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ふと、思い出して  作者: 櫻美
14/24

十四

八月十九日ー。

朝早くに起床した私は何度も何度も

時計を見て落ち着かない様子であった。

午後一時に図書館前。

三日前のあの日から私の人生は

大きく変わったように思った。

午前十一時。約束の時間まで二時間もあるが

服を着替え、髪の毛も整え身支度を早めに済ました。

家を出るまで少しばかり宿題でもと思ったが

中々進まないので図書館へと向かう事にした。

十二時二十分。約束の時間よりだいぶ前に着いた私は

ベンチに腰掛けとりあえず恵子に貸す事になっている

本を取り出して暇つぶしに適当なページを開き

本を読む事にした。

暫く読み進めふと時計を見ると

針が十二時四十五分を指していた。

あと少しでと思っていると急に風が吹き

図書館を囲うように生えた木が大きく揺れた。

風に吹かれた葉っぱたちが優しくさざめき

心地よい音色を聴かしてくれた。

耳を澄まし空を見上げると太陽の光が

葉っぱの間から漏れ、風が吹くたびに

キラキラと輝いていた。

時計を見ると午後一時を指しており

思い出したかのように辺りを見たが

恵子の姿はなかった。

まぁ、時期に来るだろうと思う気持ちと

本当に来るのだろうかと思う不安の中

空を見上げたり、木を眺めたりして暫く待つ事にした。

けれども一向に恵子は現れず図書館の利用客が

私の前を通り過ぎるばかりであった。

時計を見ると午後一時を二十分程過ぎており

やはり来ないのであろうかと思い始めた頃

少し先からこちらに小走りで

向かってくる女がいた。その女は私の前まで来ると

両膝に手を当て息を荒くしていた。


「本当にごめんなさい。随分と待たしたでしょ」


「かまわないよ。それより座りなよ」


彼女は促され、まだ少し荒い息を整えながら

私の横に腰掛けた。ある程度息を整え終えると


「聞いてよ。お母さんったら約束があるって

ちゃんと言ってあったのに用事を押し付けて」


「それは災難だったね。」


私が笑いながらそう言うと恵子は

申し訳なさそうにこちらを見た。


「本当に何とも思ってないから。

気にしなくていいよ。」


「本当に?

すごく失礼じゃないかしら?私。」


「全然。気にしなくていいからさ」


恵子は乱れた髪の毛を治しながら


「そう。直樹君だったわよね。

私の名前覚えてる?」


「恵子さん。ちゃんと覚えてるよ」


「さん付けは嫌なの、」


そう言うと彼女はほっぺを膨れさせながら

こちらを見た。その様子があまりにも愛らしく

また、自分が想像していた彼女と違いすぎて

思わず笑ってしまった。


「そうだったね。あとこれ」


「ありがとう。私もちゃんと

持って来たんだから。」


そう言うと恵子は鞄を探り

一冊の本を手に取り私に渡した。

あらすじを少し読んでみると

恋愛ものだと言う事がわかり、

普段はあまり読まない類であり

興味もそれほどないが恵子から受け取った

この本に価値を感じ、読んでみたいと思ったのと同時に

初めて出来た繋がりのように感じた。



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