表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

―——私は見た。

目の前のその絶望でしかない光景を。

建物も町もすべてが燃え上がるその悲劇を。


―——私は聞いた。

民衆から発せられる悲鳴を。

人々からの助けを求める叫びを。


ここは地獄。

そう思わざるを得なかった。


「・・・・・・もう終わりか、やはりつまらぬな、人間は」


目の前にはそう、人間とはかけ離れた見た目をした・・・魔族がそんなことを言う。

その言葉通り、目の前の魔族からは心の底から退屈を感じ取られた。


こんな惨状を起こした存在がいるというのに・・・私の体は融通が利かない。

もう私の体はボロボロだった。

ただそれでも・・・・・・ただ絞り出すようにして言葉を紡ぐ。


「・・・・・・・この、化け物・・・が」


掠れて・・・うまく口に出すことができない。

ただそれでも、私はそう口にする。


そんな私の必死な様子に目の前のその化け物をただ嘲笑する。


「化け物・・・か、そうだな、そうかもしれない・・・・・・お前たちのような存在からすれば私たち魔族は化け物なのだろうな・・・・・・まぁだからと言ってどうしたという話なのだが」


そう言いながら、その魔族は私に向けてその魔法を放とうと準備を始める。

もう私という人間に興味が尽きたのだろうか。

だからこそ・・・・・・だからこそ、

もういらなくなった私というおもちゃを捨てるためにも。


「さらばだ、名もなき人間の雑兵よ」


その魔法が発動され、

自身の死期を悟った瞬間のことだった。


グシャっ


何かをえぐるような・・・・・・

鈍く、気持ちが悪い音が聞こえてくる。


それと同時、自身の額に何やら・・・水?のような液体が触れた。


何が起こったのかなんて今の私にはわからない。

だが、確実に私ではなく、私の目の前で何かが起こったということだけがわかる。


「・・・・・・・これまでよく持ちこたえたな、後は俺たちに任せろ」


そんな声が聞こえる。

安心するような・・・けどどこか冷たいような声が。

その声が聞こえてきた瞬間、これまでの疲労からか、

気絶してしまうようにしてその場で意識が途切れるのだった。



―—————————————


急いできたつもりが・・・・・・予想以上に被害が大きくなっているようだった。


「・・・・・・リリィ、できるだけ多くの人の治療を頼んだ、死なせるなよ」


連れのシスター服を身に着けた聖女・・・リリィに向けて俺はそう指示をする。


「わかってますよ、レイ・・・心配しなくていいと思いますが、くれぐれも気を付けて」


そう言い残すと、リリィは足早にその場を後にする。

それを見送り、俺はこの惨状の主犯であるそいつへと視線を向ける。


「・・・・・・今の不意打ちで殺せないとは・・・俺も随分と腕が落ちたな」


そこには先ほど後ろから不意打ちを喰らわせた魔族が何事もなかったかのように立っていた。

・・・・・・一応、心臓部分を思いっきり突き刺したのだが。


「安心しろ、人間・・・貴様は充分強い、私に・・・魔王軍幹部である私に傷を負わせたのだからな」


「・・・・・・魔王軍幹部か、それならまぁ納得だな」


この世界には魔王と呼ばれる存在がいる。

魔王という存在は目の前の奴を含め魔族を呼ばれる人間とはまた別の知能を持った存在の王。

人間の世界でいう国王やそう言った類の存在だと思えばいい。


そして目の前の魔王軍幹部。

それは魔王直属の魔族の中でも強い存在のような認識の存在。


と、それなら先ほどの一撃で普通に生きていても不思議ではないか?

実際に会ったことがあるのは今回が初めてなため、その魔族の力について不明な点が多い。


そんな自信の疑問を目の前の魔王軍幹部は俺の表情からか察したのか、答えてくる。


「貴様が疑問に思うのも無理はない・・・・・・私という存在は他の魔族とも比べて異質なのだ・・・・・・傷を負っても、心臓を一突きされてもたちまち回復する、いわゆる不死の存在というべきか?」


