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リアル〜生命〜  作者: 水瀬れいん


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別れ 2

火葬場へ到着し、先に受付へ

その後中に案内される


ロビーには皆揃っている


「ごめんね、遅くなった。」


茜「いいよ。大丈夫。」

梓「もういいの?」

「時間決まってるから......」

梓「そっか......」


母「はぁ、待ちくたびれたわよ。千早くんのお義母様たちだって」


義父「私達は大丈夫。最後のお別れなんだ、後悔の無いようにしてくれていいからね?絢音ちゃん。」


「お義父さん、ありがとうございます。」


母「......」


父「......」


茜「お父さんも何か言ったら?」


「茜姉、もういいよ......」


茜「でも......」


「お父さんも、来てくれてありがとね。」


父「......いや」


父は口下手で、気が小さくて、母には普段文句だって言えない


父「......大変だったな。お疲れ様。」


「っ、ん、ありがと......」


火葬場の職員「江藤様、中へどうぞ。」


「はい。」


中へ入ると、一人のお坊さんが立っていらっしゃった


「あ、の......?」


義父「勝手してごめんね。何かしてあげたかったから。これぐらいしかお父さんは思いつかんかった......」


千早「......っ、父さん..、ありがと......っ、ありがとうっ」


父さんと母さんは、孫の世話で大変な中お寺へ出向き、相談してくれたらしい

お葬式は出来ないから、お経を唱えるだけでもと

そのお坊さんは、お経だけをお願いしたにも関わらず法名までも授けてくださった

お布施もいらないからと


お義父さんは、流石に志程度にお包みしようとしたがお気持ちだけと受け取ってくださらなかったそうだ


家族だけの小さな小さなお葬式

お線香をあげ、法名を授かり、説法まで説いてくださった


両親の優しさとお坊さんの優しさが身に染みた


絢音も「ありがとう、ありがとうございます」と何度も何度も言いながら泣いていた



そしてお別れの時間

火葬する窯に運ばれる


やはりその時が来ると、辛くて辛くて涙が止まらない


絢音はもう声も出せない程泣きじゃくっている


ボタンを押すように言われても、絢音は首を振って中々押せない


千早「絢音......辛いけど、寂しいけど、ちゃんと送り出してあげよう?」


「っ、やだ、やだぁっ」


千早「ん、分かってる。辛いよね?でも、きちんと送って、皆で一緒に帰ろ?しおんを連れて帰ってあげようね?」


ぎゅうっと抱きしめて落ち着かせる


千早「絢音?」


「っ、ひっく、千早、も、一緒、に......」


「うん、もちろん......ほら。」


二人で火葬のボタンの前に行く


絢音の震える小さな手に自分の手を添える

その自分の手も震えていた


皆で合掌をし、ボタンを押す


泣きじゃくる絢音を抱きしめる


「よく頑張ったね......」


二人抱き合って泣いた



しばらくして落ち着き、ホールの椅子に座る

火葬が済むまで時間がかかる


泣き疲れてぐったりした絢音の肩を抱きただひたすらに待つ

絢音の母は待ちくたびれてイライラしているようだったが、俺の両親もいたため大人しくしていた




絢音と少し離れた場所で待つ


すると、絢音の父がやって来た


千早「お義父さん?どうかしましたか?」


「......その、なんだ」


千早「?」


「すまない......アイツが、いろいろと....」


義母のことだとすぐに分かった

おおかた、茜お義姉さんから何か言われたんだろう


千早「もういいです。」


「その、こっちに、しばらくいるんだろう?」


千早「そう、言われてはいますけど......」


「帰って来い。いろいろ大変だろう?こっちには梓もいるから、家事もしなくていいし。な、絢音?」


「......」


千早「絢音、どうする?」


母「帰って来いっていってるんだから、来ればいいのよ。お世話してあげるって言ってるんだから。」


「ほら、な?」


「......分かった」


「千早くんも、仕事復帰するんだろ?それならこっちから行った方が近いし。」


千早「......分かりました。少しの間お世話になります。」



本当は、行きたくはなかっただろう

