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第三話『決意』


「僕は…どうすればいいのかな…」


 僕は指先に乗る小鳥に弱音を吐く。


 掌で目を覆っていると、スッと指先から重さが消えた。そして。


「いたっ。い、痛い痛い!つつかないで!」


 僕は小鳥に頭をつつかれていた。僕は必死になって頭を庇う。けれど、小鳥はそんな僕なんてお構いなし、と言わんばかりにつつきまくる。


「す、ストップストップ!僕は病人なんだよ!?つつくにしてももうちょっと手加減してよ!あいたっ!」


 僕の必死の抗議は聞き入れてもらえなかった。腕の筋肉がもうほとんどないから上げるだけでも重労働で、もう息が上がってしまった。


「分かった!分かったから!クライオニクスを受ければいいんでしょ!?」


 と、僕がやけくそ気味にそう叫ぶとピタリと嘴での猛攻を止めてくれた。


「た、助かった…」


 さっきのやり取りもそうだけど、この小鳥は時々言葉が分かるんじゃないか、と思う時がある。僕の言葉にいちいち反応しているから、もしかとは思うけど…。


「ほんと、君は不思議な奴だね。…けど、君のおかげで決心がついたよ。やっぱり、僕は生きたい。そりゃあ、独りは不安だけどさ、まだ浩二や菜月が死んだ未来って決まったわけじゃないもんね。…まぁ、流石に二人はおじいちゃんおばあちゃんになっているかもだけど」


 僕は二人の皺くちゃになった顔を想像して、くす、と笑う。


「ありがとう」


 そう言って僕は病院に戻って行った。









 僕は病院に戻ってすぐに、先生にクライオニクスを受ける、と言った。先生は何だか複雑な顔をしていたけど、「分かった」、とだけ言って相手方に電話をしに席を立った。


 それからはあれよあれよと話が進んで、僕がクライオニクスを受ける準備が整った。と言っても、クライオニクスは死んだ人体を冷凍するわけだから、僕が心肺停止状態になって初めて受けれるのだけど。


 僕はクライオニクスの手順の説明を聞いたり、浩二や菜月と話をしたりと穏やかに過ごした。


 今までしていた投薬やトレーニングもストップしたから、目に見えて僕の筋肉は衰えていった。前までは自分で車いすを押していたけど、今はもう腕を上げるだけでもつらい。


 僕は看護士さんに頼んで例の庭に連れて来て貰っていた。


 爽やかな風が髪を撫でていく。目を閉じていると、肩に何かが乗る気配がした。


「やぁ、君か」


 そこにいたのは、あの赤い小鳥だった。首をかしげながら、僕の目をじっと見つめている。


「やっぱり、野生の動物はそういうのに敏感なのかな…?ありがとう、最後に来てくれて」


 と、その時。小鳥は高い声でさえずりながら歌い始めた。


(本当に、変な奴だな…欲しい時に、欲しいものをくれる。僕は、君がいたから、独りでも寂しく、無かった…。ありがとう…僕の、友達)


 そうして――――僕はゆっくりと、睡魔に押されるまま。


 ―――――永い永い眠りについた。



こうして、夕は眠りにつきました。


彼が目覚めるのはいったい何年後なのでしょうか?



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