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日本文化と日本刀で世界征服ーーー勇者にして魔王になった男ーーー  作者: 上運天大樹
第一章 勇者召喚からの魔王転職編
7/21

日本刀と勇者 第一話 勇者、昼行燈になる。

 後半、唐突にかなりのゲス話になります。

 下ネタが苦手な方はご注意ください。


 その日から、清盛の新たな生活は始まった。


(こりゃあ、どういう事じゃい)


 一先ずは見学から、と言われながら清盛は、王都でも一番の精鋭と言われている騎士団の訓練に混じったが、それは、贔屓目に行っても、ヤル気が無い様にしか見えず、悪し様に言えば、大きな子供が騎士ごっこをしているようにしか見えなかった。

 訓練場だというのに、そこかしこに休憩用のイスやテーブルがセットされており、そこで適当に紅茶を飲みながらチェスに応じているバカが居たかと思えば、適当に役を決めて斬られ役にひたすら適当な名前の技を打ち込むだけの、本物の騎士ごっこをしている者も多い。

 この世界では未だに剣技が戦闘の主流らしいが、その割にはこの訓練場では、走り込みはおろか、素振りをする者すら禄に居なかった。

 このありさまを街の住人が見れば、騎士ごっこの方がまだましだと答えるだろう。この国では、こんな下らないごっこ遊びをする為だけに、貴族達に大金をはたいて騎士の恰好させているのである。


 最早、呆れるを通り越して、この国の国民に対して、同情さえしてしまう。


 だが、呆れてばかりではいられない。これからこの国に厄介になる清盛は、これからはこの無能どもとともに、もしくは、この無能どもを上司として、戦場に行かねばならないのである。

 正直に思う。

 こんな奴らと一緒に戦場に行くくらいならば、真っ裸になって一万人の軍隊と戦った方が、まだ生存確率がある気がする。


 それとは裏腹に、下級兵士の訓練を見れば、かなり苛烈で苛酷な訓練が施されており、個人の武力といい、一糸乱れぬ集団行動と言い、常に高い士気を持つ、かなり高度な軍事訓練を受けた練度の高い軍隊となっていた。

 驚いたのは、塹壕を掘っての遠距離攻撃からの防御を初めとする、戦闘陣地の設置までが訓練の中に入っており、工兵隊の指揮や補給部隊の実務も、彼ら下級の兵士や士官がこなしていたことである。

 その中でも特に清盛が気を引いたのは、彼ら下級の兵士達には、戦術の基礎や軍事知識、軍事情報に詳しく、その逆に貴族階級の中には、それらの知識や情報を持っている者は皆無であったことであろう。


 聞けば、この世界では魔法が高い威力を持つ、一種の兵器として使用される傾向にあり、それ等の攻撃魔法から身を守るために、これらの塹壕を初めとする近現代的な戦闘陣地が使用されるという事であった。

 それならば、別にわざわざ鎧甲冑に身を包まずとも全員が魔法を使えば、武術や格闘技を学ぶ必要などないのではないか、とも思ったのだが、どうやらそうはいかないらしく、魔法を使えるのは、貴族や王族を初めとした、ごく一部の富裕層だけであるらしく、平民を始めとする多くの下層階級の人間にはそれらの特殊な訓練や教育は行われておらず、魔法の様な強力な攻撃方法は通常、使用できるものではない。

 その為、魔法を使用できる人間が戦場に立つ場合は、ある程度魔法を使用して疲労した後に、歩兵や騎士たちによる接近戦に持ち込む、というのが一般的な戦闘方法であるようだ。


 すなわち、貴族階級にしてみれば、平民階級とは体の良い肉壁でしかないのである。


 つまり、貴族たちに名ばかりの騎士ごっこをやらせておけるのは、此処に理由があったのだ。

 だが同時に、平民たちがなぜこれほどに高い士気を保ったまま、過酷な訓練に耐えられるのかもわかった。


 彼ら平民階級の人間たちは、貴族ほどの教育を受けられない為に、底辺から成り上がる手段が殆ど無いと言って等しく、商売などは行商人以外ではほぼ貴族を初めとする既得権益に独占されており、行商人を初めとする残された職業は全て、命がけの職業ばかりである。

