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いずれ覇王と成る君へ  作者: エマ
臥薪嘗胆編
3/73

第三節 鬼



(間に合うのかこれ? )


 全速力で森の中を走る。


 ヘレダントは都市の最北部にあると聞いた。

 とりあえず太陽で方角を確認し、その方向へ足を全力で回転させる。


「忙しそうだな!! 」


 風が渦巻く音の中で、真横から声が聞こえた。

 その方に顔を向けると、そこにはさっきの赤髪の男が居た。


「そういやあんた誰だ? 」


「俺? リューク・リンネ。この学校で新入生の教師してる 」


「ならなんでここに? 」


「サボった!! 」


(こんな奴が教師でいいのか? )


「俺強いからな〜、サボってもなんとも言われねぇんだよ 」


「ん? 」


 すぐにリュークを睨みつけるが、本人はにんまりと気持ち悪く笑っていた。


「どうした? 心が読めるってのはそんなに珍しいか? 」


「あぁ、そんな奴は見たことがない 」


「…………そうか。まぁそう言う魔法ってことだ 」


「あー魔書の魔法か、便利だな。てうぉ!? 」


 急に腰を捕まれると、そのまま抱えあげられた。

 間近にあるリュークの顔はご機嫌そうに笑っている。


「運んでやる! 俺の方が速いからな!! 」


「……そりゃどうも 」


 抱かれている現状にすこし困惑するが、運んでもらえるのなら楽でいい。

 しかも俺の3倍ほど、リュークの足は速かった。


(…………ねむ )


 急に眠くなってきた。

 

 何だか分からないが……ねむい。

 そのまま目を閉じると、スっと意識は溶けていった。




ーーーーー



(……やらかした )


 気がつくと熟睡していた。

 起きたときにはもう、入学式とやらは終わっていたらしい。


(とりあえず教室とやらに行くか )


 てくてくと廊下を歩き、『23』と書かれた扉を開ける。

 すると無数の目線が俺に集まった。


 それはどうでもいいが、すこし困ったことがある。


(席はどこだ? )


「どうしたんだい? 」


 キョロキョロと辺りを見渡してると、一番前の席から声をかけられた。

 そいつは細い紫色の髪をした女だった。


「俺の席はどこだ? 」


「ここは自由席だからねぇ、適当に座っていいよ。ハルト 」


「……そうか 」


 そいつの隣を通りすぎ、1番後ろの席に座る。


(……ん? なんであいつ俺の名前を? )


 首をかしげ、後ろからあの女を見下ろす。

 そうしてると全員の髪がよく見える。


(……あれ、黒い髪は俺だけか? )


 辺りを見渡しても、黒い髪は自分だけしかいない。

 それが原因か、すこし自分が浮いてるように思えてしまう。


(あとで髪染めるか )


「よォよォよォ!! 待たせたなー 」


 そんな事を思ってると、教室の扉が開いた。

 そこから入ってきたのは、赤い髪をした男、リューク・リンネだった。


「俺がお前らの担任な〜。んで今から外に行くぞ〜、お前らの実力が知りたい 」


 めんどくさそうに髪を掻きながら、リュークは教室から出ていった。


(……何しに来たんだアイツ? )


 心の中で小さくツッコミを入れてると、周りの生徒たちはゾロゾロと外にではじめている。

 それに着いて行き、リュークが待つ中庭のような場所へ移動した。

 

 その隣には、虹色に光るクリスタルが浮いている。


「はいちゅうもーく。知ってるやつもいるだろうが、これに攻撃すればその威力が数字として出てくる……こんな風にな 」


 笑うリュークは、裏拳でそのクリスタルを殴った。

 すると遅れて鈍い音がひびき、クリスタルの上には『9999』と浮かび上がった。


「まぁ最高がこのくらい、これ超えれたら俺よりつえ〜って事だ。とりまがんばれ〜 」


 気だるそうにそう言うと、リュークの周りから10っ個ほどのクリスタルが現れ、それに向かって周りの人たちは魔術を放ちはじめた。


(……これが魔術か。自分以外の魔術とか始めてみた )


