NTR
「おのれ勇者ケンジ、こっちの邪魔ばっかりしやがって!」
邪竜メルポーザは怒髪天、怒りに目を血走らせている。
まあ、正直怒るのも仕方ないとは思うわ。今回の件に関して言ってみればショウさんの研究に興味を示さずにいたくせに魔王軍側の勧誘の邪魔ばっかりするわ、ドラゴンを犯そうとするわでやりたい放題だもんな。
とはいえ、こちらにも事情というものがある。ドラゴンを犯そうとしたのはそこにいるエイメとかいう変態が勝手に暴走したことだし、それに関して言えば最初に暴力を用いて村を脅したお前の方が悪いしな。
セリカの研究については今回限りの特異点ってことで歴史の闇に葬り去るって、もう結論がついてるんだよ。
「ということで、そこにいるエイメを引き取ってここはひとつ大人しく下がってくれないかね」
「師匠! 信じてたッス!!」
「ふざけるな! 俺は清純派が好きなんだよ!! 初対面のドラゴンを犯そうとする女なんか絶対に御免だ!!」
「そんな!!」
まあ分からんでもない。俺だったらこんなキ〇ガイ絶対に嫌だからな。エイメはショックでその場に倒れ込んだが、俺はそれを無視して聖剣を構える。
「ふん、それが噂のアヌスカリバーか」
不本意な名前が広まってはいるが、こいつの威力は絶大だ。交渉の余地はない。俺はすぐさまメルポーザに向かって聖剣を横薙ぎに振るった。
「甘い!!」
空間を切り裂き、衝撃波がメルポーザを襲ったが、竜はそれに合わせて跳躍し、そして俺目がけて落下してきた。
これは聖剣でもどうにもならない。そう直感した俺は急いで落下地点から逃げた。たとえ聖剣の衝撃波を放ったとしても絶対的な位置エネルギーと質量の前には無力だと思ったからだ。
凄まじい地響きと共に竜は着地し、その衝撃で俺は危うく転倒しそうになった。ここが固い岩盤の上にある地形じゃなければきっと地割れが起きていただろう。
そして恐ろしいのはその落下の衝撃にすら耐えるドラゴンの耐久力。この体にたとえ聖剣の衝撃波を直撃させたとしてもカルアミルクのように吹っ飛ばすのは難しいんじゃないだろうか。
「クソッ!!」
慌てて俺は聖剣を振って再度衝撃波を送るが、メルポーザは器用にかがんでそれを躱した。
「こんなものか? カルナ=カルアを倒したという聖剣の力は?」
距離が遠すぎるせいだ。ほとんどノーモーションに近い動きで至近距離から撃破できたカルアミルクの時とは違い、竜とは距離があり過ぎる。
この距離で剣を振っても竜の方は見てから十分な余裕をもって斬撃の衝撃波を躱すことができる。至近距離の混戦の中で撃つか、何か他にもっと工夫をしないと当てるのは厳しそうだ。とはいえ圧倒的な質量攻撃を仕掛けてくる竜のフトコロに入り込むなんてことが出来るだろうか。
「オオオオォォッ!!」
メルポーザは大きく息を吸い込むと、口周りに小さな放電現象を放ちながら爆炎を放った。俺は大きく聖剣を振りかぶり、出来る保証はなかったものの、それを打ち払うように剣を振る。
爆炎と聖剣の衝撃波は互いに威力を相殺して打ち消し合った。正直、この戦いは互角になりそうだ。カルアミルクの時のように不意打ちによる決着があればよかったが、ごちゃごちゃやってたせいでその可能性は潰してしまった。
あそこでエイメがメルポーザをレイプしようとしなければ……済んだことを悔やんでも仕方がない。
その後も互いに決め手のないまま戦いが続くが、能力を限界まで使って戦っているメルポーザに比べてこちらは少し余裕がある。
とはいえ、ここにきてはっきりと自分の弱点が分かってきた。経験、技術共に圧倒的に少ない。だから聖剣の力に頼った不意打ちで勝負を決められないと優勢に見えてもこっちの方が不利だ。おそらくあのよく口の回るドラゴンは戦いながらも頭の中で反撃のシナリオを組み立てているところだろう。
何か、何か一瞬でも隙を作れるような隙が欲しい。表面上優勢に見えてもそうしないと何かの拍子にひっくり返されるのが目に見えている。
ガシャアン、とそう考えていた俺の後ろでシャッターの上がりきる音がした。
ちらりと視線を送るとショウさんのアトリエのシャッターが開いている。視線を送りながらも戦いの手は止めない。メルポーザの方もアトリエを気にしながらも戦いに集中しているようだ。
だが、ショウさんが協力してくれるなら何とか隙を作れるかもしれない。
キュキュキュ、ブオン、と内燃機関のスタート音が聞こえた。セリカのエンジンをかけているんだ。やっぱりショウさんは俺に協力するつもりだ。1トン以上の鉄の塊が時速数十キロの速度で突っ込めばドラゴンにとって致命傷にはならずとも隙を作るくらいは出来る筈だ。
セリカの排気音が背後で聞こえる。どうやら車がアトリエから出てきた。
だがショウさんが隙を作るまでもなく、メルポーザはセリカに目を奪われて棒立ちの状態になっていた。
もしかするとショウさんの研究自体は何も知らなくて、発明品を今初めて知ったのかもしれない。馬や牛の牽引もなく自立して動く鉄の塊は相当に奇異に映ったことだろう。
だが俺はそのメルポーザの隙に切り込むことができなかった。
「おお……な、なんと……」
メルポーザの放つ、邪悪な気に圧倒されたからだ。
「なんとエロいボディなんだ……」
再び総排泄口から露出したドラゴンボッキと奴の放つ邪悪な勃気に気圧されてしまったのだ。
「な、なんスかそれ……ワタシの事バカにしてんスか」
エイメが怒るのも無理ない。今ここに、車に欲情する老人と、車に欲情するドラゴンが奇跡の邂逅を果たしたのだ。
っていうかショウさん危ないだろこれ。
「逃がさん!!」
メルポーザは跳躍してセリカに突っ込んだが間一髪、セリカは鮮やかなコーナーリングと加速でそれをぎりぎり躱した。
しかし、整地されてない道でそんなアクションをしたせいかタイヤが破れてしまったようだ。
「ショウさん、早く逃げろ! 脱出だ!!」
俺はドアを開けてセリカの運転に固執しているショウさんを引っ張り出して逃げる。
「ああ! 俺のセリカが!!」
なんという事か。メルポーザは完全に正気を失った状態でセリカに後ろからのしかかった。
こんな悲劇が起こるなんて。
「ああ、セリカが! 俺のセリカ!! やめてくれぇ!!」
「ぐへへへ、セリカっていうのか。エロい体しやがって! 俺様のメルメル棒でひぃひぃ言わせてやるぜ!!」
「ああ~ッ!! セリカが! 次回犯される~ッ!!」
ネトラレドラゴンカーセックス!!




