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日本文化と日本刀で世界征服ーーー勇者にして魔王になった男ーーー  作者: 上運天大樹
第一章 勇者召喚からの魔王転職編
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勇者、そして魔王。 第二話 勇者、少しだけ魔王になる。中編


「ヒルデガルド・エルヴァンテール!推して参る!」


 裂帛の気合を込めた宣言と共に愚直に繰り出される拳打は風切り音を立てて空を裂き、伸びやかな肢体から繰り出される蹴りは縦横無尽に清盛に向けて繰り出されるが、そのどれもが清盛の身体を掠る事すらせずに避け躱される。


(――――――くッ!こうも、入らないものなのか!)


 余りに力の差がありすぎる相手を前にして、ヒルデガルダの集中力は否応も無く増していき、周囲の言葉や音さえも消え、目の前の男のみが意識の中央を独占する。


「赤か。随分と派手な下着じゃのう」


「違う!今日は黒を穿いて!―――――キサマ!」


 そんなヒルデガルダの蹴りを躱しながら、不意にエロジジイの様なことを言う清盛の言葉に、咄嗟に反論したヒルダは、それで逆に下着の色を教えたことに気付いて羞恥で顔を赤く染めながら反論と同時に雑に裏拳を清盛の顔面に目掛けて叩き込む。


 その瞬間、あっさりとヒルデガルダの拳は清盛の手によって防がれたと同時に、手の甲に一瞬チクリとした痛みが走ったかと思うと、途端に体中から力が抜け落ち、瞬く間にその場に崩れ落ちた。


 何が起こったのかと清盛の顔を見上げたヒルデガルダは、そこで小さな針を指の間に挟んで手を振る清盛の顔を見て、思わず自分の迂闊さを呪いながらそのまま地面に倒れ込む。


(しまった、毒針!!油断した!暗器の存在が頭の中から抜け落ちていた!)


「スマンの。二度も三度も女を殴る趣味は無いけえ。そこで寝ていろ」


 どういう毒を使ったのか、あっさりと地面に倒れ伏すヒルデガルダの姿を見ながら、申し訳なさそうに頭を掻いた清盛は、そう言って指の間に挟んだ毒針を袖の中に隠しながらヒルデガルダの傍を離れて、残りのメンバーの前にと立ちはだかる。


「昨日、商人ギルドに顔を出して多少ツテを作ることができたでのう。物は試しにと買っては見たが、案外使えるようで何よりじゃ」


 近所の商店でお得な野菜を見つけたような口調で語る清盛の態度に、今までニコラスから回復魔法を受けていたアルフレッドは剣を構えて、改めて清盛の前に立った。


「……そうかい。それは何よりだな、けど、良いのかよ?そんな簡単に手の内を見せてよ?」


「ふむ?何が?」


 目の奥は鋭く清盛を睨みつけながらも、不敵な笑みを浮かべたアルフレッドの言葉に、清盛は軽く首を傾げた。


「別にオレ達はヒルダに戦闘を任せてボサっとしていたわけじゃない。アイツが戦っている間に、回復やら付与魔法で戦闘能力を高めてんだよ!それだけじゃない!フレデリカも大技が幾つか使える程度には魔力は回復している!ここから先は、今までの様に行くと思うなよ!」


 再び手にした剣を清盛に突き付けながら宣言したアルフレッドだったが、清盛は特段興味を示した風もなく、頬を軽く掻くと、「別に構わんよ」と返した。


「何…………?」


「儂がヒルデガルダ嬢とやりおうたんは、美人なねえちゃんだったけえ、あわよくば乳か尻でも触れんかなあ。と思っただけじゃし、魔法を見せてくれるいうんじゃったら、有り難い。こっちの世界に来てからこの方、直接この目で見てみたいと思うとったところじゃ。寧ろさっきのよりデカい魔法を見せてくれるんじゃったら、こっちの方から金を払いたいくらいじゃ」


