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北国物語(仮題)  作者: GP
第一章
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第一話

【北方の王国 王都ノルディラン 深夜の王城】


エドラン・ハーグレンは、重厚な扉を押し開けて玉座の間に入った。薄暗い部屋では、燭台の炎が壁にかかる豪華なタペストリーを揺らしている。玉座に腰を下ろした王の顔には、疲労と緊張が濃く刻まれていた。


「エドラン、よく来たな。」

王の声は重く、響きわたる。その声に応じて、エドランは膝をつき頭を垂れた。


「お呼びですか、陛下。」


王は黙って一通の手紙を差し出した。封蝋には聖なる教会の紋章が刻まれている。エドランはそれを受け取り、慎重に開封した。手紙には、聖都のエリオン司祭からの切迫した訴えが記されていた。


『神聖都市が堕ち、新たなる闇が広がる。"天啓"の加護を持つ者が生まれようとしているが、その命は狙われている。護衛の任を請いたい。』


エドランは読み終えると目を閉じ、深く息をついた。「重い任務ですね。」


「お前にしか頼めぬ仕事だ。」王の声には覚悟が込められていた。「お前はその手で国を守り、多くの命を救ってきた。だが今回の任務は、それ以上に重要だ。国の未来がかかっている。」


エドランは顔を上げ、まっすぐに王を見据えた。「承知しました。必ずや成し遂げます。」


王はうなずき、さらに命令を続けた。「この任務は秘密裏に行わねばならぬ。お前が信頼する者たちを選び、即座に出発せよ。」



【バーリンの鍛冶屋】


王宮を後にしたエドランは、冷たい夜風を浴びながら王都の鍛冶屋街へと向かった。冒険者時代に苦楽を共にした仲間たちを一人一人頼るつもりだ。その最初の訪問先は、老ドワーフ、バーリン・グラントハンマーの店だった。

扉を軽く叩くと、鉄の匂いが漂う店内で灯りがともる。やがて現れたのは、白髪混じりの長髪を束ねたドワーフのバーリンだった。


「誰だ? こんな夜更けに……。エドランか?」

バーリンは驚いた様子で目を細めた。


「久しぶりだな、バーリン。」エドランは微笑みながら応えた。「少し話がある。」


店の奥に通されたエドランは、一息つくと事情を説明した。バーリンは話を聞きながら深くひげをなでる。


「冒険か……。もう若くないわしを、まだ引っ張り出すつもりか?」バーリンは少し笑ったが、その声には本気で心配する響きが混じっていた。


「お前が必要なんだ。」エドランの声は真剣だった。


バーリンは溜息をつきながらも、懐かしい友の決意を感じ取った。「まったく、仕方のないやつだ。リトを説得せねばな。」


奥から眠そうに現れたリトは、状況を聞いて目を見開いた。「僕も行きます!エドラン殿の力になりたい!」

「リト。」バーリンは静かな声で言った。「今回はお前を連れていける旅じゃない。ここで店を守るんだ。」

リトは唇を噛み締めた。「どうしてですか!僕だって……!」

「お前の仕事は、わしの代わりにこの店を守ることだ。それも立派な戦いだぞ。」バーリンの言葉に、リトは悔しそうにうなずいた。



【タルヴァスとの再会】


次にエドランが向かったのは近衛兵が滞在する兵舎だった。扉を開けると、剣を手入れしているタルヴァスが静かに顔を上げた。


「また面倒事か?」

低い声で言うタルヴァスの瞳が鋭く光る。


「ああ、だが今回は一筋縄ではいかない。」

エドランが使命を語ると、タルヴァスは深い沈黙に包まれた。その沈黙は、やがて覚悟へと変わる。


「俺も行こう。」短い一言に、タルヴァスのすべての意志が込められていた。


「ありがとう。」エドランは言葉少なに答えたが、互いの信頼は十分に伝わっていた。



【リヴィエラへの便り そして旅立ち】


最後にエルフであり腕利きの冒険者でもあるリヴィエラ・ヴァレインに声をかけようとしたが、彼女は現在遠く離れた街で活動中だと聞いていた。それでも、エドランは密書を用意し、迅速に届けられるよう手配した。



夜が明ける頃、エドランの周りには再び集まった仲間たちがいた。バーリン、タルヴァス。彼はこの小さな集団で新たな冒険に挑む準備を整えた。


「さて、行くぞ。道のりは長い。」



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