 その中で、兵士をやることを選んだものにとっては、戦場で武勲を上げることは、貧乏から脱出するための数少ないチャンスであり、此処で活躍できねば、後は野垂れ死にしか残されていないのだ。

 また、先述したように、貴族階級にとっては平民などとは体の良い肉壁である以上、壁を守るために全力を尽くすわけなど無く、自分自身で身を守らねばならないのだ。

 その為、自分自身の命を守りつつ、大金を得るためにも訓練をこなさねばならず、自然、教養や知識は無くとも、軍事的な情報や知識には詳しくなっていき、反対に、貴族階級からはその手の知識が失われているのである。


 そのことを知った瞬間に清盛は、地べたが揺らいだような感覚に襲われ、頭痛をこらえるようにその場を後にしたのだった。


(これから先、この国において最大の敵、というよりも、勢力。と言った方がええか。となるのは、こいつ等、下級兵士どもじゃろうなア)


 訓練場を後にした清盛は、過酷な訓練に打ち込む下級兵士達の姿を王宮の廊下から眺めつつ、呑気にそう思った。


(儂が勇者として結果を出す、出さないにかかわらず、恐らく、これからこの世界は相当に荒れることになるじゃろう。その時に、次代を担う大きな原動力となるのは、実戦で戦力となる、こいつ等、屈強な訓練を受けた下級兵士どもになる。儂にとって、生きるか死ぬかはこいつ等との付き合い方次第じゃ)


 清盛は、肝に銘じるように深くそう思うと、これからこの世界そのものが辿っていくであろう大きな流れに浪漫にも似た思いを馳せながら、同時に、冷静に是から来るであろう過酷で過激な未来を予想する。

 

(ここまで大々的に儂を『勇者』として厚遇する以上、儂の行動は、その成果に寄らず、世間に強い影響を与えるじゃろう。成功したならば、「魔族」を退ける程の英雄として、儂は持て囃される。失敗したならば、「魔族」は、『勇者』を超える程に強い。という事になる。

 成功した場合は、儂に対抗するためにこの国を初めとする世界各国は、軍備の増強に動き出し、失敗した場合は、独自の勢力だけで「魔族」に対抗するために軍備の増強に動き出すじゃろう。

 どちらに転んでも、世界各国の軍拡競争は避けられぬ事態じゃ。その時に何よりも発言力を増すのは、他でもない、鍛え上げられた精鋭たちによる、軍事力)


 刹那の内に清盛の脳裏に浮かび上がったのは、三国志や戦国時代を初めとする乱世の時代の先触れか、或いは、幕末の日本か、フランス革命に端を発した近代化するヨーロッパ世界だった。

 清盛は、目の前で広がる格差が逆転する光景と、それに伴って繰り広げられる虐殺を思い浮かべながらも、それらの残像を頭を振って無理矢理振り払うと、思考を続けながらも、その場から離れていった。


(これから先、この国の行く末を担うのは、実戦部隊を中心とした軍事力になろうじゃろう。である以上、できれば、あそこらの兵士達を相手に、何とか親交を結びたいところじゃが、問題は、この首輪じゃ)


 足早にその場を立ち去り出した清盛は、忌々しそうに自身の首に纏わりつく金色の輪を人差指でなぞった。


(こんな得体のしれんモンが首に掛かっとる内は、誰かと知り合うどころか、下手に動き回ることもできん。外そうにも外れんし、奴らはこの首輪を外すそぶりも見せん。こいつは、どうやら儂の動きを制限するための物でほぼ間違いないじゃろう。最低でも、儂を殺すための仕掛けが一つは着いておって間違いない。他にも、盗聴や盗撮、洗脳、何ちゅう機能がついておってもおかしくはないのう。いずれにせよ、早めにこの首輪は取り外さにゃならん)


