顔がデカい
「ねぇ、お母さん」
「なあに」
「なんで私の顔、こんなにデカいの?」
「え? そ、そんなことないでしょ〜」
「そんなことある! クラスで、ううん、学校の中で私が一番デカい」
「おめでとう! 一番なんて中々取れるもんじゃないわよ」
「ヤダー! 顔のデカさで一番とか、マジキモい」
「うーん……困ったわね」
「で、どのくらいの大きさがいいの?」
「コーヒーカップぐらい」
「ええー? そんな小さくなりたいの?」
「もういいよ……寝る」
「あぁ、おやすみ」
「お父さーん、ちょっときて!」
「どうしたんだ!お母さん」
「とうとう、知ってしまったの、あの子」
「ま、まさか!! 顔がデカいってことか」
「ええ、顔がデカいってこと」
「そうか。隠し通せなかったか」
「あの子、顔がデカいって悩んでるのよ」
「そりゃ顔がデカいって知ってしまったら悩むわな」
「仕方ない。やるか……まだ早いと思っていたんだが」
「可愛い娘のためだもの。やりましょう」
「起きないかな?」
「大丈夫よ。あの子一度寝たら朝まで起きないから」
「そうか。じゃ、ノコギリ取ってくれ」
「はい、お父さん」
ギーコギーコギーコ
「手動は疲れるな」
「頑張って」
パカッ
「外れたぞ!」
「どうかな。もう一段階下か?」
「そうね。まだデカいわ」
ギーコギーコギーコ
パカッ
「どうだ!!」
「うーん、もうワンランク小さく」
ギーコギーコギーコ
パカッ
「あんまり変わんないな」
「そうね」
ギーコギーコギーコ
パカッ
「まだまだ」
ギーコギーコギーコ
パカッ
「うーん……」
ギーコギーコギーコ
パカッ
「もう一丁」
ギーコギーコギーコ
パカッ
「ふーっ、どうだ!!」
「わぁー、いいわ」
「マトリョーシカ顏も大変だな」
「そうね。でも可愛い娘のために臨機応変に世の中に対応出来るようにセレクトしたんだもの」
「でもちょっと小さすぎないか?」
「そんなことないわ。あの子コーヒーカップぐらいの大きさがいいって言ってたから」
「そうか。良かった」
「あの子朝起きたらきっと大喜びよ」
「寝ようか」
「ええ」