた先で見つけた部族の印象だった。


―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―


部族の人によると・・・。

首長が名前をつけることになっていて、「首長がテントから出た時に見たもの」の名前をつける。


サンライズとか、ブルースカイとかならまだわかる。

シルフも何とかOK。

きっと強風でも吹いていたのだろう。


ただ・・・。

明らかにおかしいだろ的な名前が・・・

フライングバード?

ツードッグファイト??

ボルケーノ???

・・・・・・・・・・

うちの故郷に来たら、明らかに新聞の三面記事モノですよ?


・・・でも、ボルケーノは何か分かる気がする。

どこかの奥さんが怒り狂っていたのだろう。


私のネーミングセンスはゼロだが、首長ほどひどくはない・・・と自信を持って言える・・・ようになった。

今日初めて。

・・・嬉しくないけど。



―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―


昼食を振舞われているときに小耳に挟んのだが、表立っては言わないけど、部族の人々も首長のネーミングセンスには辟易しているらしい。


“そりゃあ、そうだよなぁ・・・。

むちゃくちゃな名前、付けられたくないもん。”

私はぼそっとつぶやいたのだった。

部族の人々も、私の一言に苦笑していた。


昼食後。

やはり長老も私の発言を耳にしたていたのか、長老が私に提案した。

「今日、赤ん坊が生まれる。そこまで言えるのなら旅人さんが名前をつけてくれ」

と。


私は快諾した。


出産シーンに立ち合いたかったが、部族のしきたりで、産婆と夫以外の人が立ちあう事は禁止されているとのこと。

・・・一女性として、経験してみたかったんだけどなぁ・・・。

待つしかないか。

来客用のテントがあてがわれ、私は夜明かしした。


―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―


・・・夜中。

不穏な会話が風に乗って私の耳に入ってきた。


・・・ふぅん。そう言うこと。


私はトランクから、ある物を取り出した。




―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―


明け方。

おぎゃぁ・・・おぎゃあ・・・。

いつの間にかテントの骨組みにもたれかかって、うとうとしていたらしい。

私はテントから出て、外を見る。


「無事に生まれましたぞ!さあ旅人さん、この子のお名前を!」

赤ちゃんは女の子だった。


実はもう、私は決めていた。

"ティアナ"

"ここの国の言葉ではありませんが、「夜明け」という意味です。そして、私がテントから出て、始めに見えた物です"

部族の人々は「おおっ」と歓声を上げた。

「素晴らしい!」

「いい響きだ!」

えへへへへ。

誉められて嬉しかったけど・・・。


首長はプライドをいたく傷つけられたらしく、私に敵意を向けていた。

側近の男達に命じて私の周囲を取り囲む。

やっぱりね。

おぉ、棍棒持ってるよ。


同時に私は動いていた。


後ろ手に持っていた、缶ジュースほどの大きさの黒い缶のボタンを押し、うろたえたふりをしながら、数秒待つ。

そして、缶を彼らの方に放り投げた。


彼らが一瞬たじろいだ瞬間、私はをトランクを抱えて回れ右。

一番弱そうな男を蹴り倒して、猛ダッシュ。

3・・・2・・・1・・・はいっ!


「はいっ!」という心の掛け声と同時に、ガスの噴出音と共に苦痛の悲鳴が上がったのだった・・・。

前日から、不穏な空気が漂ってたのは感じ取っていたんだよねぇ・・・。


昨晩、グレネ―ドタイプの催涙スプレーの安全キャップを外しておいて正解だった。

てか、寝込みを襲われると思ってたんだけどなぁ・・・?


取りあえず、赤ちゃんに被害が及んでいませんように・・・。



―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―


5分ほど走り回って、鉄道に飛び乗る。

さてさて。危機も脱したことだし。

今度はどこに行こうかなぁ?


私は荒い呼吸をしつつ、青いラベルのスポーツドリンクを一気にあおったのだった。


―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―


で。

赤ちゃんの名前だけど・・・。

・・・「ある物」の名前だったと言うことは内緒にしておこう。

だって私、ネ―ミングセンスゼロなんだもん。


そう言う私も、やっぱりあの首長に負けていないかもしれない・・・。




fin...


旅日記シリーズ15弾、最後までお読み頂きありがとうございます。



アメリカンジョーク全開でお届けしました。

本当のアメリカンジョークでは、もっと卑猥な名前が出てきますが、作品削除されるのを恐れて極力ソフトになるようにしました。

そこが一番苦労したかもしれません(ぇ


最近よく聞く、(歩に取っては)珍妙な名前。

どう考えても、名前の響き重視で、使っている漢字はもはや当て字。

新しい読み方まで作っちゃうツワモノも。

・・・その辺はある意味、感心していたりもするのですが・・・。

あと、意外と多いのは「憂」を使った名前。

「何で?」と思った方!

辞書を引いてみてください。


教養って大事だなぁ…。と思う次第です。


赤ちゃんの名前>>

「ティアナ」という「自動車」の名前です。

意味は作中に書かれている通りです。


お前はアホかと突っ込まれるのは覚悟の上です。


歩の危機脱出シーン>>

リアルの私は、あんなに機敏には動けません。

パニくるのがオチです。

ちょっと書いてみたかったのです。



さてさて・・・>>

実はこの旅日記シリーズ、終わりまで第3コーナーを切りました。

今後の展開は、かなり急になるかもしれません。

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