十七
藤野に恵子の話を打ち明けてから
久々に会った友との会話はそればかりになった。
だが、出会ってからあまりにも日が浅い為
満足のいく話など出来やしなかった。
「なんだよ、お前から話を聞いていても
ちっともその女を想像できないや」
「仕方ないさ。この間初めて会ったんだから」
「お前は少し臆病過ぎるんだよ」
「慎重なだけさ」
「好きなら好きって言ってしまえばいいものを」
藤野は笑いながらそれを言ったが
私は半ば本気で言ってきたように思えた。
「さっきも言ったけど、
会ってまだ二回目なんだ。言えやしないさ」
そう言いきって藤野の顔を見ると
藤野は何か言いたそうな顔付きで
ちらりと私の顔を確認し黙ったまま
コップに手をかけた。
私は藤野の手元を一点見つめながら
次は何を言ってくるだろうかと少し身構えた。
「幸せになってほしい」
ぽつりと独り言の様に藤野は言った。
私は驚き、顔を上げ藤野を見たが
彼はこっちに目線を送る訳でもなく
ただ、コップの中でお茶が揺れる様を見ていた。
そういえば、藤野には中学から高校に入るまで
付き合っていた子が居たらしい。
仲が良かった訳ではないが同じ中学だったので
名前を聞いてすぐに誰だか分かった。
背が低く、目が大きい色白の子であった。
周りからもお似合いだと祝福されていたらしく
二人の仲も順調だったみたいだが、
高校生になった時に別々の学校に通い
藤野が部活をしている為、段々と疎遠になり
振られてしまったと言う。
吹っ切れたと口では言ってみても
今でも想い続けているんだろうと思う。
「すっかり忘れてた、来月試合があるから
観に来いよ。それを今日言いに来たんだよ」
「試合?サッカーか」
「そうだよ、その女も連れて二人で
観に来いよ。」
「なぜ?」
「いいから、いいから」
その後、何度も断ったがいいから来いと
執拗に言われ分かったと言ってしまった。
あまり気が乗らないがまだ私自身も
試合を見に行った事も無かったので
言うだけ言ってみるかと思うようにした。
話終えお茶を飲み干して藤野が立ち上がったので
「帰るのか」
「あぁ、お邪魔しました。」
藤野を玄関まで見送りに出たら
次は学校で、あと絶対に誘っておけと
念を押して帰って行った。