「うまくいかんもんじゃのう、人生は」


 清盛は、首の周りに纏わりつく嫌に冷たく感じる金属の感触に、苦々しく呟くのであった。



ーーーーーーーーーーー★ーーーーーーーーーー


 その日の午後。


「本当に、うまくいかんもんじゃのう、人生は」


 清盛は、目の前に積み上げられた無数の本を目の前にして、深く溜息を吐きながらそう言った。


 一先ずは軍隊の見学を終えた清盛は、軍隊での実践訓練を無理を言って途中で切り上げてもらい、魔法について調べることをしたい。と主張したため、それが受け入れられて、今日一日中軍隊で訓練するはずだった予定を取りやめて、午後からは図書館での魔法講義を受けることになった。

 清盛の無茶苦茶な言い分を聞いて、指導教官は呆れた様な侮蔑した様な冷たい視線で不承不承ながらも了承してくれたことに、清盛としては、心中で心苦しい思いではあったのだが、寧ろ、王国側からは歓迎された。

 元々、この国が勇者に求めている能力というのは、軍隊を率いて手足のように動かす軍才でも無ければ、戦場で斬った張ったをして生き残ることのできる武才でもなく、強力な魔法を連続で発射することのできる一種の戦略兵器としての能力である。

 王国としては、そう言う下級兵の訓練に混じって貴重な時間や体力を使われるよりも、さっさと街を吹っ飛ばすような魔法の一つか二つでも覚えて、『魔族』どもをぶっ殺して来い。という、思いだったろう。

 だが清盛は、瞼の裏に焼き付いてしまった指導教官の冷たい視線に、心の中で手を合わせながら呟いた。


(ほんに、悪いことをしてしもうたのう)


 何しろ、この軍隊で軍事訓練を受けたいという要望は、元々清盛の方から出したものである。

 それなのに、訓練に混ぜてくれと言った人間が、午前中訓練に混じって、もう辞めますと言えば、誰であっても、ああいう冷たい眼はしたくなるだろう。

 とは言え、清盛側にも言い分が無いではない。

 実は、今回清盛がこの王国の軍隊の訓練に混じらせてもらったのは、軍隊での生活や訓練内容、兵隊の練度や全体的な人格と言ったことを調べる為であり、ぶっちゃけ、少し混じっただけでもこの国の軍隊がもう既に腐りきっていることがわかってしまった以上、あまり長居をする意味が無かったのだ。

 ただ、そんな事情など、聞かされていない方からしたら、知ったこっちゃねえの一言である。どころか、自分の半分の人生も生きていない様な生意気なガキに大勢の兵士達の前で恥をかかされて、良い面の皮である。


(本当にスマンことをしてしもうたのう。いつか必ず、この貸しは返すから、それで勘弁してつかあさいや。それよりも今の最大の問題は、)


 脳裏に浮かんだ図らずも恥をかかせてしまった指導教官の顔を、軽く頭を振って追い払った清盛は、今目の前に山積みされた書物を前にして、現状打破のために最も効果的な方法を考えるが、トンと思い浮かばなかった。

 それよりも今、清盛の頭を悩ませているのは、


「いいですか!魔法とは、即ち魔力。魔力を感じることこそが、魔法の全てです。そして魔法を操る為のモ力を練る。という事です。魔力を練るためには、ただひたすらにインスピレーションを研ぎ澄ませることです!インスピレーションを研ぎ澄ませるためには、ただ、精神の耳に全神経を傾けるのです」


 目の前で、図書館の真ん中だというのに、やたらと張り切って大声を上げて演説紛いの講義を行う、神経質そうに痩せ細った白髪頭の初老の男性である。


 名前を何というか忘れたが、かれこれ二時間以上、彼の演説を聞いているのだが、魔法が使える使えない、以前の問題として、彼の言っていることがさっぱりと判らない。


 どうも彼は、清盛が基礎的な魔法の能力を持っていることを前提として話を進めてくるのだが、そもそも、基礎以前にこの世界の常識を知らない清盛からしてみれば、彼の口から発せられる単語の一つ一つが意味不明な言語なのである。


 彼の言う通りに従って、魔力を練る。という事をしてみるのだが、どうも一向にそれらが達成できた様子が無い。


 恐らく目の前の魔法学者には、魔法を研究する才能はあっても、魔法を教える才能は致命的に存在しないのであろう。

 それはさておき、


(これは、考えものじゃのう)


