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第九話『屈折』


 僕は、手も触れていないのに勝手に開いていく巨大な金属扉を呆気に取られながら見つめていた。そんな中、中から魚面をした中年の男が小型のアタッシュケースを持って出てきた。どうやらそれが今回の目的の物だったようで、リーダーと思しきテロリストがそれを受け取る。


 僕は何が何だか分からずに突っ立っていた。が、テロリストの一人が何かに気が付いたように顔をピクリと動かした。


「レオさん、こちらに二人、向かっているようです」


「ふん、奴らか。面倒だな…」


 片方の言う通りなら、誰かがこちらに向かってきているみたいだ。どうやってそのことに気付いたんだろう、と不思議に思っていると周囲から視線を感じた。


 顔を上げるとテロリストたちが全員僕を見ている。


「えー…と、何か?」


 猛烈に嫌な予感がした。









 先程の二人組は現在、階段を使って地下に向かっていた。勿論、エレベーターを使おうと思ったが何故か使用不可になっていた。恐らくテロリストたちが自分たちしか使用できないように小細工をしたのだろう。


 息を乱すことなく二人は目的の最下層に辿り着いた。そのまま一本道を駆け抜ける。もうすぐ集団がいる扉付近まで来た瞬間、何か鋭い物がマシンガンのように二人へと襲いかかった。


 カカカカカ!と、軽快な音を立てて床や壁に突き刺さる音。その針の嵐が収まる。そこには、二人を囲むように乱立する針の山と、刀を抜き放った体勢で立つ男。彼の後ろにはビックフットと呼ばれた巨漢がいたが、二人には一本たりとも針が刺さってはいなかった。


 彼らの前には、四つん這いになってこちらに向いているテロリストと、その一味。そして、手を拘束された状態で壁のように前面に立たされている天城夕がいた。








 僕の目の前には、信じられないような光景があった。テロリストの一人がスッと前に出て四つん這いになったかと思うと、背中から(・・・・)針が乱射(・・・・)された(・・・)。妙にデカい図体だな、と思っていたけど、マシンガンでも何か背負っていたのだろうか?と思ったほどだ。けれど、発射されている最中、いっさい銃撃音がしなかった。


 何か、僕が生きていた時代より遥かに進歩した兵器なのかもしれない。さらに信じられないのが、あの針の嵐の中、刀で針を(・・・・)全て切り落とす(・・・・・・・)なんて芸当だ。いつの時代だ、とつっこみたくなる。


「細身の隻腕剣士…噂通りの腕前だな」


 と、リーダーの男がふと言葉を漏らした。


「実に惜しい。その腕前がありながら、〝人間〟に手を貸すなど…面汚しも良い所だ」


「某への悪口結構。我らはお前たちとは志が違うのだからな」


 細身の剣客はテロリストたちを睨みつけながらリーダーが手に持つアタッシュケースに目を向ける。


「やはり…それが狙いだったか。〝遺伝子改変薬〟。それほど危険な物を、お前たちに渡すわけにはいかん」


「〝遺伝子…改変薬〟?」


 僕は聞いたことのない薬品の名前に首を傾げた。遺伝子操作薬とはまた別物なんだろうか。


 しかし、僕がそんな呑気なことを考えている余裕は無かった。僕は人質なのだ。僕は無理やり壁のように突き出される。


「退け。さもなくばこの小僧を殺す」


 ああ、やっぱり!?現実逃避して考えないようにしてたのに!


 二人組はジリ、と対峙する。彼らもこのままだったら手も足も出ないだろう。


(ああもうどうすれば…!!)


 その瞬間。


 ズドォォォォン…!!と、腹に響く音と共に強烈な揺れが僕らを襲う。


 全員その場で体勢を崩す中、スピーカーからまた別の声が聞こえてきた。


『ああ、まったく面倒くさい…俺さっきまで寝てたんだぜ?それを叩き起こしちゃう、普通?え?繋がってるって?バカ、それを先に言え!まったく』


「「「…………」」」


『あー、あー。病院内にいるテロリストどもに告ぐ。さっさと武器を放り捨てて投降しろ。今ならかつ丼おごってやるから』


『再度警告する。投降しない場合…テメェら全員ブチ殺します、以上』


「…警告って言うより、脅迫じゃん」


 僕の言葉が、たぶん全員の内心の言葉を代弁していたと思うよ、うん。





感想、ご指摘じゃんじゃんお待ちしています!!





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