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もう一つの聖剣

「それは私のエクスカリバーだ!!」


「なん……だと」


 聖剣エクスカリバーが、こんなところに。


 なんという事だ。しかしなんとなくだが、そんな気はしていた。


 魔族側にも、聖剣があるって。


 考えてみれば当然だ。確か国王が言っていた。魔族側の方も、邪神に嘆願して、異世界から地獄の大公爵を召喚していると。


 と、いうことはこちらにも聖剣があるんだから魔族側の方にも聖剣があると考える方が自然だ。いや、魔剣と言ったところか。


 そして、こちらの聖剣がアスタロウのケツの穴に刺さっているんだから、やはり魔族側の聖剣も誰かの股間に刺さっていると考えるのが自然。まさかこんなところで出会う事になるとは思ってもいなかったがな。


「きゃんッ!?」


 俺はスカートの中に手をつっこんで聖剣の柄をがっしりと掴んだ。ん……なんか柔らかいな。なんだろこの感触。まるで生き物みたいな……まさかとは思うけど、この魔剣は“生きている”のか!?


 ……十分にあり得る。さすが魔族が使う剣だけあっておぞましいぜ。


「けっ、ケンジ!? ケンジなにを!?」


「お前のエクスカリバー、この俺が貰う!!」


「ええっ!?」


 ふふふ、焦っているな。それも仕方あるまい。まさかこんなところで魔族側の切り札を奪われることになるとは思ってもいなかっただろう。


「も、貰ってくれるの?」


「え?」


 なんだその反応。


「そ、その……ふつつかな娘ですが」


 何言ってんだこいつ?


「イルウ、いったい壁の向こうで何が起こってるんじゃ」


 アスタロウも異変に気付いたか。とりあえずエクスカリバーの事は黙っておこう。あとでびっくりさせてやる。イルウはどう出るかな?


「な……なんでもない、です」


 ふっふっふ、そうだろう。言えまい。アスタロウもこちら側の人間だからな。聖剣の存在を明かせるはずが……ん?


 なんだ? 気のせいか、剣の柄がさっきよりも大きくなってるような気がするな。硬度も、増しているような……やっぱり生体魔道具とか、そういうタイプなのか。こんなものがケツに刺さってるなんて、魔族とはいえこいつも可哀そうだな。


「安心しろ、イルウ。お前のエクスカリバー、俺が抜いてやる」


「えっ!? ホントに!?」


 なんかちょくちょくリアクションがおかしいんだよなコイツ。もしかしたらアスタロウと違って、こいつは他の奴に無理やりエクスカリバーを埋め込まれたのかもしれないな、可哀そうに。魔族許すまじ。


 俺は大きくなって掴みやすくなったエクスカリバーの柄を両手で握り、思い切り引っ張った。


「ああああ痛い痛い痛いイタタタタ!! もっと優しく!!」


 優しくしたら抜けないだろうが。痛いのは仕方がない我慢してくれ。それにしてもくっそ、中々抜けないな。掴み方が悪いのかな。何度か握り直してみるものの、どの角度もイマイチしっくりこないな。なんだろ、これ。なんか鞘の根元のところに柔らかい袋に入ったボールみたいなのがあるんだよな。


「あっ、ダメ、それは強く握らないで!」


 中にボールが二つ入った袋……なんだろう? 根付けかなんかかな? 大事なものみたいだからこいつはとりあえず無視しよう。それにしても掴みづらい剣だな。なんか芯は硬いのに周りの皮みたいなのがぶにぶにしてて、力が入らない。


「ん? なんだこれ? なんかぬめぬめしてる」


 しばらく夢中で握りやすい角度を探してた俺だったが、手が妙にぬるぬるして滑って上手く掴めない事に気付いた。ぬるぬるしてるし、なんか臭いな。


「そ、それは……潤滑油です」


「潤滑油? なんで潤滑油がこんなとこに?」


 いったいどこから出てきたんだ?


「……あれは、私が魔王様に初めて会った時のことです」


「え? 回想入るカンジ?」



――――――――――――――――



「それでは、イルウ・レッフーサさんでしたね? あなたは弊社でどのような役割を果たせると考えておられますか?」


「ハイ! 私は自分の持つコミュニケーションスキルを活かして、各部署間での調整、仲立ちを買って出て、潤滑油のように人間関係を円滑に進めることができます!」



――――――――――――――――



「…………」


「…………」


「……え? 終わり?」


「うん!」


 なんだろうな。何なんだコイツ。魔王軍って面接やって入るもんなのか。っていうか今の話がどうかしたのか? 何の話してたんだっけ。えらい短かったけどわざわざ回想でやる必要あったか?


「……つまり、その時の私の意気込みが、ここにきてようやく現実のものとなったんだろうと思う。それがどこからともなく潤滑油となってエクスカリバーを包み込んでいるの」


 そう繋がるのか。


 いろいろとツッコミたいところはあるんだけど、どうしたもんか。ツッコミどころが多すぎていまいちつっこむ気になれないや。もういい。潤滑油は無視してとにかくエクスカリバーを抜こう。しっかりつかめば滑らないだろう。


 気を取り直してエクスカリバーの柄を掴むと、俺は勢いをつけて引っ張る。しかしやはり抜けない。


 どうしたもんかな? 小刻みに何度も小さく引っ張るのを繰り返したら勢いと振動で抜けないかな。早速試してみよう。


「あっ♡ ちょっ♡ ケンジ♡ ちょっと、ケンジ♡♡♡」


 うるさいなあ静かにしててくれよ。それにしても潤滑油の量が増えてきた気がするな。この油でぬるっと抜けないかな。


「い、イキそう♡」


 いく? 抜けそうってこと?


「イクッ♡♡♡」


「うわあっ!?」


 ぶびゅるっ、と勢いよくどこからともなく粥の如きものが爆ぜ、その勢いと粘性で俺は後ろに吹っ飛んで反対側のダンジョンの壁に頭を激しく打ち付けてしまった。


「はにゃぁ……♡♡♡」


 意識を失う直前、脱力してするっと壁穴から抜け落ちるイルウの姿が見えた。

あくまで救助活動の一環です。他意はありません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 追いついた!今作も面白い〜(*^ω^*) ヒロインはイルウちゃんを推します。 月江堂さんの性癖が溢れんばかりの作品でニコニコしちゃいます。
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