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認めない

 アンススと共に今回の「聖剣狩り」調査の依頼を受けた冒険者、コンコスール。


 こいつの態度がまた悪い悪い。


 のっけから俺にガンつけまくって「認めない」発言。てっきり「勇者として認めない」って意味なのかと思ったら「アンススの伴侶として認めない」という意味だとは。


 そんなの俺だって認めたくねーよ。まあ勇者の方も認めたくないんだけどね。


 ……しかし。ということはさ?


「お前、アンススの事が好きなの?」


「はぁ!?」


 そうなるよなあ? そうじゃなきゃ俺とアンススがどうなってもお前には関係ないだろう。どうにもならんけどよ。


「おまっ、なんっでそうなんだよ!? 俺は全然っ違っ……」


 顔を真っ赤にして激しく目を泳がせながらコンコスールは否定しているが、いくら何でも分かりやすすぎる。


「俺様が! こんなバカ女を好きになるわけないだろうが!! こんな、ちょっと顔が可愛くておっぱいがめちゃデカくて冒険者としても誰もが恐れる最高ランクだけど本当は優しいところもあるだけのバカ女なんか、この俺様が好きなわけねえだろうが!!」


 なんなんこいつ。惚気製造機か。こんな分かりやすいツンデレ今日びラブコメでも出てこねえぞ。これで気付かない方がどうかしてるぞ。


「こんな感じで、顔を合わせるたびに私の事を罵倒してくるんだ。ケンジくん、コンコスールが私の事を好きだなんて、笑えない冗談はやめてくれたまえ」


 まあゆうてもモノホンのバカには通じないんですけどね。


「お前の方こそどうなんだ。前回の依頼中にダンジョンの中で知り合ったそうじゃねえか」


 どうって、何がだよ。ダンジョンの中で知り合ったからなんだってんだ。


「こんな美人で胸が大きくて意外に性格は可愛いアンススと同じ空間にいて、その吐きだした息を吸って、好きにならないわけがねえ! お前アンススを狙ってんだろう!?」


 キモいぞコイツ。何かやらかす前に逮捕しといたほうがいいんじゃないのか。


「だが残念だったな。今回の依頼は俺が一緒だからな。アンススに変な真似をしようとしたらタダじゃおかねえぞ。このジャガー級冒険者のコンコスール様が……」


「ジャガー級!?」


「お、おう」


 思わず聞き返してしまった。このポンコツンデレ男、ジャガー級なのか。ランクの上下ははっきりは覚えてないけどジャガー級ってかなり上の方だよな。


「ケンジくんケンジくん」


 ん? なんだアンスス。


「私、ハリネズミ級」


「あ? はあ。知ってるけど」


 なんだよ急に。お前がハリネズミ級だってのは知ってるよ。お前じゃねえんだから忘れたりしねえよ。


「ま、まあとにかくだ。このジャガー級冒険者のコンコスール様が来たからには、『勇者様』の出番なんざねえんだよ。おとなしく宿でマスでもかいてな」


「ジャガー級の冒険者か……」


 そう言われるとなんか強そうに見えてきた。実際身長も高いし、引き締まった細マッチョ系のいかにも身体能力の高そうな体してるもんな……


「ケンジくんケンジくん」


 だから何だよアンスス。


「私、ジャガー級のいっこ上の、ハリネズミ級」


「だから知ってるっつうの! なんなんだよさっきから!」


 何が言いたいんだよ。とうとう本格的に頭おかしくなったのか。俺が怒鳴るとアンススは不満そうに頬を膨らませた。二十五歳の仕草か、これが。


「ケンジくんさっきからリアクションがおかしいよ! 私はジャガー級の上のハリネズミ級冒険者なんだよ? なんでジャガー級の方にばっかり反応して私のハリネズミ級への反応がおざなりなの!? おかしいでしょ!!」


 おかしいって言われてもな。


 「ジャガー」と「ハリネズミ」じゃどう考えてもジャガーの方が強そうだろう。


 そりゃ冒険者のランクとしてジャガーよりもハリネズミの方が上なのは知識としては知ってるけどさ、体が反応してくれねえんだよ。ジャガーの方が上だろう、普通。


「私はね? 自分の冒険者ランクの事なんか今まで一度だって自慢したことはないし、むしろ私の肩書を利用しようとしてくる奴らが大勢いたからこんなランクなんかで判断してほしくないって思ってるのよ! でもね!? ケンジくんにだけは尊敬されたいの! わかる!?」


 分かんねえよ!! どうでもいいよそんな話!!


「とにかくだ!」


 話がとっちらかってしまったが、会話のバトンは再びコンコスールの元に戻った。


「俺はこんなガキなんざ、勇者としてもアンススの男としても認めねえ!」


 俺もどっちも認めてねえよ。


「偶然聖剣を手に入れただけのラッキーなガキだろうが。こんな奴現場じゃ役に立たねえよ」


 その通りだと思うよ。俺は何もしたくない。


「さっきから聞いておれば、好き放題言ってくれるのう」


 ここまで空気に徹していたアスタロウが会話に割り込んできた。また面倒なことにならなきゃいいけど。ていうかお前が聖剣を(オトナの)おもちゃにしなければ俺がこの世界に来ることもなかったんだよ。


「ケンジは聖剣に認められた、れっきとした勇者じゃ。その証拠に、三百年間誰も抜くことのできなかった聖剣を彼だけが引き抜くことができたんじゃ。それこそが証しじゃ」


「フン、『選ばれた』だぁ? 結局何の力も持たず、聖剣におんぶにだっこの『勇者様』ってことか?」


「ケンジを侮らん方がいいぞ。聖剣を使えるだけではない。彼は日々成長し、新しい、彼だけのスキルも手に入れておる」


 擁護してくれるのはうれしいんだけど、俺が手に入れたスキルって『勃気を探知するスキル』だけなんですけど。


「なにぃ? どんなスキルを持ってるっていうんだよ!」


 勃〇してる人の気配が分かるスキルだよ。言わせんな恥ずかしい。


「言えよ! どんな能力隠してやがんだ?」


 言えるわけねえだろ。こんな何の役にも立たないスキル、言っても笑われるだけだし。


「お前間抜けか? 仲間でもない奴に自分の能力を明かすバカはいないぜ」


「チッ……」


 ふう、なんとかごまかせた。


「ケンジくんケンジくん」


 またアンススか、鬱陶しいなあもう!


「私には教えてくれるよね? 私は仲間だよね? というか未来の夫の能力は把握しておかなきゃいけないし」


 誰が未来の夫だよ! お前にこそ言えねえわ。思いっ切りセクハラになるだろうが。


「ねえねえ教えて。いいでしょう?」


 ああもうしつこい!


 ……ん? なんだ、コンコスールの野郎。俺に夢中で話しかけてるアンススの後ろから、背中? いや、尻をじっと眺めて……いや、これは……


「おい、お前何勃〇してんだよ」


「はぁ!? い、いや勃起なんかしてな……してない! してないから!!」


「サイテー。何考えてるのよコンコスール」


 役に立ったわ、スキル。

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