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序 章
激しい雨の中、わたしはただひたすらに走り続けている。
陽は既に沈み辺りは薄暗く、そして気味の悪いほど静まり返っていた。ひどい頭痛と眩暈が、わたしが前に進むことを妨げるように絶えず襲いかかってくる。もうどれほど走り続けたのか判らない。幾つ野山を越えてきたのか、それさえも。その途中わたしは何度も転び、そして森の中では何度も樹にぶつかったが――わたしはその度に立ち上がり、よろめきながらまた走り続ける。
しかし、とっくに限界は越えていた。
視界は霞み、既に意識も朦朧としている。ずぶ濡れの身体は血や泥にまみれ、もはや傷の痛みさえ感じない。
ふらつき、ふと足元が消えたと思った瞬間……わたしは崩れた岩と共に、はるか下に広がる闇の底へと堕ちていった。




