5話 モチベーション爆上がり事件
空が夕焼けに染まる時間。
ようやく、騎士団の訓練は終わりを迎えました。
こんな長時間、体を壊してしまうのでは…?と思ったそこの皆さん。その通りです。だからこそ今日だけは特別なんです。
こんなにもファンサ…ごほんっ、お手本を見せてくださっている、騎士団のために動こうと、役に立ちたいと思ってくれる民を増やすためのイベントなのです。
何回でも言います。特別なのです!
こんな特別な日に、特別な役割を仰せつかった私たちは、ほんとうに、ほんとうに幸せ者だと思います。今日の日記に書くことはただ一つだけです。
「明日死んでもいい…」
「こら、ソフィー。まだ仕事中よ」
「あぁっごめん。魂が、ちょっと肉体とさようならしそうだったわ」
「いやでもそうよね。すっごくわかるわ」
「この役目、たのしい」
「心からすぎる言葉ね。激しく同意だわ」
今何をしているのかというと、騎士団の方々の口に入る、食事を作っているのです。
推しの口に入るもの。
これを丹精込めて作らなければ、いつ丹精を込めるのかというくらいには丹精込めて作っています…。
そして。
がやがやと騎士様方が食堂に入っていらっしゃいました。
特に決められた食事の時間帯などはなく、自由に好きな時に食べるというスタイルです。
なので、バイキングという形式を取ってみようと思いました!
品数も豊富で、追加もすぐに作れるようなものばかりです。
お口に合えば、とても、嬉しいのですが少し緊張してきました。
まるで姑にだされた課題を提出するかのようです。
数人で連れ立って私の前にいらっしゃったのは、クリス様の弟君であるルイス・ロドリー様。
ルイス様は、クリス様のツンデレとは違い、
人懐こい性格をしていて子犬のようなのです。
しかし、ただ子犬なのかと言われれば、さすが騎士様と言いたくなるほど華麗な裏の顔がございます。
私、そうは言っても子犬なのでは、とこのときは侮っていました。
大変反省しております。そうですよね、人は見かけによらぬもの…。
「お世話係さん、こんばんは〜」
「はい、こんばんは」
「ねぇねぇ、どうして甘いものがあるの?」
「甘いものがお好きな方がいらっしゃるとお聞きしましたので、ご用意いたしました。」
「そっかぁー」
ルイス様に探るような目でじろじろと見られています。
困りましたね…。なにか疑われるような行動をとったのでしょうか私は。
「おい、ばか。ルイス」
「兄さん!」
嬉しそうな声でルイス様が振り返りました瞬間ルイス様はクリス様に腕を引かれて、食堂の外へ出て行かれました。
どうされたのでしょう…。
残されてしまった、ルイス様と同期のお三方は困ったように目を見合せました。
しょうがないなというような仕草もしていらっしゃったので、頻繁にあることなのでしょうか?
「すみません、ルイスが。ご飯美味しそうです、ありがとうございます」
「いえいえ!大丈夫ですよ。沢山お召し上がりください」
皆さんプレートに山盛りにして、テーブルのほうへ歩いていかれました。
先ほどのことで、すぐにでもライラに原因となったことを聞いてみたかったのですが、あいにく他の騎士様の対応をしています。
後で、絶対、確認しましょう。
弟と同じくらいのルイス様に嫌われるのは少々、いえ、だいぶ胸に刺さります……。
ルイス様はブラコンですわ〜!
ちなみに、デレようとしてツンになるツンデレです。
ツンをしっかりデレとして受け取れる器用な双子の妹がいます。