ただ、ずっと仕事を休むわけにもいかないしその間絢音に無理をさせたくもなかった


しばらくして、火葬が済んだと呼ばれた


中に入ると、小さな小さな遺骨

説明を受けながら小さな骨壷へ


事前に伝えていたこともあり、小さな遺骨がしっかりと残っていた


茜「残りの遺骨、絢音と千早くんで、全部拾ってあげなよ。きっとその方がいい。」


残っていた遺骨を全部骨壷へ移していく


千早「あんなに小さかったのにね。しっかり残ってる。」


「うん......、小さくて、でもしっかりしてる。」


一つ一つ、取りこぼさないように全て移す

火葬場の職員さんも確認し、最後の最後まで全て移し終える


骨壷の蓋が閉められる


骨壷は絢音の手に


「皆、ありがとうございました。」


絢音が頭を下げる


「お母さん、遺骨も一緒にいいかな?」


母「......仏壇あるから、そこに置いたら?」


「うん、ありがとう。」


駄目だと言われれば、もう帰らないつもりだった

だが予想に反して母はいいと言った

きっと姉たちに何かしら言われたんだろう

義父母もいるし、強く出れなかったのかもしれない


全て終わった

千早の両親に改めてお礼を言うと

泣き腫らした瞳を向け、肩をポンポンと叩いて帰って行った


梓「荷物、取りに帰るよね?」


「うん。ごめんね、迷惑かける。」


梓「やる事は変わらないからいいよ。先に帰ってるから。」


「うん。」


皆と別れ、泊まるための準備をしに一度自宅へ帰る


「絢音......」


「大丈夫。無理になったら早めに帰るつもりだし。それに千早も大変だもん。ご飯があるだけでも助かるしね。」


「......本当に、ちゃんと言って?無理させたくないから。」


「ん、ありがとう。」



家族全員分の荷物をまとめる


子供達は姉と先に向かった

姉の子供達もいるからそこは恐らく大丈夫だろう


「千早、準備できた。」


「うん。もう向かう?」


「子供達心配だし、もう行く......」


少し不安そうな表情の絢音


「絢音?」


「うん......、子供達、夜大丈夫かな......」


「環境が変わるし、ぐずる可能性はあるけど......」


「そう、だよね......」


「絢音、しんどくなったら帰ればいい。無理に向こうにいる必要ないよ?家事俺も手伝うし、無理な時は父さん達も手伝ってくれるって言ってるから。」


「ん、ありがとう。」



車で絢音の実家に向かう

やはり気は乗らないのだろう

血のつながりのある家族ではあるが、絢音の家は少し異常だ

俺と結婚するまで、絢音は自分の家族の異常さに気づかずに過ごしてきたようだった


家族の中でいじめにあっているような状態だ


行事ごとの度に呼ばれ、行けば家政婦のように扱われる

行けば手土産は必ず持参

持っていかなければ辛辣な事を言われる

誕生日前や母の日になればあれが欲しいこれが欲しいと催促があり、持っていって気に入らなければ使ってももらえない

それなのに絢音自身にはプレゼントなど一切ない

もちろん孫である子供達にももらった事すらない


だが姉家族にはどうだ

旅行に連れていき、孫達には誕生日プレゼント

塾の費用に歯の矯正費用まで出してあげている


あまりにも差があり過ぎて唖然とした


「こんなこと言いたくないけど、絢音の家族おかしいよ?」


と言った時、きょとんとしていた


言われて初めて気づいたのだろう

長年そういう扱いを受けてきたせいで、麻痺していたのだ

自身と姉二人への対応の違いに気付き、少しずつ距離を取るようにしていた

それに母親は不満そうにしていた


母親は自分が恵まれた母親だと見られたい欲が強いのだと俺は感じていた


俺達が挙式する直前に自身の浮気がバレ、父親に一度家を追い出された

しばらく別居していたが、父親が生活能力が無く母親自身も収入の面で不安もあったこともありいつの間にかよりを戻していた


絢音は浮気相手が絢音の知り合いだった事もあり、その頃から母親を嫌悪はしていた

だが中々距離を取れずにいた


俺は絢音に傷ついてほしくなかった

だから、大変かもしれないけど自宅で過ごす方がいいと心の中では思っていた

でも、それを口に出すタイミングもなく決まってしまった


それを後悔するのに、そんなに時間はかからなかった





梓「そっちに荷物置いて?布団敷いてあるから、少し横になってれば?」


「ありがとう。」


母「甘やかすんじゃないよ。動けないわけじゃないでしょ?」


梓「それじゃ、来た意味ないでしょ。なんの為にこっちに呼んだの?」


