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37 暴君

 来るなり座ってしまったから分かんねぇけど、多分背丈はアセウスと同じくらい。

 身体は引き締まって見えるけど、筋肉はそれほどついていなさそうな感じ。

 スラリとした身体に、シュッとした顔がまぁお似合いだ。

 全部が美しく整っていて、もとは美術館に佇む彫像だったと言われても信じられる。

 緑がかってさえ見える黒髪は顎辺りまでのワンレングス。 

 ふんわりふわ類、座する!

 これイケメンしか許されない髪型やっ。

 度々見せる、髪を耳にかける仕草が、思わず見惚れるほど優雅で美しい……なんて思うなよ、俺っっ。

 ここんとこイケメンばかり見てきたけど、こんなにキラキラした……もとい!

 うっとぉしーぃイケメンは初だわ。

 コングスベルの「王様」、ガンバトル・ヨルダールの第一印象は、『クソでけぇ態度とまるで噛み合ってない美』だった。

 

 

「……初めまして。アセウス・エイケンです。それと、エルドフィン・ヤール。本日は突然の訪問にも関わらず……」

 

「勝手に話すな、必要なことは私が聞く。当家の者が、貴様の親族の世話をしたという話だが、誰だ?」

 

 

 ちーんっ! ねぇ、こいつ、誰か殴れぇーっっ。

  

 

「あの、それは」

 

「嘘か。私に会うための」

 

 

 物凄くダルそうにため息をつかれた! 

 ファンに塩対応な勘違いアイドルみたいな目で勝手に人のこと見下さないでくれますっ?

 俺ら、あんたのファンでもなんでもないんだけどっ!

 俺もダルそうにぶん殴りたいっ! ハリセンなら戦争にはならないよねっ。いいっ?

 

 

「ヨルダール家の者で西方へ行った者はいない。この茶番の目的を言え」

 

「嘘っでは、ありません! 何百年も前の祖先の話だから名前は知りませんが……。ヨルダール家からもヴァルキュリャになった女性(かた)がいますよね。私の祖先がヴァルキュリャ姉妹として親しく、御世話になり、御迷惑をおかけしました……。嘘ではありません」

 

 

 言ったぁ!

 アセウス、グッジョブ!

 これで俺様王様との茶番劇も終わ……

 

 そう思った俺の、はるか上をこの「王様」は超えてきた。

 

 

「オージン神から選ばれたとか言ったそうだな。自分が特別な存在とでも言いたいのか」

 

 

 は? そこ?

 論点そこか?

 

 

「そういうつもりではありませんっ。ガンバトルさんが、ヨルダール家の方々がどこまで知っているのか分からないからっ。ヴァルキュリャの縁でお話をしに来たと伝えたかっただけですっ。それを言わなければ私のような一戦士に会っては貰えないですよね?」

 

「セウダの町の……エイケン……と言ったか。ベルゲンから来たと」

 

「ベルゲンでも、ヴァルキュリャ一族に会ってきました。ヨルダール家では、どこまで、伝わっているのですか」

 

 

 おぉ! 流石だぞアセウスっ!

 上手いこと本題に切り込んだ幼馴染みを俺は頼もしく感じた。

 ガンバトルは、何も映さない、闇の底のような瞳でアセウスを見下げている。

 

 

「私は、私達は知識を求めて来ました。他には何も求めていません。お願いします、この地に滞在することと、伝承を……お話を伺うことを許して貰えませんか?」

 

 

 ゴクリと唾を飲み込む音が頭に響く。

 俺、めっちゃ緊張してるじゃん。

 一筋縄ではいかないこの「王様」は、どうでる?

 

 

「いいだろう。この屋敷に逗留(とうりゅう)を許す。私は忙しいが、まとまった時間が出来たら話くらい付き合ってやってもいい。ミゲル!」

 

 

 扉を開けていた一人が部屋の中に残っていたらしい。

 ミゲルと呼ばれた兵士は機敏な動きで俺達のそばまでやってきた。

 こっちも結構な濃い顔の兄ちゃんだ。

 って、思いの外あっさりオッケー出たのか?

 

 

「二人にそれぞれ(・・・・)部屋を。私が行くまでは部屋で休んでいただく。おもてなし(・・・・・)は継続する、間違いのないようにな」

 

 

 偉っそうにミゲルとやらに命令すると、用は済んだとばかりにガンバトルは椅子から立ち上がった。

 え? 何? 自分は自己紹介も挨拶もなし?

 つーか、今の、会話になってるのか?

 なってねぇーよな? 

 こっちの狙いは一応オッケーっぽいけど、まさかこのまま居なくならねぇよな??

