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日本文化と日本刀で世界征服ーーー勇者にして魔王になった男ーーー  作者: 上運天大樹
第一章 勇者召喚からの魔王転職編
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勇者と奴隷 第一話 勇者、勧誘する。その一


一先ひとまず、話しをするために場所を変えようか。この状況では、碌に話し合えるものも話し合えん」


 清盛はアルフレッドの喉元に突き詰めていた手刀を下ろすと、周囲に転がっている残り『氷雪の蒼龍』のメンバーを見渡した。


「ふむ。さて、とりあえずは倒れとる奴の治療が先じゃな」


 清盛はそう言うと、雷に打たれて倒れている三人と、毒針で意識を失ったアリアを同じ場所に集めると、小さく合掌して薬師如来の真言を唱えた。


 すると、瞬く間に三人の傷が治り、アリアに至ってはすぐに目を覚ました。


 そして、未だに眠っているヒルデガルダ、カティア、ニコラスの三名を置いて、清盛は土の檻に近寄ると、すぐさまにその檻を解いて中に閉じ込められていたフレデリカを解放する。


 余りにもあっけなく人質を解放し、けが人を治療する清盛に、思わずアルフレッドは警戒心を剥き出しにして質問する。


「……どういうつもりだ?一体、何の目的があって俺達をここに呼んだ」


「そもそも、その話をするために此処で待ち合わせしとったんじゃろうがい。お互い、色々と想定外の事がありすぎて根本を見失っとるが、元々の目的は忘れたらあかんじゃろう」


 だが、アルフレッドの質問に清盛は呆れたようにそう言うと、先ほどアルフレッドの手元からはじいた剣を拾い上げて、アルフレッドに柄の方を向けて差し出した。


 暫くは清盛を睨みつけていたアルフレッドは、大きく溜息をついて差し出された剣を手に取ると、そのまま静かに剣を鞘の中に納めながら溢す。


「……悪魔の契約を持ち掛けられたみてえな心境だ。命を助ける代わりに魂を取らせそうだな」


 アルフレッドの清盛に対する評価に、清盛は喉の奥を鳴らす様に笑った。


「悪魔、か。それはどうかのう?儂はもうちょいと、別のものかもしれんと自分ではうぬぼれちょる」


「何だ?勇者とか呼ばれて舞い上がってんのか?それとも、本気で自分の事を神のみ使いだとでも思っているのかよ?」


「まさか」


 アルフレッドの辛辣な言葉を聞いて、清盛は喉の奥を鳴らす様に笑うと、訝し気な顔をするアルフレッドを振り向いて、言う。


「儂は、悪魔よりももっと悪い奴じゃとおもっちょる」


 清盛はおどけた口調ながらも、その眼光をやたらと冷たく光らせて清盛にそう言ったのだった。




              ☆★☆★☆★☆★



 ニコラス達三人が気絶から目覚める頃、清盛は六人の冒険者を前にして胡坐をかいた。

 清盛の前には、清盛が王城からくすねていたシートの上に座り込んだ六人が、清盛を睨みつけている。


「まずは、改めて礼を言うとするかのう。アルフレッドさんには色々と面倒を掛けた上に迷惑までかけてしまったのに、これほど迅速に的確に話し合いの場を設けてくれたことには、感謝の一念しかない」


 そんな中、何はともあれ、一先ず話し合いの場所を設けたアルフレッドに清盛は感謝するが、アルフレッドはそれをにべもない言葉で言い返した。


「感謝されるほどの事をした覚えはねえな。どっちかというと、逢うなりイキナリボコボコにされた事を謝ってほしい気分だ」

 

 しかし清盛はその言葉に笑いながら答えると、片手を上げながらかるく頭を下げて謝った。 


「すまんすまん。別に驚かすつもりも、襲い掛かるつもりもなかったんじゃが、ちょいと気配を殺し過ぎたわい。儂も表立って動くには色々と問題がある身じゃけえ許してつかあさい」


 物の数分で上級冒険者を壊滅させたとは思えない程軽い謝罪に対して、『氷雪の蒼龍』のメンバーは一瞬難しい顔はしたものの、アルフレッドはそんな清盛の言葉を軽く溜息をついて流した。


