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ニュートンが生まれる少し前

作者: 平岩藩士

長い不況を乗り越えたK市は著しい経済成長を見せていた。

不況が長かっただけあり、市民たちは大いに盛り上がった。

街へ出ると、路上には踊っている人や、酒を飲み交わす人などであふれかえっていた。

しかし、その陽気な集団の中に1人だけ冷めきった表情をした男がいた。

男は彼らに蔑むような視線を送りながら、自ら執筆した化学実験の論文記事を眺めていた。

「われながらいい出来だ。今回の実験はよくできた」

男そうつぶやくと、その場を離れ、早足で自宅に戻った。

男の自宅は、立派な二階建てで、リビングには暖炉まで設置されている立派な家であり、近所でも噂が立つほどである。

帰宅するやいなや、男は勢いよくリビングにすべりこんだ。

男はリビングの中央に置かれた木製の椅子に深く腰をかけた。

暫し、本日の新聞を読んだ後、男はため息をついた。

「近頃の人々はなにも分かっちゃいない。私はこの世の全てを理解しているのだから、始めから私の経済成長策に従っていれば、不況もこんなに長引かなかったはずだ」

そう言った男はさらに顔をしかめてこう続けた。

「この世の全ての事象はもうすでに解明できているのだから、人々は私のような正確な判断力と文句の付けどころの無い知識を持った人間に従っていればいいのだよ」

溜まりに溜まった怒りが頂点に達した男は、机に拳を思い切り叩きつけた。

その際、男の腕は机上に置かれていた真っ赤なリンゴにぶつかり、鈍い音を立てて床に落ちた。

それを見た男は、少しヘコんでしまったリンゴを拾いあげ、元の位置に戻した。

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