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僕が踏み出す  作者: 黒羽 百色
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球技大会が素晴らしい結果で幕を閉じた後の話題と言えば、夏休み一択であった。あちこちから「海」「プール」「花火」「お祭り」といった夏の醍醐味の話題が飛び交った。目の前で「ゲーム」という夏関係無しのフレーズを口に出したのは俊哉だ。


「やるだろ?合宿」

合宿とは毎年恒例となった俊哉の家で何泊かしてひたすらゲーム対戦をする数日間の事である。昨年は三日間ほど泊まり込み、もうこのゲームはやらないと三人が口を揃えるほど遊び尽くした思い出がある。


「良いけど花火はー?」

「あー花火ね」

「暑いしなあ」

自分と俊哉は太一の誘いがなければ花火も祭も行かない。暑がりという体質だ。夏にはむいていないのが我々だった。でも結局行ってしまうのがいつもの流れだった。しかも三ヶ所ほど、なんだかんだで行って楽しんでしまうのだった。結局は今年もそうなるであろうと予想はできていた。


「おーう渡部。祭の日、空けといてー」

そう廊下で誘いがあったのは昼休みの事だった。平良に声をかけられたという事はその祭の当日はあの面々が揃うという事だろう。確か祭の日は俊哉と太一と約束は交わしていなかったため、断る理由は無く、そのまま参加の意向を伝えた。


「おっ躊躇しなくなったな」

確かに以前より迷いが無くなっていて、彼らに対する恐怖心も感じなくなっていた。


「じゃ、じゃがバタと焼きそば買いに行かされるんですかー?とか言い出すかと思ったんに」

軽い自分の真似が入った口調でそう言われると、平良から見た以前の自分がそんな姿だったのかと自分では気が付かなかった事実に少し驚いた。


「あそこの焼きそば、青海苔無いんだよね」

平良が驚いた声を上げる。

「んな事あんの?」

「あの焼きそばのおじさん知り合いで。若い頃、歯に青海苔付いてるの知らなくて、合コンで笑顔振りまいてたら歯を見せる度に笑われたって。」

平良が首を横に振り否定の動作をする。

「いや、だからって客に関係ないじゃん!」

「なんか‥同じ思いをしてほしくないみたい」

平良は笑い手を二度叩いた。


「ありがた迷惑だわ!てかお前説得しろよあの親父に青海苔付けろって!」

「顔も見たくないって言ってたよ青海苔の」

「顔って!まあ‥仕方ないか。じゃあ頼むな!」


自然な会話の流れ、吃る事なく言葉がすらすらと出てきた。まるで俊哉、太一との会話のような運びであった。ひょっとしたら女性陣の浴衣姿が見れるのではないかなどという期待も胸に、例年とは違う夏休みが少し楽しみに思えた。


「え!水嶋氏の浴衣姿は‥ぜひ写真を」

予想通りに俊哉が食い付いた。

「単体を撮るんはやばいでしょ‥俺なんかが」

「お前の出世っぷりなら大丈夫だろ」

簡単な物言いは聞き流し、一つ提案をしてみた。


「一緒に行かないか?」

「はあ?」

俊哉と太一が声を揃えた。

「いや、俺から言っとくよ。せっかくだし」

太一が目線を外し城島達をちらりと見て首を振る。


「いやあ‥いいよお。こーちゃんをお呼びなんだしさあ」

俊哉も大きく頷き賛同していた。


「いや、悪い奴らじゃないぞ?」

「別にそうは言ってねーよ。ただ、なあ?」

「うん‥まあ‥ねえ?」

実際前は自分も二人と同じ感覚だったため、苛立ちはしなかったが少し歯痒い想いも生じた。なんとなく、城島達を理解してもらえない事に対してなのだろう。


「まあ‥そっか。自分も今でも分からないよ。何でこう、引き込んでもらえるんだか」

「小難しく考えなくていいだろ」と俊哉が言う。

「お前飯食う時に食材見てさ、わあこれ全部元は生き物だったんだあ‥って考えたら食えないだろ?考え過ぎ」

ずれてるようで分かりやすい、評価のしにくい例えだが「考え過ぎ」という結論で納得した。


「まっ俺らは行かないって話。何かほら、違うじゃん?ちょっと世界がって言うかさ」

俊哉がそう言うと太一も同感と頷いていた。

「水嶋氏のは頼む!」という都合の良いお願いだけは忘れていないようだ。


城島達と親交が生まれてから、色々な人と話をする機会が増え、気付けば俊哉達と話す時間も無く休み時間が終わる事が何度かあった。あの二人は別に何も言わないのだが、こちらが勝手に気になってしまっていた。余計なお世話であるが、あの二人も友達だからこその自分なりの気遣いだった。まだこの時は、この気持ちがそこまで大きくなる事だとは思っていなかった。

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