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ケツメド・アスタロウ

 さて、いよいよ俺は冒険に旅立つこととなった。


「申し訳ありません、内容が内容だけに、勇者様の存在は極秘事項となっているため、出立の見送りもできませんで」


 国王が申し訳なさそうにそう言った。


 まあ仕方ないっちゃ仕方ないよ。正式に軍隊を動かして魔王軍を撃破するんじゃなく、勇者と聖剣の個人の力を使って一点突破で魔王を討ち取ってくる電撃作戦だからな。


 四天王のカルアミルクとかいう奴にはその存在を知られてはしまったが、公に知らせるのはあまりにもリスクが大きすぎる。


 よって歓迎会はあったものの、一般へのお披露目とか式典とかは一切無しだ。


 とはいえさあ、支度金はたんまり貰ったものの、普通は手練れの冒険者をつけてくれたりだとか、そういうのがあってもいいんじゃないのかな?


「申し訳ありません、冒険者と言えば聞こえはいいが要は根無し草の無頼漢。そう言った不逞の輩に詳しい者が王宮にはいませんので……」


 その不逞の輩に俺がこれからなるんですけど?


「まあ、分からない事があれば儂に聞けばよい、勇者よ。大船に乗った気持ちでいるがよい!」


 そして唯一の冒険の同行者がよりにもよって聖剣の鞘としてついてくる、この先代国王だってんだからそりゃ気分も下がるわ。


 先代国王のケツからは今も聖剣がぶら下がってる。これ歩いてるうちに抜け落ちたりしねえのかな?


「心配ご無用。勇者も知っての通り、聖剣と鞘の間には結構抵抗があるので簡単には抜け落ちませぬぞ!」


 別に心配はしてねえよ。聖剣なくしたらその場で冒険は打ち切りだからな。しかしこんな状態でよく三百年も国王やってたな。不便じゃねえのか。


「慣れてくれば大した不便もないぞ。椅子に座るときはこの、以前に召喚した勇者様から教えて頂いた真ん中のあいた椅子にすわっておったからな」


「スケベイスじゃねえかよ!!」


 俺達の荷物の中で一番かさばってるのがこのスケベイスだよふざけんな。


「大丈夫ですよ勇者様。聖剣の力があれば、きっと魔王も倒せます。本当は私もついていきたかったのですけれど、お父様が反対されて……」


 残念そうにそう言うのは王女様だ。おっぱいはデカいけど頭おかしいからあんまりコイツと絡みたくないんだよな。


『王女の言う通りですよ、何かあれば私もサポートしますし、胸を張ってください』


 脳内に話しかけてくるのは女神さまだけど、基本コイツ音声サポートだけなんだよな、この臭い聖剣は諦めて、別の新しい聖剣くれないかな。


『臭いかもしれないけどその聖剣の力は確かですから。それだけの武器を作り出すとなると、いくら女神でも大変なんですよ』


「まあたしかにな。四天王もこれでぶっ飛ばしたし、真っ向勝負なら負けることはないか。うん、なんだかできる気がしてきたぞ」


「その意気だ勇者よ」


「ところで先代国王の名前はなんていうの?」


「ケツメド・アスタロウと申す」


「うわダメっぽい」


 本名を聞いたら急激にテンション下がってきた。何だこの約束された運命みたいな展開は。絶対コイツと一緒に冒険したくないんだけど。聖剣をケツの穴に入れるために生まれてきたみたいな名前じゃねーか!


「ちなみに王女様はなんて名前なの?」


「ケツメド・イリユースです」


「なんでそこは普通なんだよ! そこは『ケツメド・明日穂』とかそういう名前が来るところじゃねーのかよ!! 逆に期待を裏切られた感じだよ!!」


「先代は昔の人なのでちょっと名前が古臭いカンジなんですわ」


 古臭いとかそういう次元のレベルじゃねーんだよ。


 もうこんなあほくさい空間にはいられない。俺は荷物をロバの背中に括りつけるとすぐに城門に向かった。


 はあ、気が重い。魔王の事も不安だけど、何よりケツに剣の刺さったおっさんと二人旅っていうのが気が重い。早いとこ美少女エルフのエロエロ奴隷でも購入してハーレムにしないとこの気持ちは晴れないだろう。


「アスタロウ、せっかく金はあるんだから荷物持ちの奴隷とかでも雇わない? なんかそういう店知らない?」


「このアルトーレでは、三百年前、儂が国王になった際に奴隷制度を廃止しておる。少なくとも表向きはそんな非人道的なものは存在しない」


 意外と名君だよこのおっさん腹立つな。


「おぬしの国にはまだ奴隷制度があるのか?」


 あるよ! 社畜ってのがよ!!


 とぼとぼと歩く二人。ようやく城門を抜けるというころになると、急に青かった空が曇り、そして異様な雰囲気が辺りを包み始めた。


 空気が重く、ねばつく。門の向こうから邪悪な気配を感じる。もう嫌な予感しかしない。


「フフフフ……」


 唯一良い材料は、聞こえてきたのが女性の声だってことくらいか。


「我が名は魔王軍四天王の一人、魔眼のイルウ=レッフーサ。カルナ=カルアを倒した勇者というのは貴様か?」


 ああもう嫌な予感的中だよ! カルアミルクの関係者じゃねえか。銀色の髪に赤い瞳の女性型の魔族。冒険に出る前からもう四天王二人目だよ!


 っていうかこの国のセキュリティ一体どうなってんだよ。この三日で二回目の四天王の襲撃だぞ!なに城まで敵の侵入を許してんだよ!! おい先代国王! どうなってんの!!


「むう、国境の警護がガバガバじゃな」


 ガバガバなのはテメーのアナルだよ!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] な、名前で判断しちゃ…… やっぱりアカンやつだ
[良い点] 先代国王(鞘)と2人旅か… ウテナみたいな収納法だったら王女様がお供になったかもしれないのに、絵面がたいへん残念 コバケンにはスタイリッシュな異世界無双は縁遠い
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