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日本文化と日本刀で世界征服ーーー勇者にして魔王になった男ーーー  作者: 上運天大樹
第一章 勇者召喚からの魔王転職編
18/21

勇者、そして魔王。 第三話 勇者、少しだけ魔王になる。後編

前・中・後で区切るつもりだったのに、予想外に伸びたので、完結編につなぎます。


「これで……。終わりです……」


「…………キラキラ、負ける」


 清盛の決死の回避行動に最後の勝機を見出したのだろう。

 仲間達が決死の思いで作り上げたこの好機を無駄にはしまいと、カティアは手にしたハンマーを構え直し、アリアは弓に矢を番えて清盛に向けて狙いを定める。


 そして、引き絞られたアリアの弓が清盛に放たれる瞬間、清盛は呻き声を上げながらもその場を転がりこんで弓矢の狙いを何とか外すと、ハンマーを振りかぶって突っ込んできたカティアの攻撃を何とか受け止め、鍔迫り合いへと持ち込む。

 その瞬間、清盛は好機とばかりに手の内に隠し持っていた針を今までの様にカティアに差した。


 だが。


(……何?!)


 今までの二人と同じく、咄嗟にカティアに毒針を刺そうとした清盛は、その時、カティアのつけているグローブが偽装改造された籠手ガントレットであり、更には、ローブその下には隠された鎖帷子チェーンメイルを着込んでいることに気付いた。

 魔術師めいたその恰好が、重戦士としての防御力は落とさないように出来る限りの機動力を確保したものであり、自分がまんまとカティアの罠に嵌まったことに気付いた清盛は、己の失策に心中で舌打ちをする。


 しかし時すでに遅く、カティアの華奢な見た目とは裏腹の力強さに、手にした針を刺すこともできずに振り下ろされたハンマーを受け止めることしかできない清盛は、徐々にカティアに押し込まれていく。


「……私は、重戦士、ですから……。他の二人よりも、……防御力は、高い……です。貴方の針は、効きません……」


「……その、様じゃ、……な!」


 清盛は、カティアの怪力に痺れ始めた腕に尚も力を籠めて抵抗していたが、その視界の端にアリアが移動して弓を構える姿を目にして、咄嗟にその場を再び転がり回ってカティアたちから距離を取った。


「ええい!!くそが!!」


 思わず口汚い罵りを上げながらも距離を取ることに成功した清盛は、そこで荒く息を尽きながらも立ち上がる。


 未だに矢の刺さった肩や脚からは血が流れ出しており、カティアとの鍔迫り合いの所為で腕に力が入らなくなっている。

 その上、清盛に刺さった矢には魔術封じの毒か何かが塗っているのか、魔術を使おうとすると途端に傷の痛みが増してしまい、清盛の使える魔術の大半が使えない状況になってしまっている。

 

 その時だった。


「さあ、これからが反撃の時間よ!!」


 今までになく威勢の良いフレデリカの声と共に、治療を終えたアルフレッドとヒルデガルダがカティアの隣に立ち、アリアを守るように、あるいはその逆にアリアが二人を守る様にフレデリカとニコラスは彼女の両隣りに立ち杖を構えた。


 そこに合ったのは、まぎれもなく『白金プラチナ』級冒険者パーティーの姿であり、その本気の姿だった。


 完全に臨戦態勢に入り、改めて立ちふさがった『氷雪の蒼龍』を前にして、清盛は矢で射られた脚を手でさすりつつその場を立ち上がると、深い深呼吸をした。


(……予想以上に苦しい状況じゃな。まさか、此処までやりおるとは、流石は『白金プラチナ』級の冒険者、と言うべきか。まあ、黙ってやられるつもりはないが、覚悟は決めねばならんのう)


 自分の実力が思いの外に高い物であったことと、それに胡坐をかいて調子に乗ったことを反省しつつも、清盛は本気になった実力者たちを前にして、不利な状況でも尚も諦めることなく空手の構えを取った。


 その瞬間、清盛の脳裏にはふと、今は亡き祖父の姿が蘇った。

 それは、古びた木材の匂いが染みついたボロボロの寺の奥に鎮座する仏像に、出家してつるつるに頭を剃り上げた祖父が手を合わせる姿だった。


 ――――――――じいちゃん、母ちゃん良くなるかな?

 ――――――――知らんがな。儂、仏さんと違うケエ

 ――――――――じゃあ、母ちゃん死んじゃうかなあ?

 ――――――――じゃから知らんて。儂、仏さんと違うって。じゃがまあ、仏さんの言葉を知っとったら気は楽になるのう。キヨ、お前についでに教えたるわい。


 そう言って祖父が教えてくれたかつての言葉を、清盛は口ずさむように呟いた。


「……オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ」


 清盛が唱えたのは、薬師如来の真言。

『氷雪の蒼龍』のメンバーには知る由もなかったが、その言葉は地球における仏への祈りの言葉であった。

 薬師如来は、その名の通りに病気やケガや、生まれて持っての障碍を癒す治癒の仏であり、その真言の加護は、清盛がこの真言を知って初めて清盛に効果を与えてくれた。



 清盛が薬師如来の真言を口にした途端、清盛の身体から流れていた筈の血が止まり、患部を射抜いてたはずの矢が抜け落ちてその下にあった穴はあっさりと塞がった。


 

 まるで呼吸をするようにあっさりと治癒の術を使いこなす清盛の姿に、『氷雪の蒼龍』のメンバーは目を見開いて驚愕する。


「バカな!!神聖術テオルギアだと!それも、高位神官ハイ・プリーストが使うレベルのものをこんなにも簡単に!!」


 余りにもあっさりと傷を治した治した清盛に、前衛に立っていたヒルデガルダは思わず絶叫したが、それは、清盛も同じだった。


「うわ!気持ち悪!何でこんなに簡単にあんな大怪我が治るんじゃ!!」


 清盛自身も、まさかお守り代わりに唱えただけの真言で、ここまで強い治療の効果が発揮されるなどとは思いもよらず、自分の身に起こったことが信じられずに大声を上げて騒ぎだし始めた。


 一方、『氷雪の蒼龍』のメンバーはすぐに自分たちの勝機が薄れたのを理解したのだろう。


 今まで隙を伺うように清盛の動きを注視していたが、前衛を務めている三人はすぐに清盛に襲い掛かり、アリアは清盛を牽制するために矢を連射し、フレデリカとニコラスは再び呪文の詠唱に入った。


 そうして戦闘が再開して、遅まきながらも自分の状況を再確認した清盛は、すぐさまに距離を詰めて来た前衛三人の攻撃を軽くいなして距離を取る。


「全く、こんなところで爺さんに教わった真言が役に立つとは思わなかったが、今は驚いとる場合では無いのう。……まあ、色々と後で試せばええか。それよりも今は、此処を切り抜けねばな」


 清盛はそう言うと、遠くから尚も清盛に狙いをつけるカティアたち後衛三人を睨みつけると、そのまま勢いく三人に向けて突っ込んでいった。


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