第四話『解凍』
「…そ……めざ…だ…」
なんだろう。声が聞こえる。まるで切れたカセットテープみたいに声がぶつ切れだ。
僕はまだ眠いんだ。起こさないでくれよ。
しかし、僕の思いとは裏腹に周囲から聞こえる雑音は増してゆく。そして、とうとうクリアになった聴覚が、聞き覚えのない男性の声を拾った。
「――――さぁ、起きるんだ。天城夕君」
その声で。
僕は永い眠りから目覚めた。
「…ここは?」
僕は薄ぼんやりとしか視認できないことに内心首を捻りながら身を起こした。でも、その瞬間に違和感が脳裏をよぎる。
(身を…起こせた?筋肉がほとんどないのに…?)
僕は自分の身に起きた正常に軽くパニックを起こしかけながらも体中に意識を巡らせる。
(…うん。なんともない。体が自分の物のように動かせる。一体何が…?)
と、僕が思考に没頭していると先程聞こえた男性の声がした。
「天城君、考え事もいいけどそろそろこっちに気を向けてくれるとうれしいんだけど…」
「はい?」
顎に当てていた手を外して声がする方を仰ぎ見る。そこには、眼鏡をかけた柔和な表情をした男性がいた。
「あの…どなたですか?」
「あ、これは失礼を。私、人体解凍技術部門研究室の室長を務めている斉藤と言います…じゃなくて!天城君、覚えてないんですか!?」
えーと…?確か、昨日は今まで通り起きて、庭に行って…。――――死んだんだ。
僕は、自分が〝死んだ〟という事実にショックを受けた。
そうだ、僕はあの時、確かに死んだと思う。だとしたら、ここはどこだ?
機械だらけのこの部屋が、どう見たって天国だとは思えない。だとしたら――――
そこまで考えて、先ほど斉藤さんが言った言葉とある知識が完全にかみ合ったのを感じた。
僕は、恐る恐る尋ねてみる。
「あの…今って、西暦何年ですか…?」
斉藤さんは眉間にしわを寄せながら言いにくそうな表情をする。
「えー…っと。今は、西暦2161年です。つまり、君の生きていた――死んでしまった時から、150年経ちました」
……………………………………………………………………………え?
「えええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
やっちゃったぜ☆