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50 二番目のヴァルキュリャ

「ヨルダール家のヴァルキュリャは、初代の次にヴァルキュリャに選ばれた方です」

 

「うん」

 

「シグルお姉様と同じくらい……いえ、それ以上に別格の方なのです。それは分かりますか?」

 

「うん、たぶん、なんとなくは」

 

 

 ベンチャー企業で例えたら、創立メンバー役員と他社員みたいな違いだろ。

 ヨルダール家の彼女は創立メンバー役員の中でも代表取締役副社長。

 そんなところじゃね? と解釈していた。



「正直に言います。ゲイロルルお姉様への仲介は出来ません。私が一人の人間に協力して槍をもつもの(スヴィズニル)の力を使わせていると知られたら、ゲイロルルお姉様は放ってはおかないでしょう。私はヴァルキュリャではいられなくなる気がします。だから、出来ません」


「そっか。ソグンが消えちゃったら俺も困る。分かった」



 詩人(スカルド)吟遊詩人(バード)の話だと、ヨルダール家のヴァルキュリャは冷徹な印象だった。

 現在のソルベルグ家とヨルダール家を比べても想像は出来る。

 シグル以上に怖ぇ相手っぽい。

 

 

「私は協力は出来ませんが、ゲイロルルお姉様と会う方法になら考えがあります」


「どんな?」


「この地に来てから、ゲイロルルお姉様の気配はまるで感じられません。お姉様はヨルダール家の様子を見に訪れてはいないようです。もしかすると……ヴァルホルからずっと出ていないのかもしれません」


「ヴァルホルからも?」



 まぢか。

 だから、ソグンが俺の近くをうろうろしてたのか。

 ヴァルホルにこもっているなら、ソグンを呼ぶのにビクビクする必要ねぇんじゃん!

 けど、待てよ。

 人間(こっち)に興味がないってことじゃ……

 だとしたら、どうやって会って、力を貸して貰えるように説き伏せたらいいんだ?



「ここコングスベルは、お姉様と(ゆかり)深い地です。この地で、ただならぬ(・・・・・)()が起これば、きっとお姉様は気づかれるはず。ヴァルホルからとはいえ確認しに来るのではないかと」

 

ただならぬ力(・・・・・・)っていうと……」


「あの青い塊の力、あるいはシグルお姉様の盾の力」


「……なるほど」



 そういえば、ベルゲンでもシグルが乱入してきたのは盾を使った後だったっけ。

 着いたその日にもソグンとさんざん喋ったのに、現れなかった。

 盾の力に呼ばれて来たっつー可能性は高いな。  


「青い塊が力を発現する仕組みはわかりません。私があの時と同じ状況を再現する訳にはいきませんから、盾の力を使うのが良いのではと思います。それが難しければ、罪の子の魔剣の力でも、もしかしたら……」


「ソグンっ」


「え?」


「その言い方は止めてくれ。……意味は同じかもしれないけど。あいつのことはアセウスって名前で呼んでやって欲しい。あいつが居ないところでも」



 ばかげたこだわりだよな、とは思った。

 でも、ソグンなら分かってくれるとも思ったんだ。



「わかりました。すみません」


「いや。こっちこそ、ごめん。盾のセンでやってみる。ソグンは疑われないように離れていてくれていいからな。コンクスベルに居るのは、多分あと数日ってとこだと思うんだ。そのくらいの間は一人でなんとかやれるだろ」



 あぁーあ、ミス確定だ。

 虚勢の仮面の下で自嘲していた。

 考えが甘かった。

 ゲイロルルに接触するには、ソグンを遠避けなければならない。

 けど、遺物の力を確かめ手に入れるためには、ソグンの力が不可欠だった。

 俺がすべき順番としては、遺物をすり替えてから、ゲイロルルと接触し説得だったんだ。

 オージンの槍らしき遺物の情報を手にしながら、みすみす指を加えてこの地(コングスベル)を離れる。

 俺の短気が招いた結果じゃねぇか。



コングスベル(ここ)から離れたら、また呼ばせて貰うな。あ! もち、近くにゲイロルルの気配を感じる時は来なくていいけど。ゲイロルル以外でも、ソグンにマズい状況だったら隠れてていーよ。来れない事情があるんだろうって、こっちはこっちでなんとかする」



 ソグンは返事の変わりなのか、軽く微笑んだ。

 言葉にしたら自分でも気づくことになって、理解した。

 これが、現実か。

 事態が進んでいけば進んでいくほど、バレたら困る相手が増えるんだろう。

 今までみたいにソグンを頼れなくなる。

 簡単にチートは失くなるんだ。

 自分だけで考えなきゃいけない。

 何が出来るか、何をすべきか。

 

 

「では、私はこれで、もうよろしいですか? よろしければエルドフィンのお気遣いに従い、オッダへでもとどまろうと思います」


「あ、一つだけ、あの槍みたいな遺物のこと、っって、見てた?」


「はい」

 

「あれって、何か知ってる? オージンがヴァルキュリャにくれた槍かな? 勝利の槍って奴」


「……答えられません」



 ソグンは申し訳なさそうな顔で俯いた。

 別にいいのに。答えられないっていう答えから分かることもある。



「そか、おけ。じゃあ、これも答えられないかもしれないけど、《あんさず らぐず うるず》って分かる?」


「アンサズ ラグズ ウルズ……、ですか?」


 

 

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