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第13話『異変』

更新が遅くなってしまいました。申し訳ありません<(--)>



 メリメリと沈む指。息も出来ない激痛に、僕は苦悶の表情を浮かべながらも先程の話を聞いて諦めのような感情が心を埋め尽くした。


 もしも、レオの言っていたことが本当の事なら彼らの怒りは正当なものであり、こうして殺されるのも文句は言えないのではないか。


 僕の首を掴む、僕の胴体程の太さのある腕から自分の手を離そうとして――――


 ズブリ、とレオの腕を焼けた鉛玉が貫いた。


「グガアアアアアァァァァァァ!!!?」


 遅れたようにタァン、と銃声が耳に届いたけれど、僕にはそんなことに気を裂く余裕は無く、強く咳き込みながらも酸素を肺に送り込んだ。銃弾がレオの腕を貫通した際、周りに迸った血が僕の顔に付く。


 汚れ一つない真っ白な床に倒れながらも、ぎゅっと瞑っていた瞼を震わしながらこじ開けた。そこには、右腕を庇うように膝立ちするレオの姿と、レオを囲むようにして白い服装をした人たちが銃を向けている。


「登録№2087、レオだな。逃走時における12名の殺害、3年間のテロ行為、及び反逆――――以上の罪において貴様を捕縛する。抗うようなら、銃殺も厭わない」


「ふん、人間風情が少し優位になったからといって調子に乗りやがって。噛み殺すぞ?」


 猫のように――――実際は猫より遥かに危険だが――――レオは牙を剥いて威嚇した。ぞろりと揃った鋭い牙と濃密な圧力すら感じられる殺気に、白服たちは目に見えて怯む。


 離れた位置で倒れている僕ですら分かる、その殺気に鳥肌を粟立たせながらも僕は渾身の力を込めて上体を起こした。後ろからは続々と白服たちが銃や、捕獲に使うのだろうか、柵のような物を引っ張って来る。


 僕も白服の一人に大丈夫かい?と身を案じられながら引き起こされた。ちらり、と後ろを向くとレオは憎悪の視線を周囲にぶつけている。

 これで全てが終わった――――確かに、この時僕はそう思った。


「君、顔に血が付いているよ」


 肩を貸してくれている白服さんが、右頬を指す。そういえばと、レオが腕を打たれた時に血が飛び散ったことを思い出した。


 ぐいっと右手で拭う。広がった血が口に入って、金臭い味を伝える。その瞬間――――



       




                ドクン、と心臓が跳ねた




◆◆◆





 異変は唐突だった。血が口に入り、血特有の金臭い味が口腔内に広がる。その瞬間、体全体が火に包まれたような錯覚に陥った。眩暈、吐き気。


 立つのも支えてもらうのが精一杯で、足が棒になったように重い。僕の異変に肩を貸す白服さんも気が付いたようで、急いで僕を仰向けに寝かした。


「―――――――!―――――――――!?」


 何か僕に向けて喋っているようだったけど、何を言っているのか全然分からない。酷い風に罹った時のように思うように纏まらない思考の中、さらに酷い激痛が体中を駆け巡った。背骨を反らし、喘ぐように必死に息を吸い込む。


 そして、一際鋭い痛みが両腕を襲った。僕はそのあまりの痛みに両腕を突き出す。



 グシャリ


 とてつもなく、嫌な音が――――まるで、肉を貫くような音が、僕の耳に聞こえた。急に軽くなった痛みに、ぼやけていた視界が一気に正常な状態に戻る。


 そこには――――猛獣の手に胸を貫かれている、白服さんがいた。


「―――――――ッ!!!??」


 ハッとした僕は、そのまま手を引いてしまう。どぷ、と血が胸から溢れ出た。ドサ、と倒れる白服さんの姿を見て、僕は。


 自分の手が血に塗れているのに、やっと気が付いた。




◆◆◆



 訳が分からないわけがわからないワケガワカラナイ。


 混乱。それだけが僕の頭をぐちゃぐちゃにしていた。頭を抱えてこれは夢だ、これは悪夢だ、と必死に言い聞かせる。しかし、僕の頭にある手の感触は、僕の知るものとは完全に別物だった。


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 叫ぼうにも、喉から迸るのは猛獣の雄たけび。人では到底出せないだろうその声量に、僕はさらに混乱の深みに嵌った。


 その時、首に何かが当てられる感覚と体中に奔る衝撃とで、僕の意識はプツリと途絶えた――――。




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