五
呪われたように
変わり映えのしない日々を過ごしていたが、
確か6月の末頃。いつもより学校の帰りが
遅くなってしまった時のことだった。
外はじとじととし、不快感を覚えながら
家を目指した時のことだった。
電車に乗り少し肌寒く感じながら
いつものように鞄から本を取り出し
読み始めようと本を開いたと同時に、
斜め前に座る一人の女性に目が止まった。
透き通るぐらい肌は白く、胸の下あたりまである
黒髪は艶があり、綺麗に手入れされていた。
真っ直ぐと伸びた姿勢で座っており、
華奢な手で本を支えながら読書していた。
開いた本の事などすっかり忘れてしまい
彼女に目を向けていた。
電車が動き出し、暫くしてから
自分も本に目を向けてはみるが、集中など出来ず
ページを捲る事なく降りる駅の一つ前まで
着いてしまった。着いたと同時に彼女は立ち上がり
一度制服のスカートを手で撫で、一つ前の駅で
降りていってしまった。
名も知らぬ彼女が歩いて行く後ろ姿を
目で追っかけていると、暫くして扉が閉まり
電車はまた動き出した。
駅に着き降りてから家に着くまで
景色も音も何も、私の記憶には残っていなかった。
彼女を思い出し頭の中はいっぱいで
他のことを取り入れる容量を
持ち合わせていなかった。
一瞬のように思えたが、猛烈に惹かれ
また、この感情とはなんなのかと
風呂に入っても、食事をとっている時も
考え続けたが一向に分からずにいた。
ただ、明日を待ちどうしく思う自分がいる。
次の日の朝、一晩経ったが
昨日の帰りの事を鮮明に覚えたままだった。
散々考え続けたが未だに昨日の心持ちの
答えはでないまま、いつも通り
母に見送られながら学校へ向かった。
電車に乗って一駅過ぎた頃、殆ど無意識に
辺りを見渡した。が、見つからなかった。
降りる駅まで来てしまい、いよいよ今朝は
会えないまま学校へと着いてしまった。
教室へと向かう途中後ろから肩を叩かれ
振り返り確認すると藤野だ。
「ずっと呼んでんのに無視して先に
行きやがって」
全くもって気がつかなかった。
「あー、ごめんごめんおはよう」
なんて言いながら2人で教室へと向かった。




