読書感想文
国語の先生が教壇の上で言う。
「本を1冊読んで、感想を書きなさい」
皆、えーとか、げっ、とか騒ぎ出したが、俺は手を挙げて言う。
「先生!! 何の本でもいいの?」
すると先生は眼鏡をかけ直し、答えてくる。
「何でもいいわけじゃない。自伝や教科書に載っている作家の本にしなさい」
さらにブーイングが上がったが、先生は気にせず、テキストを整える。
ちょうどチャイムが鳴り、
「それじゃあ、俺はこれで」
先生が去っていく。
俺は早速、彼女のところへ行き、顔を覗き込む。
丸っこくて、白い肌。
思わず抱きしめたくなるような可愛さだった。
「どうする、本?」
「今から図書館に行こうか? ランチタイムだし」
「そうだな。行くか」
彼女が席を立とうとして、足をふらつかせる。
俺はぎょっとして受け止めると、彼女は手を出して支えてくる。
「ありがとう。ちょっと疲れているのかな?」
「それは、ピアノとダンスと歌を練習していればな。あんまり無理するなよ?」
「うん。大丈夫」
笑顔を浮かべたので、髪の毛を撫でてやる。
顔が白いのは元々だが、貧血でも起こしているのだろうかと気になる。
「保健室に行かなくていいか?」
「ううん、平気。図書館に行こう」
彼女は元気そうに言い、先に動き出す。
俺はその後を追い、図書館に着いた。
ランチタイムだからか、あまり人はおらず、閑散としていた。一言、発しただけで、皆の耳に入りそうである。
「何の本にしようかな?」
俺は声を落とし、彼女に囁くような感じで口を開いた。
彼女は本棚に進むと、背表紙を撫でる。
「簡単に書かれたほうが良いんじゃないかな?」
「簡単に? そんな本、あるのかよ」
俺が上を向いて嘆くと、彼女がくすりと笑う。
「ここからはバラバラに行動しよう?」
「おう。分かった」
俺は彼女から離れ、本棚を見つめていく。
古びた埃のような香りがし、思わず鼻をすんと鳴らす。
普段は図書館なんて来たことがなかった。
「誰にしようかな…」
迷いに迷う。
かっこいい人がいいなと思っていると、1冊の本と出会う。
「ナポレオンか。それなら、俺も名前を知っている」
嬉しくなって本棚から抜き出すと、本を開く。
字は小さくなく、これなら俺でも読めそうだった。
早速、彼女のところに行くと、もう1冊の本を持っていた。
「何にしたんだ?」
気になって聞くと、彼女は本を差し出す。
「キュリー夫人にした。ノーベル賞をとった人の話」
「へえ…。何か難しそう」
俺が変な顔をしたのがおかしいのか、くすくす彼女が笑う。
別に彼女に笑われるなら、構わなかった。
「よし、本を借りて教室に戻ろう。ご飯を食べ損ねてしまう」
「そうだね。…お願いします」
図書館の先生に手続きを頼むと、俺と彼女は本を胸に抱き、図書館を後にする。
その足取りは、軽かった。




