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試験的小説及び実験用:新世界  作者: プニぷに
3/4

嘘つき少女1(約7分)

 朝の目覚め。

 3月29日、午前6:30。


 眠い。眠くて辛い。

 学校なんて行きたくない……でも行かなきゃ。


(行け。行かねばあのバカどもと同じだぞ)


「ふぁああ~、起きなきゃ」


 着替えて、朝ごはんを食べて、おにぎりを作る。


「あ、具がない……塩だけでいいかな」


 ≪ゴトッ……ガサガサ…………

(起きてくんな起きてくんな起きてくんな起きてくんな起きてくんな起きてくんな起きてくんな)

               ……ガチャ≫


 お弁当も自分で作る。お弁当と言っても、誰でも作れるおにぎりだ。


「おい、道の真ん中に立ってんじゃねえ」


 父親に片手ではたかれ、倒された。作っていたおにぎりが私の手から落ち、家の廊下を少し転がる。幸いなことにおにぎりはラップでホコリやゴミから守られた。


「ねぇ、……」


 言葉が続かない。


「あ? 何? お前が道の真ん中に立ってるからだろ! 邪魔にならねえところで作業しろ。高校生にもなってそんなのも分かんねえのかよ」


「なぁに~朝から、またパパの邪魔でもしたの? バッカじゃない。毎日毎日、よく同じことで怒られてるのに直せないね、知的障害の弟の方がアンタみたいなバカお姉ちゃんよりよっぽど頭いいわ」


 ああ、ダメだ。なに言ってるのか分からない。何? その「nAHBkibydぐHSGOBUSHO’&(!?」……え? どこの言葉?


「どこ? あれ? ……私、何してたんだっけ?」


「はあ!? あんたそんなことも分かんないの!? だったら高校なんてやめてさっさと働いてくださ~い()()のお・ね・え・さ・ま!」


「別に、天才なんて……」


 父親の部屋は入口近く。母親と弟は入口から入って右側の部屋。その間が食卓やら、炊飯器やらがあるところ。母親と弟の部屋の隣がテレビとか置いてあって、今父親が私が怒られたりアナタを睨んでいるけど、テレビに夢中で気付いてない。


「えっ、自分で言ってたじゃん。私は天才だぁ~、お前らバカは私に従えぇ~って」


 軽く笑い。それでいて盛大に人をバカにする言い方。

 もう飽きた、何も言いたくない。何も言わないと「おい! 人が話してんだから返事しろよ。た! い!わ! してくださぁ~い、家族だろ? 家族じゃないの? そっかぁ~!! お前みたいに逃げてばっかの奴に居場所なんかないよなぁあ!」って言われる。


 逆に何か言ったところで、例えば否定すれば「は? 言ってるから」と言われる。もしかして私って預言者とか未来視能力でもある? ってほど先が分かる。だからこそ、私にとっての『正解』も分かってる。


「学校行くから、じゃあね」


 荷物を持ち、落ちたおにぎりを拾って学生服のポケットに入れる。

 振り向かず、マスクを取り、家を出る。


「逃げんな! 嘘つき野郎!」


 何も聞こえない。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 人間がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 家に触れると音が響く。

 大きく吠えれば誰かにバレる。


 アスファルトに(ひざまず)き、地面を殴る。血が出ようと皮がむけようとも知ったことじゃない。

 くちびるを噛みしめ、心に留めておけなかった感情たちを処理してやる。口から漏れ出る罵詈雑言を誰にも聞かれないように、歯とくちびるをギチギチギリギリいわせて開放する。


「はぁ、何やってんだろ、私」


 学校に行ったところで、うるさいXXと遅刻してもなんともないXXに、面倒な授業をサボるために遅刻するXX。

 遅刻もせず、欠席もせず、授業も真面目に聞き、提出物もしっかりと出す私より、一部のXXの方が『優秀』で『有能』だなんて。


(おめぇは『やらなきゃいけないこと』しかやってねぇだろ! 自主的に勉強してんのか? 復習は? 予習は? 今日の小テストの範囲も知らねえてめえが何言ってんだ?)


「確かに、その通りだね」


 疲れた。寝よう。昨日だって遅くまで寝れなかったし、寝させてもらえなかった。大体にして、私だけ部屋が無いってのもおかしいし、ないから作ってやるって言った親が作った私の部屋が『元クローゼット』って、バカにしすぎじゃない?




「おい! 起きなさい!」

 

 どこからか音がする。


「あ? 誰だ?」


「警察だ、さっさと立て」


 手錠をかけられた。


「は? ていうかどこだよ。なにこれ? 手になんかキタネぇのが付いてんだが」


「大人を馬鹿にするんじゃない。自分の学校でクラスメイトを殺しておいて、今更言い逃れできると思うなよ」


「は? クラスメイト? 俺に、クラスメイトがいんのか?」


 手には血がついてるし、ポケットには包丁まであるし、周りに死体があるし、警察に囲まれちゃってるし、何が何だか分かんねえ。


「待て、何かの間違いだ。俺は昨日『加藤』の家にいたんだぞ! そんで朝起きたらここにいたんだ! 頼むよ、信じてくれよ」


「ふっ、それをその『加藤』とか言うやつは証明してくれるんだろうな」


「ああ、絶対だ。間違ってたら死んでもいい、男に二言はねえ」


「「「!?」」」


「お、あ、そうか。とりあえず下まで来い! 話はパトカーの中でも聞いてやる」


 なんだ、なんなんだ今の不自然な『間』は……あれ? なんだ、この服装。


「は!? なんで女もんの服なんか着てんだよ!」


「うるさい、黙って歩け」


 パトカーに入って、頭がグルグルし始めた。まぁ、当然か、普通こんなことに急に勝手になってたら誰だって頭がいっぱいになっちまう。刑務所にでも行くのかな? それまで寝てるか。

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