「まあいい。それで?アンタが俺達に依頼したいことってのは何だ?俺は、お前に『依頼したいことがある』としか聞かされちゃいな。一体、アンタほどの実力を持つ人間の用件ってのが何なのか、効かせてもらいたいもんだ」


「ほうか?それじゃあ、取りあえず何から話そうかのう?」


 清盛はアルフレッドの言葉に少しだけ考え込むように顎に手を当てると、アルフレッドはそれに対して右手を上げて制止する。


「悪いが、最初から話してくれ。こいつ等には何も話してねえから、イマイチ状況が飲み込めてねえ。俺としても、正直、お前との付き合い方は決めあぐねているとこだ」


 アルフレッドの言葉に、「成程」と頷くと


「分かった。そもそもの話し、儂がアルフレッドさんに、」


「アルだ。アルで言い。お前にさん付けされても気持ち悪いだけだ」


「わかった。では早速、儂がアルから頼んだことから話すとしよう」


 清盛はそう言うと、自分の首元に絡まっている細い鎖を指し示した。


「こうして顔を合わせた人にこんなことを言うのもあれじゃが、実は儂は監視されておる。恐らくは、この鎖がその為の道具じゃろうな」


「……ふむ。証拠は?その話が本当ならば、今この瞬間の会話も利かれている筈だ。そんな明け透けに言われても信じきれるものではないぞ?」


 清盛の突然の告白に、ヒルデガルダは訝し気な顔をして答えた。

 確かに清盛の言っていることは全て主観的な意見の実であり、客観的な証拠も証言も無い。

 だが、そんなヒルデガルダの言葉に清盛はにっぱりとえがを浮かべると、


「証拠はない。証拠はないが、確信はしとる」


 と、あっさりと言い切った。


「……話にならないじゃない。いきなり話が飛んだ上に、その話の証拠もないんじゃ、アンタの話しをどうやって信じればいいのよ?」


「じゃあ、お前等は魔物や魔獣を見つけた時に絶対に暴れないと言われたからって、無防備に触りに行くか?」


 フレデリカの呆れかえった様な言い分に対して、だが、清盛は軽く小首を傾げながら、あっさりとたとえ話で言い返すと、フレデリカはその反論に言葉を詰めて黙り込む。 


「それと同じじゃい。確かに、証拠がない以上、儂自身も被害妄想かなあとも思わんでもないが、少なくとも、用心を重ねて置いて損は無い程度には、王城に儂の居場所は無いなあ」


「成程。それで?そんなどこにも居場所のない勇者とは名ばかりの昼行燈様、もとい、やたらと腕の立つ妖しい腕利きの戦士が、何でこんな所に私たちを呼び出したのだ?」


 清盛の言葉に黙り込んだフレデリカに変わって、やや納得したように清盛の言葉に頷いたヒルデガルダは、そこでわざわざ棘のある言い方で清盛を睨みつけるが、それに対して清盛は軽く頷いた。


「そう。儂は王城には自分自身の居場所がない、その上、この鎖の魔導具で監視されておる所為で、碌に仲間も創り出すことができん。そこでじゃ、アルに初めて会った時に儂はそのことをアルに伝えたのよ。

 あの時儂は、空中に字を書くことでアルに『監視魔法の聞かない場所を探しとる』と伝えたんじゃ。そしたら、アルも又儂と同じように指で空中に文字を書きながら、儂に『野晒の森』というのがある。と儂に教えてくれたんじゃ」


 その時、『氷雪の蒼龍』のメンバーには、冒険者ギルドで突然に喧嘩し出した二人の行動が脳裏によみがえり、納得がいったような表情を浮かべると同時に、こんなヤバい奴と裏で取り引きをしたのかという叱責に似た表情を浮かべてアルフレッドを見やった。


 微妙に冷たい空気が流れる六人の冒険者を見て、やや苦笑を浮かべながらも清盛は話を続けた。


「なんでも、後で調べてみたところ、この『野晒の森』は魔力の濃い場所に存在していることで、偵察用の遠隔透視や気配察知の魔法が効かんという話じゃった。じゃから、基本的にはこの森の散策では腕のいい偵察者が必要となる。そうじゃろう?アル」