千早「それなら連れて帰ります。先生からもまだ無理させないよう言われてますから。」


母「ぁ、千早くん。違うのよ?そんな意味じゃ。ああ、ほら、散歩とかもね?」


罰が悪そうに苦笑いする母親


すぐに連れて帰ろうと思った

俺が仕事に復帰すれば、ここでまた傷付く

そう思った


「千早、大丈夫。分かってるから。」


千早「でも......」


梓「千早くん、家事は私が全部するし、無理はさせないから。」


千早「......分かりました。」


翌日朝から仕事に復帰する

絢音の母親も日中は仕事があるから昼間は大丈夫だろうと思った

でも、それが間違いだった


その日の夜は、やっぱり環境が変わったせいか次男が夜中にグズってしまった

絢音が抱っこしてあやしても中々泣きやまず、いたたまれなくなったのか次男を抱いて絢音は外へ行った

俺は長男の側にいるように言って出ていき、しばらくすると落ち着いてすやすや眠る次男を抱いて戻ってきた


千早「大丈夫?」


「ん、大丈夫......」


千早「重かったでしょ?」


「平気。私じゃなきゃダメだし。」


千早「俺が行っても良かったのに。」


「泣きやまないかもしれないし。大丈夫。」


千早「絢音も身体休めなきゃいけないんだから、無理な時は言って?」


「うん、分かってる。」



そうしてどうにか1日目は終わり、2日目を迎える


「おはよう、ごめんね、昨夜グズって......」


梓「仕方ないよ、大丈夫だから。」


母「はぁっ......」


「ごめんね、お母さん。」


母「いいわよ......」


千早がいたから強く言えなかったんだろう

でも明らかに不機嫌だった


昼間子供達は、梓姉の子供達とめいいっぱい遊んだ

父と母は仕事へ

千早も仕事へ向かった



梓「......ご飯、もういらないの?全然食べないじゃん。美味しくない?」


「そんなことないよ。入らないだけ。」


梓「ねえ、絢音......」


「ん?」


梓「ごめんね......、あの日、私さ」


「誰のせいでもないから。」


梓「でも」


「責めたって、あの子は戻らないから......」


梓「......」


「そんなに長くいるつもりないよ。お母さん、イライラしてたし。」


梓「絢音、でもさ」


「梓姉には分かんないよ。」


梓「?」


「私みたいな扱い、一度だって受けたことないでしょ?」


梓「絢音みたいな扱いって......」


「......」





母「あんた、今日なんか手伝った?まさか1日そうやってグダグダしてたの?だから豚みたいになんのよ。」


梓「お母さん」


母「昨夜もあんたの子うるさかったし、あー、イライラする。まさか今夜もじゃないわよね?」


「......ごめんなさい」


母「早くご飯作れ。疲れてんのよこっちは。」


梓「絢音、いいから座ってな。」


「いいよ、手伝う。」


母「ご飯出来たら呼んで。」



そう言って母は自分の部屋に引っ込んでいった


梓「......」


「......」


梓「絢音......」


「別に気にしてない。いつもこうだったでしょ?姉さんたちも同じだったじゃない。」


梓「っ......」



体調もまだ良くならない中、やれる事をする

甘えるつもりは最初からなかった

どうせこうなると予想してたから

諦めてしまえばそんなの簡単だ

期待しない

求めない

感情を押し殺して対応する

実家ではいつもそうだった


梓姉が少し買い物に出た

すると見計らったかのように母が部屋から出てくる


母「あんたね、いつまでもウジウジしてるんじゃないよ、こんなことぐらいで。迷惑だって分からないの?家族全員分の食事代払え、迷惑料も。昨夜もお前の子がうるさくて眠れなかったんだ。」


「......」


母「何とか言いなさいよ。はぁっ、そんなんだからあんたの子死んだのよ。あんたのじいちゃんが迎えに来てあげたんだ、よかったねぇ?感謝しなさいよ。」


「っ」



梓「ただいま」


母「ああ、おかえり。」


梓「絢音?どうしたの?」


「......なんでもない。」


梓「でも」

母「梓、ほっときなさい。」

梓「お母さん......」


この人は、我が子が子どもを亡くしたことすら一緒に悲しんではくれないんだ


その事実に、胸が押しつぶされそうだった







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