 

 俺が混乱して眺めていると、ガンバトルはチラとアセウスに目を留める。

 うんっ! そうだよなっ。

 第一回会談はこれで終わりだとしても、ちゃんと顔を合わせて挨拶くらいはするだろっ。

 安堵する俺の前を横切りアセウスに歩み寄ると、ガンバトルの長い指がアセウスの顎を持ち上げた。

 でえ゛ぇえぇっっ?!?!

 

 

「女だったら楽しめたものを」

 

 

 あ、あ゛っっ。

 顎クイぃぃ~~~~っっ?! 

 アセウスより若干高い位置にある顔が、至近距離で自分に向かせたアセウスの顔を冷ややかに見下ろしていた。

 え? 今なんつった? 

 女ならなんだっつった?

 

 俺が更に混乱を深めていると、ガンバトルはアセウスから手を離し、さっさと部屋を出ていってしまった。

 ミゲルが、御案内します、と言って俺達を応接間から出るように促す。

 なんだか良く分からないながらも、促されるまま従いつつある俺達。

 ちょっと待て、ちょっと待て待て。

 あの野郎。

 めっちゃ失礼じゃねぇかぁァっっ?!?!

 

 俺は確かに雑魚だからしゃーねぇけど、アセウスは神の子だぞっ!

 ガンバトルより格上だろぉーがっ!

 ただの蹂躙対象みたいに見やがって。

 舐めた真似しやがって。

 アセウスが許しても俺は許さねぇぞ!

 ガツンと言ってやんぞっっ!

 

 

「ヤール殿、|領主様《Mi Gran Señor》に何かお伝えしたいことでも?」

 

「えっっ? ないデスーぅ」

 

 

 応接間のあった場所からどんどんどんどん奥に進んだ突き当たりの部屋。

 町の部隊の兵舎を思い起こさせる質素な造りの部屋にミゲルは俺らを案内した。

 

 

「こちらで過ごして頂きます。御用の際は扉を叩いてお知らせください」

 

「まぁ、贅沢は言えねえよなぁ。十分と感謝するべき……」

 

 

 部屋に入ってから振り向いた俺の目の前で、木の扉が閉まった。

 え?

 ガチャッと重い音がして、その後俺が押しても引いても扉はびくともしない。

 

 

「おいっっ! なんの冗談だよコレっっ! は? なにっ? アセウスっ?!」

 

 

 俺は扉を闇雲に叩く。

 扉の向こうからアセウスの慌てた声が聞こえた。

 

 

「ミゲルさんっっ? いったい何をっっ」

 

「お二人には別々に部屋を用意しています。|領主様《Mi Gran Señor》の許可なく屋敷内を出歩かれては困りますので扉は閉めさせて頂きますが、どうぞごゆるりとお過ごしください」

 

 

 ミゲルの声には有無を言わさぬ響きがあった。

 てゆーか、俺は、抗いよーがねぇしっ。

 

 

「エルドフィンっ! 大丈夫だ! たぶん、問題ないっ。すぐまた会えるだろーから、無茶するなよっ」

 

 

 俺がバカなことをしねぇよーに、アセウスの必死に(なだ)めようとする声が聞こえる。

 俺もそこまでバカぢゃねーよ。

 状況は受け入れてる。

 

 

「アセウス、分かったけど、……気をつけろよ」

 

「では、エイケン殿はこちらへ」

 

 

 扉に耳を当てて音を拾う。

 二人の足音がどんどん遠ざかっていく。

 

 

「エルドフィンっ! 俺に会えなくなったら黄色い家に帰ってくれっ」

 

 

 ふいに、大分小さくなった、アセウスの叫ぶ声が聞こえた。

 それを最後に何も聞こえなくなった。 

 

 そう、俺は軟禁されたのだ。

 

 

 

 

  

 ―――――――――――――――――――

 【冒険を共にするイケメン】

 戦乙女ゴンドゥルの形代でエイケン家の神の血継承者 アセウス

 【冒険の協力者イケメン】

 ? ヨルダール家当主 ガンバトル

 ローセンダールの魔術師 タクミ

 ソルベルグ家当主 カルホフディ

 【冒険のアイテム】

 アセウスの魔剣

 青い塊

 黒い石の腕鎖(ブレスレット)(シグルの監視石付き)

 イーヴル・コア(右手首に内蔵)

 【冒険の目的地】

 コングスベル

 【冒険の協力者ヴァルキュリャ】

 エイケン家 ゴンドゥル

 ランドヴィーク家 通称ソグン

 ソルベルグ家 通称シグル(ドリーヴァ) 

 

 

  

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