 清盛の言葉に、アルフレッドは頷いた。


「ああ。単純に監視魔法の聞かない場所で話し合いをするというのなら、この場所以上に最適な場所はない。密約を交わしたり、表に出せないような依頼をするときによく使われる場所でもある」


 仲間達の冷たい視線から逃れる様に清盛の言葉を肯定したアルフレッドに、清盛は軽く肩を竦めると、剣道着の袖の中にしまっていた地図を取り出した。


「儂はさっき言った様に、暫定とは言え監視されとる身じゃからな。表立って仲間を集めることもできん。じゃけえ、あの時は喧嘩をしとるふりをしながら、儂に少しでも協力してくれる人間を集めようと思うっとったら、そこにアルや、お前さんら『氷雪の蒼龍』が現れてのう。

 儂の指の動きだけで儂の事情を察してくれた上に、此処までの道順を示した地図もくれてのう。ついで、この場所で依頼を請け負うてもらおうと思ったちゅうわけじゃ」




「つまりはこういう事でいいのね?

 あなた、オダ・キヨモリは勇者として異世界から召喚され、良い生活を送ってはいるけれども、同時に王城の人間に監視されている。

 あなたはその監視の目を誤魔化すために、わざわざアルと喧嘩までして監視魔法の利かないこの『野晒の森』の事を調べ、事のついでにアルに冒険者の依頼まで出した。


「そう言うことじゃ。文字にするのは簡単なんじゃが、ここまで来るのにだいぶかかったのう」


 フレデリカのまとめに、清盛は軽く笑いながら肯定すると、それを聞いたヒルデガルダが頭の痛そうに蟀谷を押さえて溜息をつく。


「……良く分かった。ウチのリーダーがあほだということと、勇者オダ・キヨモリ。お前がヤバい奴だというがな」


「怖いのう。美人の怒った顔は、儂みたいな小心者には堪えられんわい。許してつかあさい、許してつかあさい」


 今までになく鋭い眼力でヒルデガルダは清盛を睨みつけると、清盛はわざわざおどけた様子を見せつけてその顔を隠すが、顔を隠した腕から見える眼光だけは、禍々しいまでの輝きが宿っていた。

 何となく漂い始めた不穏な空気に、周囲のメンバーはヒルデガルダを諫めようとするが、そんな仲間の制止を振り切り清盛の前に進み出たヒルデガルダは、その禍々しい輝きを睨みつけながら清盛に宣言する。


「……一つだけ言っておくぞ、オダ・キヨモリ。貴様が私の仲間に手を出すというのであれば、私はキサマを刺し違えてでも必ず殺す」


「刺し違えてでも?あっははははは。化けて出るの間違いじゃろう?命を懸けても、天地がひっくり返っても、お前さんでは儂を殺せんよ。……ただ、肝には銘じて置こう。儂の命に懸けても、お前の仲間に手を出さんと」


 ヒルデガルダの言葉に、清盛は軽く笑いながらもあっさりと頷くと、漸く場の空気に平穏が訪れ、今度はヒルデガルダに変わるようにしてフレデリカが話の主導権を握る。


「それよりも本題に移りましょう。貴方の目的は何なの?小芝居までして、こんなところまで呼び出して、一体、私たちに何をさせようというの?」


 今までの流れで初めてフレデリカが話の核心に触れることを聞くと、不意に清盛は今までどことなく漂わせていた強者の空気を引っ込めて、あっさりと言う。


「唐突じゃが、儂は、これから銅山開発を行おうと思うちょる。お前さん等には、その手伝いとして銅山に入ってもらおうと思うちょる」


『は?』


「取りあえず、意味が分からないのだけど?何でそんなことの為に私達を呼んだのよ。というか、そんな事、冒険者に依頼する内容じゃないわよね?そもそもそんなことが成功すると思っているの?」


 余りにも突飛な事を言う清盛の言葉に、フレデリカは思わず錯乱気味に早口になって清盛に向かって突っかかるが、清盛はそんなフレデリカを見て愉快気に大笑いすると、再びとんでもないことを言いだした。



「安心せい。銅山開発など、十中八九失敗するわ」



 今度こそ『氷雪の蒼龍』メンバーは、清盛の言っていることの意味が解らなかった。


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