 酒場で女を眺める様な気やすさで、或いは、見世物小屋で出し物を見る様な気楽さで語る清盛の姿に、アルフレッドは自分の頭の中で何かが切れる様な音を聞いた。


 次の瞬間、アルフレッドは自分の足元で地面が爆裂したような感覚と共に、清盛に向かって飛び掛かり、そしてあっけなく手首を掴まれ、地面にたたきつけられた。


「別に、空手だけが儂の能じゃない。柔道も一本背負いくらいなら授業で習ったわい。そして、これでお前さんも戦線離脱じゃろう?」


 全身を襲う鈍い痛みに呻き声を上げるアルフレッドに、清盛は先ほどヒルデガルドを相手に使った毒針を見せつけながらそう言い捨てると、そのまま残りのメンバーに向き直って、軽く右腕を振り回した。


「さて、と。そろそろ体もあったまってきたところじゃし、」


「『フローガロンヒ』」「『戦闘ベルム加護エザイルム』」


 その瞬間、ニコラスとフレデリカの呪文の詠唱が終り、フレデリカの呪文と共に放たれた炎の槍が、幾本もの槍の雨となって清盛に向かって襲い掛かった。


 フレデリカの放った魔術をニコラスが強化する魔術の中でも高等戦術である『融合魔術』。


 本来ならば、『白金プラチナ』級以上の上級魔獣か、軍隊規模で戦う戦争で放つ巨大な魔術であり、間違っても一人の人間を相手にして放つような魔術では無い。

 下手に使用すれば侵略軍と間違えられて騎士団に見つかれば、その場で殺されかねない。

 それ程危険な魔術であった。



 

 しかし、





「忙しいのう。何かを言うくらいの時間くらいは用意させてほしいもんじゃあのう」


 清盛はぼやきながらも逃げ出す様子も見せずに炎の槍の前に立つと、雷を呼び出した時と同様に手刀を構える様に片手を立てて、先ほどと同じように呟いた。


「南無三」


 瞬間、巨大な光の壁が清盛の前に現れ出ると、幾本もの炎の槍は爆発音を立てながらもあっけなく防がれ、清盛はまるで花火でも鑑賞するかのように感嘆の声を上げた。


「ほっほっほ。たーまーやー。これが魔術師の本気という奴か。面白いのう」


 清盛は戦略級の魔術を直に喰らったとは思えない程、呑気に爆炎と砂煙が漂う中でジジ臭い笑い声を上げながら、砂煙に隠れてしまったニコラス達に近づこうと一歩踏み出した。


 その途端、清盛に向かって数本の矢が放たれ、今までの攻勢からは想像がつかない程に、それはあっさりと清盛の肩や脚を貫き、清盛は思わずその場に蹲り、息をするのも忘れて痛みをこらえた。


「……グッ!!ッツ…………抜いたら、抜いたらアカン。そんなことを漫画で言うてたやないの!……何で関西弁になっとんじゃワシャア!」


 余りの痛みに、一瞬矢を抜こうとその手を痛みのする方向に向けるが、清盛はコントじみた独り言をつぶやきながらすんでの所でそれを思い留まると、歯を食いしばりながら無理矢理にその場を立ち上がった。


(……当り前じゃが、こけて膝すりむくより痛いわい……!)


 剣道の体力づくりの為のランニング中に転倒した時の事を思い出しながら、立ち上がった清盛だったが、そんな清盛に向かって砂煙の中から飛び出したカティアが、武器としている巨大なハンマーを振り上げて清盛の脳天に向かって叩き下ろした。


 恐らく、いままでこの隙を伺っていたのだろう。

 とても内向的な少女の一撃とは思えない度に迷いなく繰り出される一撃に、清盛は咄嗟に前方に転がる様にそれを避けると、熱鏝ねつごてを当てたように痛む脚を庇いながら、この日初めてその場を大きく下がった。


「これで……。終わりです……」


「…………キラキラ、負ける」


 清盛の決死の回避行動に、鍛え上げられら冒険者の経験が最後の勝機を見出したのだろう。

 カティアは手にしたハンマーを構え直し、アリアは弓に矢を番えて、痛みに蹲る清盛に向けて狙いを定めた。


 

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