3話 カイル兄さん…(ときめき)
「ありがとう〜」
「いえいえ」
「ありがとね〜」
「お疲れ様でございます」
そんなやり取りを数十回。
無事、供給過多で心の息があがっております。
まずっ、まずですね..っ、いえ、ちょっと落ち着きましょう。
....すー、ふぅ。
はい。まず、この騎士団には前にも言った通り、『氷の騎士様』のみならず、お顔が素晴らしいだけでなくものすごくお強い方がたくさんいらっしゃいます。
「あ、ごめーーん!お世話係さん!お茶こぼしちゃった!!なにか、拭くものない!?」
「はーーい!大丈夫ですよ、私がやっておくのでお着替えを...」
「いや!いいよ〜自分でやるから!申し訳ないし!」
この方はカイル・ジュート様。
世話好きで兄貴肌なのだが壊滅的な料理のセンス、それでも来る人拒まずの優しい方で、たいへん人気がございます。
今も私の代わりに片付けようとしていらっしゃいますが...。
「いえ!これは、私の仕事、ですので。
大丈夫でございます。...休憩中には休憩をしっかりなさってくださいませ」
すこし語気を強くしすぎました...。
...反省です。
しかし、休憩中なのだからこういうことは私たちに任せてほしいと思うのも事実ではありますので。
「あ、うん、そうだね。…ありがとう。でもごめんね〜、手を煩わせちゃって」
「何をおっしゃいますか。大丈夫ですよ。
任せてもらえるのは嬉しいことですので。」
これも、間違ってはいません。
しっかりちゃっかり本当の気持ちを混ぜると相手には伝わりやすいのですよ。
でも。
『係長に任せてもらえる』というのと、『騎士団の方に任せてもらえる』というのは比べるまでもなく、『騎士団の方に任せてもらえる』ほうがだんっっぜん嬉しいこと、でございますっ。
それにしても優しい方です。
後からも、ごめんね〜、ありがとう〜、を連発されていました。
騎士団の中ではお世話係のような方がいらっしゃるとは聞き及んでおりませんので、世話好きなカイル様が率先してやっているのでしょう。(妄想)
なんてっ、なんて尊いっ。
カイル兄さん、なんていうあだ名が浮かんでしまいました...。
...どうしましょう、しっくり来すぎて頭から離れませんね。
本人の前で言わないようにしないと...。
カイル兄さんは、バラのような赤い髪にブルートパーズのように煌めきを閉じ込めた力強い目をした兄貴分の騎士様です。
世話好きで、基本的には誰にでも優しいひとです。