 飛び交う氷や炎、水。

 それをじっと見つめ、ゆっくりと情報を集めていく。

 こいつらが敵になった場合、少しでも有利になれるように。


「なぁ、あんた。リューク・リンネだろ? 」


 ふいに、背後から声がした。

 そこには雲のような白い髪と、血のように赤い目をした人間が、リュークに引きつった笑みを浮かべていた。


「あぁ、んだお前? 」


「ヤマト・ホルテンジエだ。俺こんなまどろっこしぃの嫌いだからよ、今から殺しあって、お前に勝ったら俺が最強ってことで良くねぇか? 」


「そりゃいいな、俺も退屈は嫌いだ 」


 ケラケラと笑い声がひびいた。

 瞬間、ヤマトの膝がリュークの顔面をえぐり、その足は首に絡みついた。


(あっ、完全に入ったな )


 そう思った。

 けれどヤマトの足は引きちぎられ、バランスの崩した体にあの拳が叩きつけられた。


 その体は大きくバウンドしながら、校舎に激突した。


(……あれ死んでね? )


「いってぇなぁ!!! 」


「ん、ゲシュペンストにしては丈夫だな 」


 土煙の中から顔を出したヤマト。

 その両足はうねるように再生し始め、ひしゃげた体からはバキバキと音が鳴っている。


「あー、やっぱ勝てねぇな 」


「伊達に3位やってねぇからな 」


「まぁそうだよなぁ〜。だからよぉ、お前を殺すのはやめだ 」


 再生が終わった足で立ち上がると、ヤマトの左目からは赤いヒビが走った。


「死んでもてめぇの腕をもぐ。こっからはただの嫌がらせだ 」


「威勢のいいやつは好きだぜ〜。まぁ、耳障りだと殺したくなるがな 」


「ん? 」


 ふと気がつくと、バチバチに殴りあってる二人の間に、背の高い女がいた。

 

 白く長い髪、星空のような青い瞳。

 それは透けて見え、世界から浮いているような異質を感じた。


(なんだアイツ? つーか気がついてないのか? )


 二人が殴り合いを続ける中、女はリュークを指ではじいた。

 それだけで体は吹き飛び、えぐれた地面だけが残った。

 しかもヤマトの方も、頬を掴まれて宙ずりになっている。


「やぁ。入学早々元気だね 」


「おふぁ!? ほっからへへきたんだほっ!! 」


「単純に瞬間移動しただけだよ。それと、理由なく殺し合うのは規則違反だからね? 」


 白髪の女はヤマトをポイッと捨てた。

 すると何故か、こちらに歯が見えるほどの笑みを向けてきた。


「やぁ、君がハルトだね 」


「……誰だお前? 」


「私はアルベ、アルベ・ヴァニタスさ。この学園の学長をしてるものであり……この世でもっとも強いバケモノだよ 」


 伸ばされた手から頬を触られ、頭を撫でられた。

 初対面のヤツにそんな事をされているのに、なぜか嫌な気がしない。

 なんというか……母親に撫でられているようだった。


(……どこかで会ったことがあるか? )


 そう感じた瞬間、今度はギュッと抱きつかれた。

 


 

 


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― 新着の感想 ―
[一言]  オギャリバッブのリプライからです。  第三話まで今日は読みました。冒頭のやりとりで『魔術と魔法』の違いをそれとなく匂わせて、第二、第三話で話をうまく広げているなと思いました。いきなり過剰な…
2021/11/30 21:35 退会済み
管理
[良い点] 連載開始おめでとうございます☆ のっけから戦闘戦闘で激しいですね(*´ω`)✧ 主人公も強いようですが、周りにもすでに規格外のつわものだらけで、今後多くの激戦が控えていそうな期待をしたくな…
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