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44 愚か者

 「オージン神ってどんな性格の神様なんですか? そういや、俺、容姿とか見た目も知らないかも。知ってますか?」 

  

「エルドフィンっっ?!」

 

 

 う゛ぇえっっ?! なになにっ?

 突然大きな声で名前を呼ばれて身体がビクついた。

 見るとアセウスが慌てた様子で俺とガンバトルを見ている。

 

 

「え、なに……?」

 

 

 俺、またなんかヤバいことした?

 

 

「尊き神をもって何者かを問うのか……。まるで人間の知り合いのように語るのだな」

 

 

 ガンバトルが腕組みをときながら頬を緩めた。

 え?! 笑った? 気のせい?!

 こいつ、笑うの?!

 

 

「あのっ、こいつっ、エルドフィンはちょっと変わってて、あの、本当に、えっと、言い方がちょっとあれなだけで、決して神々を軽んじてる訳じゃなくて」

 

 

 え?! そこ? ダメなの?

 別に良くね? むしろお前のそのフォローの必死さが自爆ってる気がするが。

 実際、言い方だけじゃなく、軽んじてるけど、なにかダメなのか?

 神なんて、ファンタジー世界じゃ俺達と同じ、ただの登場人物(キャラクター)の一人だろ。

 

 

「不遜な姿勢は嫌いじゃない。実力と意志が伴わなければただの愚か者だが」

 

 

 ガンバトルが何か意味の分からないことを言っている。

 不遜なのはお前だろ。これで嫌いだとか言い出したら爆笑もんだわ。

 容姿が似てるのなら、オージンは灰褐色の髪色ってことだ。

 瞳の色は……織物(タペストリー)からはわかんねぇな。

 ガンバトルは黒色だが、髪も黒いし参考にもならないだろう。

 ヨルダール家はヴァルキュリャ時代そのままって訳じゃないようだ。

 思考が似ているとしたら、オージンの性格を知らなきゃ話にならんだろ?

 だから聞いたんだ。

 誰が愚か者だ。お前か。マッチ以外で口にする奴初めて見たわ。

 

  

「オージンは偉大で崇高な神(フィムブルチュール)だよ、エルドフィン。ボケたつもりなんだろうけどタチ悪くスベってるよ。人間(おれら)は到底知ろうとしなくていいことだろ。って、真面目なツッコミしか入れられない」

 

 

 ガンバトルを気にしつつアセウスが言う。

 どうやら俺はボケてスベった。

 そういうことが良いらしい。

 

 

「激怒した狂気の主という話もある、だとしたらどうだ? ヨルダールは狂戦士たる一族ということになる」

 

 

 えっ!? それめっちゃやベーじゃん。

 まともに話が出来る気がしない。

 ヒステリー女とかぜってぇ無理だしっ!

 ヴァルキュリャはもちろん、こいつ(・・・)だって。

 なに? 突然スイッチ入ったりする訳?! 

 監獄部屋から解放どころか、出る時は死体とか……。

 

 嫌ぁな汗が額に滲み出るように感じた。

 手の甲で拭いながらガンバトルを目で盗み見る。

 心なしか口の端が笑っているような、いないような。

 どんだけアルカイック・スマイルよ。

 手の甲は何も拭うことなく乾いていて、そのことが余計額に見えない汗を滲ませる。

 

 ガンバトルは織物(タペストリー)の横の箪笥を開け、黒い布に包まれた何かを取り出した。

 俺達の前のサイドボードに乗せ、くるんでいる布を広げる。

  

  

「これはオージンから預かり受けた神の槍という話だ」

 

 

 古びた金属部品のようなものが姿を表した。

 いや、石塊(いしくれ)といった方が適切か。 

 形状から槍の穂の部分かな、とは思う。

 腐食しているのか、形は(いびつ)だ。

 歴史の資料集で見た旧石器時代の打製石器を思い出す。

 

 

「何か刻まれていますか?」

 

 

 まじまじと観察しながらアセウスが質問している。

 誰にかなんて名前を呼ばなくても分かる。ガンバトルにだ。

 だが、遠慮がちに発せられた問いは、よすがない呟きのように虚しく消えていった。

 ちっっ、無視しやがったっっ、この野郎っ。

 ずいっ、とサイドボードの前に割って入り、俺も間近で見てみる。

 

 

「確かに……何か刻まれているような、埋め潰されてもいるような。文字、かな?」

 

 

 アセウスは神妙な顔で頷く。

 槍の先に文字を彫る?

 そんなこと聞いたことないな。

 素人考えでも武器の強度を落としそうだ。

 何のために? 実戦用ではないのか? でも、それにしては……

 

 

「飾り……じゃないよな?」

 

  

 自分の考えをアセウスに確認してみる。

 アセウスは俺の目を見たまま、ha han

 

 ……違う。

 

 違うと言ってるじゃないの、ho ho

 

 ()めろぉぉっっ

 今の流れでメロディつけられた奴いるか?! いたらすげぇわっ!

 謎の遺物を目の前に、緊張感ある真剣(マジ)場面(シーン)なんだよっ。

 80年代昭和歌謡曲はブッコみ過ぎだろっ。

 俺の親父は、あ、前世の方な、酔うと懐メロ・ジュークボックスになる男だった。

 その親父のせいで、俺の大脳には昭和歌謡が染み付いていた。

 前世では日常的なことだったが、謎なきっかけで回路がつながると脳内BGMや鼻唄で出てきてしまうのだ。

 だが、断れ! ここは出てこなくていいだろっ。

 マッチくんのせいだっ! 愚か者のせいだっ!

 いいよなイケメンはよっ、音痴でもモテモテアイドルなんてよっ。

 振った女なんて呼んでくるなよ!

 そっちは「歌上手いけど不幸」みたいに言われてるよ。

 井上陽水をあんな情感的に歌いこなす歌唱力だぞ、UR(アルティメットレア)才能持ちだぞ!

 

 クラスメイトと行った初めてのカラオケで俺は泣いたよ。

 昭和マンとか80年代(エイティ)とか(はや)し立てられて、二度と行くことはなかったよ。

 俺ぼっち化の一つの要因のはずだ。

 しょうがねぇじゃん、スマホ持ってなかったんだもん。

 音楽と言えば、親父の鼻唄とおかんのスマホ(あと学校の授業)くらいからしか入手できなかったんだもん。

 シーズン・イン・ザ・サン熱唱出来る小学生がいたら悪ぃのかよ。

 う゛ぁあーっっ

 なに黒歴史語ってるんだ、俺はっ!!

 文字数無駄にとってしまったじゃねぇか!

 話が大して進んでねぇぞっ!

  

 

  

 

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