 魔法の才能の片鱗も見せない清盛の様子に、ややヒステリックになりながら訳の分からないこと言う、目の前の魔法学者の言葉を聞き流しながら、清盛は、どう頑張っても感じられない魔力の流れとやらに溜息を吐き、顎を撫でた。


(この分じゃと、儂は下級兵を引き連れて直接最前線の戦闘地域に出る羽目になるじゃろうな)


 今現在の所、全くと言っていいほど感じない自分の魔法の才能を見て、清盛は内心で舌打ちをしつつそう思った。

 正直、清盛の見立てでは、自分を戦力として見た場合、そこまで魅力は無かった。

 魔法に関して言えば、実際の才能の有無はともかくとして、一日二日、やたらと神経質そうに痩せ細ったおっさんの小難しい話を聞いただけで使える様な単純なものではないし、仮に使えたとしてもどうにか騙して隠し通す気でいるので、少なくとも表面上は魔法の才能の皆無の小僧として振る舞うつもりである。

 そもそも重ねて言うならば、自分の魔法の才能にはそもそも期待していない。

 もっとも基礎的な技術であるはずの魔力を練るという行為すらも全く行えない現状からすれば、それは当然の結論であるが。

 だが、それでも敢えて魔法を隠す理由は単純で、清盛が魔法を使える事が王国側に知れ渡れば、その瞬間に清盛は、王国上層部の奴らに嬉々として戦場に放り出されるに違いないからだ。

 剣道や空手と言った武道は身に着けているものの、それはあくまでも競技用であり、実戦的な戦闘技術としては、何処まで使い物になるのかは未知数である。


 異世界から召喚された勇者として一番に期待されている魔法の才能が無い。とされている現状、戦力としての重要度は途端に小数点以下にまで下がる。


 無論、魔法は使えずとも軍隊の訓練に耐えられるだろうし、今でも貴族のお坊ちゃんたち程度よりは体力も戦闘能力もあるはずだから、少なからず新人の一兵卒程度の戦力にはなるだろう。多少の知恵とハッタリをかませば、勝敗はともかく、軍隊を率いるだけならばできるだろう。


 ただ、問題はその後である。


 主要戦力としては然程期待できないが、下級兵士たちに戦場を任せる程の影響力はある人間が、国王の目の届かない戦場の最前線に出向く。


 正直に言えば、人類の存亡をかけた勇者にしては不安しか感じない文言である。


 否、もっと直接的に言おう。


 こんな奴、目障りで鬱陶しいだけである。


 まず第一に、国家の存亡をかけたこの戦いで主力として期待できない。という段階で、邪魔である。

 そもそも、清盛がわざわざこの世界に呼ばれた理由は、『勇者』が地球世界で言う所の核兵器級の戦力である。という、前振りがあったである。

 それがその実、戦ったとしても、勝つかどうかはわかりません。となっては、国家の威信はガタ落ち。

 フルール王国としても、博奕を打つ気はないはずだ。

 

 そして第二に、そんな成功するか失敗するかもわからない人間が、曲がりなりにも軍の指揮権を左右することができる立ち位置に置かれるのだ。


 勝利する確率は低く、敗色は濃厚。敵前逃亡の可能性や、最悪、謀反の可能性まであることを鑑みれば、生かしておくことの方が実害があるというもの。


 こういう人間の利用価値というのは、精々が過大公告か、無意味な特攻だけになる。筋書きとして最もあり得るのは、王都から出陣して旅立たされた適当なところで、正体不明な盗賊団に抹殺されるか、小規模な軍隊だけ連れて魔族の激戦区へと追いやられて戦死。と言ったところだろうか。 

 恐らくこのままでいれば、遠からずにどちらかの未来がやってくるはずだ。


 清盛は、目頭を揉み込みながら深く溜息を吐くと、


「……忠臣蔵でもやるしかないか」 


 誰にも聞こえないように、そう低く小さく呟いた。




ーーーーーーーー★ーーーーーーーーーー



 三日後。


「いやあ、ホンマに勇者に呼ばれた甲斐がありましたのう!こんな別嬪さんたちに囲まれて、美味い酒を呑めるんでしたら、こんな店があるなら、何度でも勇者召喚されたいもんですなあ!」