その幹部からの言葉を聞き、俺は昔に聞いた話を思い出した。


「あー、聞いたことがあったな・・・・・・他の勇者から、魔族側に文字通り不死身の奴がいるから気を付けろとかなんとか」


特に興味もなかったため、ずっと忘れていたわけだが・・・・・・

こいつのことだったのか・・・


「・・・・・・・貴様、察しはついていたが・・・勇者なのだな?」


「あぁそうだ、別に隠すつもりもないからいうが、一応勇者をやってる」


勇者・・・・・・それは魔王を倒すために存在する人類側の正義の味方のようなもの。

今現在、俺を含めて十人程度、勇者は存在しており、各々が魔王を倒すために世界中を旅している。

そんな勇者である俺だからこそ、この王国が魔族に侵略されていると聞かされ急いできたというわけだ。


・・・・・・まぁ到着した時点でかなり手遅れになってしまっているようだが。


「貴様が勇者だとするなら・・・・・・私も遠慮はいらないだろう、魔王様から直々に、勇者は絶対に殺せと命じられているのだ・・・・・・悪く思うなよ?勇者」


そう言うのと同時に目の前のそいつからは先ほどまでの圧がまるで嘘かのように、

突如としてその魔族から出る圧力が豹変する。


「・・・・・・・はぁ、少しめんどくさそうだな、お前は」


俺はそんな圧を受けてなお、そう余裕そうに言葉を返す。


「そんな余裕、今すぐにでもなくさせてやろう」


その言葉と同時に魔法が放たれ、戦いの火蓋は着られることになるのだった――――。



―—————————————


「———よくぞ、この国を救ってくれた、勇者レイ、聖女リリィよ」


魔王軍幹部からの襲撃から二日、流石というべきか、人類最大の王国ということもあり、すでにかなり国の復興は進められていた。

そしてレイとリリィはそんな王国の国王に呼ばれ、その王の間に足を運んでいた。


「勇者レイは魔王軍幹部の討伐、聖女リリィは死傷者を限りなくゼロに近づてくれた・・・・・・二人のその力と功績に免じてお主らには魔王城へと向かい魔王の討伐を命ずる」


『ありがたく承りました』


二人同時、レイとリリィはその国王の命令にそう返事を返す。


「魔王を倒し、この世界と人類に平和をもたらしてくれ」


その国王の言葉を最後に二人は王の間を後にする。


「・・・・・・・はぁ、魔王討伐とかだるい」


「そう言うこと、あまりこんな場所で言うことではありませんよ、レイ」


「安心しろ、誰もいないことは確認済みだ」


王の間から出て少しして、レイはそんな愚痴をリリィにこぼしていた。

リリィはレイのその発言に少し呆れたようにそう注意をする。


国王直々の魔王討伐の命令。

それは意味することは、絶対に遂行しろとの意味。


勇者というのは確かに魔王を討伐するための存在。

だが勇者が行う旅というのは魔王を倒すために実力をつけろといういわば準備期間。

そしてその旅で実力や功績が認められた勇者にはそこから魔王を討伐しろとの命令が出される。


今の勇者レイの状態ということになる。


「そう言うことではなくて・・・・・・はぁ、まぁ良いです、それで?レイは魔王を討伐したら何をなさるおつもりです?」


「おいおい、もう魔王を倒した後の話をするのか?まぁとりあえずはまた旅でもすると思うぞ?人助けでもしてるんじゃないか?」


あまり考えたことはないが、特にやりたいこともないため、そんな適当な回答をする。


「そうですか・・・・・・なら結局は一緒に旅をすることになりそうですね、今後も」


さも当然かのように、隣のそいつはそんなことを言ってくる。


「うぇ、お前と一緒かぁ・・・・・・」


こう見えてリリィとは旅を始めた二年前からずっと一緒にいる。

だからこそ、新鮮味のない旅に俺は苦言を呈してしまう。


露骨に嫌な反応をすると、

リリィは不服そうな顔で俺をにらんできた。


「おいおい、何だよ」


「露骨に嫌な反応しないでください、いくら聖女である私でも悲しみますよ?」


と、ちっとも悲しくなさそうないつも通りの”貼り付けた笑顔”でそう言ってくる。


「はは、お前が悲しんでる姿なんて想像できねぇな」


「・・・・・・それはお互いさまでは?」


「・・・・・・・・・・そんなこともないぞ?俺は」


そんな他愛もない、いつもと変わらない会話をしていると、

渡り廊下の正面、すごい速度で俺たちへと近づく影が見える。


「ゆーしゃさま!お久しぶりです!」


