選ばれたのはあなたでした。
今回も失踪すると思いますがよろしくお願いします。
(あなたは選ばれました)
「?」
声なのか文字なのか言葉なのか分からない、分からないがハッキリとその言葉は僕の胸の内に響いた。
(あなたは次の世界で主人公になっていただきます)
「……」
そう言えば昨日遅くまで先輩と付き合って飲んで、倒れこむようにベッドで眠ったんだったか。となるとこれは、泥酔による夢中の世界といった所だろうか。言霊の様な物しか分からないのだけども。
(これは夢ではありません)
「?」
では何だというんだ。
僕が今どういう体制かは分からないが、反抗心からか顎を上げる。
(だからあなたは選ばれたのです)
「何に?」
(主人公に)
「……」
何で?どうして?何だか全く理解出来ない。
(あなたは前世で死を迎えたのです)
「!」
その言葉が胸に刻まれた時、一瞬だけ今まで感じたことがない鋭い痛みが胸元を抉った。
思わず胸に当てた掌の感触は妙で、べとついた何かが指に纏わり付き、肋骨と違う凸凹というか大きなくぼみが胸元にあった。それよりも妙なのは、どこに手を当てても聞こえるはずの心臓の鼓動が全く伝わってこない事。
「?」
胸元を見ても全く見通せる事はない。もっと詳しい情報が欲しい。
そう思った時だった。
(説明は向こうの世界で受ければよいでしょう)
「‼」
その言葉が刻まれた瞬間、今まで暗黒だった世界が一変した。
逆に眩しすぎて見えない真っ白な世界の中、僕は暗闇での何も理解できない中から一つだけ理解することが出来た。
僕の胸というより身体は、不可解に抉れてというよりは貫かれていて、おびただしい量の血が溢れ出ていたのだった。
夢なら早いとこ覚めてくれ。
突然の事に青ざめ血の気の引いた僕の身体は、それはそれは暖かく眩しい光に包まれ、全てが溶けてなくなるような感覚に襲われるのだった。