10話 話し合い、してください
倉庫の裏から訓練場の方へ向かっていますと、私を連れてきてくださったアスール様はいらっしゃいませんでしたが、代わりに。
「すまない」
クリス様が、頭を下げており、ます…?
クリス様が頭を下げております!!!
なんてこと!?
「「いえいえいえ!」」
目でライラと会話してライラに譲りました。
「クリス様には、何も迷惑などかけられておりません。」
には、ってとてもルイス様への恨みを感じますね。
…おもしろいですね、こんなにも弟思いの兄が、頭を下げていることをルイス様は知らないのでしょう。
「ですが、1つよろしいでしょうか。」
「あぁ」
「今すぐに、というわけではございませんが、近いうちにルイス様とクリス様、他の冷静に仲裁できる第三者を混じえてお話してくださいませ」
「…わかった」
「それさえ出来ればルイス様は立派な騎士に近付けますね」
そう言ってクリス様に笑いかけるライラは少し悲しそう…。
戻って昼食を取り終えた私達は、今は情報交換中です!
「ファンクラブの者が、お世話係なんて、やっているなんて信じられない。即刻やめて、ファンらしく騒いでいたらどうだ?だって」
「性格わる」
「そうでしょ、わかってくれた?」
「うんそうね、それはたしかに庇えないわ」
「ほんとに兄弟の不仲(仮)に巻き込まないでほしいわ」
「ちゃんと話し合えたらいいね」
「話し合え、合わなきゃ私は訴えてやる」
「ふふふっじゃあ私も加勢するわ」
笑いながら扉を開けたら、目の前に、アスール様がいらっしゃいます。
なんか、今日は驚くことが多いですね……?
「…」
「?」
笑顔のまま二人で固まってしまいました。
「どっ、どうされましたかっ?」
とっさに声をかけるものの、裏返ってしまいました…。
やはり、近くにいらっしゃると緊張してしまいますね、困りました。
「後日、話し合いの場に来て欲しいとルイスが」
「あ」
これはライラにですね!そう思いライラに目線を逃しましたが、
「二人ともだそうだ」
「…」
ライラに話しかけようとした体勢で固まってしまいました。
たしかに、第三者、しかも冷静な第三者を挟んでくださいとは言ったものの…。
ライラも困ったようにこちらを見ています。
「…少々、係長に相談してからでもよろしいでしょうか」
「問題ない」
頷いていただきました!
それでは失礼しますと廊下を歩いて係長室に向かいます。
「「係長!!」」
「ノックしてね…」
「「申し訳ございません!ご相談が!!」」
「君たちほんとに息ぴったりだよね…」
係長は何かの書類を置いて立ち上がり、ソファのほうに移動して、私達と対面に座ります。
「それでどうしたの?」
「かくかく」
「しかじかで」
交互に係長に伝えると難しい顔をして顎をさする。
「一応、騎士団との個人のゴタゴタではないと思うけど」
「はい、もちろんです」
「ルイス・ロドリーが改心しなければ君たちは逆恨みされるかもしれないよ、それでもいいのかい」
「…」
「私は大丈夫です、あれだけ言ったのに改心しないなんて私がさせません」
「ライラ…」
「ソフィアは?」
係長に問いかけられても答えることができません。
逆恨みは正直怖いです。
ー弟妹が多い私は今まで平和的な解決に逃げていたような気がする…
「…ー私は、弟にああなって欲しくはありません。…クリス様も同じだと思いました…なので、後悔はしないと思います」
「うん…そうだね、わかった」
うんうんと頷きながら難しい顔を崩してニコニコする係長は父親の顔をしていました。
「うちの子も最近なんだか素直じゃなくてね」
娘さんが二人いらっしゃる係長は、優しいお父さんをしているのでしょう。
素直じゃないと言いながらも愛おしそうに顔を綻ばせています。ゆるっゆるです。
「うん、だからルイスくんも解るよ」
「…そうですね」
「大丈夫だよ、根は素直な子だからね。あ、どうしようかアスールくんから伝言されたんでしょ?」
「「あ…」」
「……うん、僕の方から伝えておくね」
「「お願いします…」」
現実を受け入れられず、戸惑っている私達を見かねて係長が了承の意を伝えてくださるようです。
本当に仕事中なら我慢はできるのですけど、なかなか難しいですね。
慣れるように頑張らなければ。