そんな言葉が聞こえると同時、レイめがけてその影は激突してくる。

レイはそれをなんなく受け止めると、その飛び込んできた影へと言葉をかける。


「あまり勢いよく抱き着いてくるのはやめてもらえると嬉しいんですが?姫様」


レイに激突してきた影の正体。

それはこの王国の姫・・・つまり国王の実の娘。

歳はまだ14歳と若く、この様子からわかる通りレイにすごく懐いている。


「勇者様!勇者様!やっと魔王討伐に行くんですよね!私、勇者様の帰りを待ってるんで、頑張ってくださいね!」


姫様はそう言いながら天使のような笑顔をレイへと向けると、

ただそれを言うために来ただけだったのか、レイの返事を待たずに突撃してきたときと変わらず元気な様子で来た道を戻っていくのだった。


「・・・・・・一応、私もいたんですが・・・・・・やっぱり姫様に好かれてますねぇ、レイは」


「はぁ・・・・・・もう少し落ち着きを持ってほしいんだがな、ましてやこの国の王女なんだし」


まぁ実際はあのような元気すぎる年相応の姿を見せるのは俺ぐらいなのだろう。

なぜだか、それだけ自分は懐かれているのだろうが・・・・・・


「嫌われるよりかはマシですよ、私はなぜか姫様に敵視されてますし」


「それはまぁ可哀そうなもんだな」


そんな雑談とともに、レイとリリィは人類のためにも魔王討伐へと魔王城に向かうことにするのだった。



―—————————————


王から命じられ、王国から出てから、レイとリリィは数日という短い時間でその城まで訪れていた。


魔王軍幹部という存在はレイが殺した存在が最後の一体だったらしく、

そのこともあってか案の定、その城の中にはほとんどの魔族はおらず、容易にその魔王のいる場所にまで来ていた。


「・・・・・・・お前が今世の勇者か」


初手、魔王であろうその人物はレイに向けてそんな問いかけをする。


「あぁそうだ・・・・・・それで?聞く意味もないと思うが、お前が魔王だよな?」


「そうだ、私こそが魔王だ・・・・・・勇者、お前のせいで私たち魔王軍は随分と衰退してしまった・・・・・・だからこそ、これは私の身勝手な同胞の復讐としてお前を殺そう」


魔王と名乗るその魔族からは確かに、これまで会ってきたどんな魔族よりも異質な気配を漂わせていた。


「別にお前に恨みがあるわけじゃないが・・・・・・俺は勇者だ、魔王であるお前を殺すことにする」


互いに譲れない何かがあるのだろう。

だからこそ、両者の間に静けさが訪れる。


会話なんてこれで十分。

これ以上会話をしても意味がない。

だからこそ、俺はその剣を抜く。


魔王も俺のその様子を見て、臨戦態勢に入る。


リリィに向けてレイは軽く合図を送る。

それに反応してリリィは強化の魔法をレイにかける。


両者の間にまたも沈黙が訪れる。

単なる数秒間が、まるで何十分も時間が過ぎたような気がしてならない。


そして、そして、そして―――。


勇者と魔王、両者は同時に動き出すことになるのだった。



―—————————————


・・・・・・・勝負というのは本当に一瞬にしてついてしまうものだった。


確かに、魔王という存在は強かった。

使ってくる魔法の一つ一つはこれまで見たどんな魔法使いよりも強力だったし、

扱ってくる近接の攻撃も一撃貰うだけで死を想像してしまうほど凶悪だった。


ただ・・・・・・それでも、結局最後に立っていたのは勇者であった。


「く、はは・・・・・・お前は、でたらめだな」


消えゆく中、魔王は最期に言葉をこぼす。


「なんだ?嫌味か?俺からしたらお前らのほうが・・・・・・・」


「予言をしてやろう・・・・・・お前はいずれ一人になる、誰からも理解されず、そしてお前自身、他者を理解しようとしない・・・・・・お前は・・・・・・化け物だ」


レイの言葉を遮り、魔王は負け惜しみからか、

ただそんな訳も分からない言葉とともに、完全にチリとなって消えてしまうのだった。


「・・・・・・終わりましたね、レイ」


「そうだな・・・・・・それじゃあ帰るか」


特にこれと言って会話することもなく、レイとリリィはその王国への帰路を辿ることになるのだった。






・・・・・・・これは魔王を殺した勇者のこれからの物語。

化け物とされた勇者の人間になるために旅をする・・・・・・そんなお話。

短編の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