「いやいやいやいや。高名な勇者様にそこまで言われていただき、誠に恐縮至極でございます。そんなに褒められてしまっては、宿泊費を安くしてしまいたくなってしまうではありませんか~」

「じゃあ、今夜もここに泊まらせてもらっちゃおうかな?かなあ?」

「そんな~!よろしくお願いします」


 清盛は、腰蓑一丁でスタイル抜群な裸の美女を両脇に侍らすという、見事なまでのバカ殿スタイルを決めて、この娼館の主と一緒になって高笑いを上げていた。

 今清盛がいるのは、スラム街にほど近い娼館だった。

 此処は、比較的にはであるが、スラム近辺の場所にしては治安が整っており、生活に困った人間が多い。

 その為、自然と体を売る女性や、その斡旋をする為の店が増えていき、色町として有名成っていたのである。


 この世界の性風俗は、矢張り見た目通りにどこか中世から近世にかけてのヨーロッパに近いところがあり、上流階級の男達が性欲を満たす為に呼ぶ娼婦たちは、高級娼婦として通常の売春婦とは区別される。

 上流階級のマナーとして、一度に数人の女性たちを相手にして夜を過ごすようなことは下品とされており、少なくとも地位や身分のある様な男が女遊びに興じる時というのは、社交界で有名な高級娼婦たちを相手に、一夜に着き一人と遊ぶものだ、と言われており、こういう所で遊ぶことはしない。

 しかし、だからと言ってこういう遊びに興味のない人間がいないわけでもなく、特に、上流階級の人間でありながらも、地位や身分の無い、血気盛んで素行の荒い者たちは、こういう場末の娼館に足を運んで、まさしく、今の清盛の様なことをすることはよくあることである。

 元居た世界で例えれば、ディスコやキャバクラに通いまくる様なことである。


 そんな街がを知った清盛は、早速とばかりに王都でも有名な娼館へと足を運び、それからの三日間というものずっと、娼館通いを続けているのである。


「いやー、おっぱいの大きい綺麗なねえちゃんを抱き枕にして寝るんわ、儂の夢の一つでしたけえ。こんな形で叶うとは思うておりませんでしたけえの、ホント人生は何が起こるかわかりませんなあ」


 そうして、すっかりと顔なじみとなってしまった娼館の店主を前にして、清盛は大きく笑いながら半裸になった胸を張る。

 ちなみに、これは演技ではなく、素である。

 清盛は確かに、ジジ臭い枯れた趣味が多い上に、口調もジジ臭いから勘違いされることもあるが、別に本当に枯れたジジイではないのである。

 タつときにはタつところがタつし、デるものだってちゃんとデる。

 多少の変態が入っているかもしれないが、血の騒ぎを押さえるのに苦労する若人なのである。


「その上、おっぱいどころかケツまで形がいいもんですけえ、腰が止まりませんなあ。勢い余ってあそこの穴だけでは足りなくなってしもうて、ついつい体中でしごきまくってしまいますのう」


 ……多少の変態かもしれないが、タダの若者である。


「本当に、女っちゅうんはええもんですのう。もう、喘ぎ声を聞いただけでもイッてしまうし、一度でも腰を交えてしまえば、止めるのに一苦労ですわあ。何しろ、延々腰が動いてしまいますけえの」


 …………多少の変態


「昨日なんか、おっぱいパフパフしながら、美女二人に肉布団された上、ケツ穴まで弄りながら寝たんですがのう、いやあ、あんなに気持ちのいい眠りというのが、この世にはあったんですのう!


 訂正。完全なる変態である。もとい、精神的には完全なるエロジジイであろう。


 そんな、精神年齢エロジジイとなってしまった清盛は、その実、


(こんな形で童貞卒業してしまった儂が言う事でもないんじゃろうが、金のやり取りで色恋沙汰の真似をする事ほど、空しいものはないのう。特に、自分の物でも無い金をこんなことに使っておれば、尚更、そう思ってしまうわい)


 一夜を共にした女の肩に腕を回しながら、そんなどうしようもないことを考えていた。

 




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