四
母と対面になるように席につき、手を合わす。
「いただきます」それほど空腹だった訳ではないが
食卓に並べられた品々をみた途端、一気に
腹が鳴るほど食欲が湧いてきた。
お椀を持ち上げ箸の先で二、三度軽く混ぜ
そっとお椀に口をつける。一度口からお椀を離し
また、口元へ持ってきた時ちらりと前を見ると
母が食事をする私を見守っている。
その視線を無視しながら食事を進めていると
「学校はどうだった?」だの
「友達とどんな話するの?」「勉強の具合は?」
答える間も与えないかのよう次から次へと。
何が気に入らなかったのか、「別に」など
はっきりしない返事をし会話を強制的に
いつも終わらせてしまっていた。
そんな態度をとられても、母は全く気を落とさず
寧ろにこにこしているぐらいだった。
食事を終え、宿題を終わらせ少し休憩した後
風呂へ入る。髪を洗い始めてから今日一日を
振り返り始めた。が、あまりにも変化のない
日々なので風呂から上がる頃には無心の状態だった。
風呂から自分の部屋へ行くと、ほって置いた
制服は綺麗にハンガーにかけられ、
布団が用意されていた。毎日この光景を見ては
申し訳ないような、何とも言えない心持ちになった。
部屋の入り口で突っ立っていると後ろから母が
「どうかしたの?」と少し心配した顔を向ける。
「なんにも、おやすみ」とだけ言って
部屋へ逃げ込み扉を閉めた。扉の向こうで
「おやすみなさい」と声をかけられ足音は
台所の方へと進んで行った。
電気を消し、外の月明かりだけで部屋を照らす。
布団に潜り込んですぐに眠りに落ちていった。




