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アナル相撲

「てかさ、前は三人いたよな? トライアヌスとか言って。あいつらはどうしたんだよ」


「そのことでもちょっと文句が言いたいんだが」


 は? なんか文句言われるようなことしたっけ? 俺の前に現れた虎面にマント、そしてブリーフ一枚の獣人は悪のアナリスト養成組織『ケツの穴』。悪の、とか言われても正直俺から見たらアナリストの時点で悪なんだが、それは置いておいて。


 そのケツの穴の三人の精鋭がこいつら『トライアヌス』だったはず。抹消したい記憶なんであんまり詳しく覚えてないけど。それはそれとして他の二人はどうしたんだ。


「お前に恩があるから、刃を向けることはできないと、来てくれなかった」


 知らんがな。


 でも思い出したわ。


 そうだ。ケツの穴に剣が突き刺さって抜けなくなったから俺が抜いてやったんだった。俺は肛門科医じゃないんだけど。肛門科医でも剣を抜いたりはしないと思うけど。


「恩を売って懐柔するとは卑怯者め。おかげでただでさえ少数精鋭なのに余計苦しくなったわ」


 知らんがな。そう思うんならお前が何とかしてやればよかっただろうが。まあそれは置いておいて、もう一人いたと思うけどそいつはどうしたんだ、と思ったら通路の曲がり角の先からほんの少しグレーターデーモンみたいなやつの顔が見えた。あいつはあいつで何してんだ。名前は……なんだっけ? デオクレタアヌスだっけ?


(出遅れた……)


「フッ、しかし、貴様らを亡き者にするのには俺一人で十分。魔王様に仇なすものをここで打ち取って、魔王軍復帰への手土産としよう」


 ほう、豪気じゃねえか。この聖剣の勇者様とサシで戦おうってか。少しでもお前に勝ち目があると思ってるのか。すでにアヌスカリバーは抜身の状態。一瞬で真っ二つにしてやる。


 と、思ったら俺を遮ってアスタロウが前に出た。


「ここは……儂に任せろ」


「は? お前戦うことなんかできるのかよ?」


 ここまで聖剣の鞘として、そして異世界のコーディネーターとして頑張ってもらってはいるものの、こいつが戦えるなんて話は聞いたことはないし、もちろん見たこともない。何がこいつを駆り立てるのか。


「アナルを悪用するこいつらを、これ以上看過することはできん」


 結局それか。なんの対抗心なんだそれ。アナリストとしての、こう……なんか、矜持的なものがあるんか。ていうか俺から見たらお前もアナルを悪用してるようにしか見えんのだが。


「じゃあ、行こっか、アンスス」


「ちょ、ちょっと待て、勇者! どこへいく!!」


「え? いや、だってアナリスト同士の対決でしょ? 俺ら関係ないじゃん」


 俺の見えないところで勝手にやってくれよ。俺を巻き込むなよ。


「ま、待て。これはお前にも、ひいてはこの世界に生きる全ての者に関係あることなのだ」


 ええ……? イヤだ。こんな奴らと関係あると思われたくないんだけど。


「ふん、どうやらカルナ=カルアに聞いた通り、貴様は自分の周りのことにまるで気づいていないようだな」


 なに? どういうこと? なんかそんな伏線あった。


「とにかくだ。俺と、アスタロウとの戦いはこの世界の命運を決定づけるものとなるだろう」


 「どういうことだ? お前ら、なんか……知り……尻合いなのか? お前らが戦ったって俺たちにゃ何の関係もないだろう。勝手に端っこでやってくれよ。後で結果だけ教えて。すぐ忘れるけど」


「ふふふ。案ずるな。すべての人類にとって忘れられぬ戦いとなるだろう」


 そう言ってフクタビアヌスはどこかからずるりと棒状の、柔らかそうなものを取り出した。


「この双頭ディルドを用いて、アスタロウ! お主と尻相撲の戦いを申し込む!」


 確かに忘れられない戦いになりそうだわ。


「ルールは簡単! このディルドの両側を互いのアヌスに差し込み、引っ張り合う! 抜けてしまうか、敗北を宣言した方が敗者となる!」


 ホントまとめて死んでくんねーかなこいつら。


「安心しろ、勇者。儂がこんなアナルを悪用する奴らに負けはせん」


 いや負けるかどうかとかじゃねーんだよ。まずお前らの戦いそのものを見たくねーんだよ。


「フン、『アナルを悪用』か。貴様の方こそアナルの使い方を間違っているぞ」


「なんだと。貴様のような悪人に言われたく……」


「そもそも、アナルは名詞ではなく、形容詞だ!!」


「な……ッ!!」


 なんなの? もう戦いは始まってるの? そしてアスタロウはなんでダメージ受けてんの?


「すまない、勇者よ。儂は……アナルの使い方を、間違っていたのかもしれん」


 一話目の時点で気づいてたよ。


「フフフ、ようやく理解したか。どちらが正しいのか。アナルジャスティスがどちらか決める時が来たようだな。さあ、ズボンを脱いでこのディルドをケツに入れるのだ」


「行こっか、アンスス」


 とてもじゃないが直視できない光景が展開されそうな予感を察知して、俺は背を向けた。


「え? 二人の戦いを見ていかなくていいの?」


 金積まれても見たくねえよ。おっさん二人がケツの穴で綱引きだぞ?


「世界の命運を決める戦いとか、そういうんじゃないの?」


 だったとしても知ったこっちゃねえよ。あんなもんで決まる命運の世界なんか滅んじまえ。


「ええと、つまり、な? ただ戦いを見てるんじゃなくてな? 俺たちは俺たちにできることをするとか、そういうのが本当の仲間の助け合う姿なんじゃないのかな? って、俺は思うわけね」


「ん~……」


 アンススはいまいち納得してくれない様子。


「おっさん同士のアナル相撲見たいか? 俺は見たくない」


「分かった」


 やっぱり人間本音が一番だな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アナル…相撲……すべての伏線がここで回収…ってなるかァァァッ(´;ω;`)! [気になる点] アスタロウは排泄しないでどうやって毒素を…
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