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11 シグルドリーヴァ~勝利をもたらすもの

()の人はソルベルグ家当主の直系の娘だったと言われています。血の濃さを表す、激しく強い巻き毛、大きく鋭い目、その姿は燃え盛る炎のような輝きを放っていたと」

 

 

 魔山から魔物が襲ってくるようになってから、人々の多くは北と南に逃れたという。

 それに対し、この辺でいいんじゃねぇかと戦争中でも最前線に留まった奴らがいた。

 仮に魔物が攻めて来たとしても、ここ(・・)で砦となって以南の人々を守ってやる、という剛勇な輩だ。

 戦争が立ち消えになってから、彼らは元々生活していた海沿い、ベルゲン一帯に戻り定住した。

 この辺りの住民に屈強な者が多いのはそのせいなんだと。

 確かに、スニィオ以外は皆さんご立派な体つきの方ばかりだし、隙間時間にうろうろして目にした町の人々は溌剌(はつらつ)豪快。まさしく、荒く冷たい海と生きる民、ヴァイキングって感じだった。

 

 ここ(・・)は北欧なんだろうか。

 って、ちょっとだけ思った。

 もしかして、異世界転生じゃなくて、タイムスリップ転生って可能性(こと)もあるのか? て。

 世界史にもなってないような、古代の北欧。

 前世には、ぶっ飛んだ遺跡や、オーパーツ、神話が世界中にたくさん残っていた。

 神や魔物が(・・・・・)実在する(・・・・)ような古代(・・・・・)があり得ないとは、誰にも言えないんじゃないか。

 なぁんて。秒で、否定したけど。

 転生先ってことは、この世界はファンタジーだろ。

 揺れるな、だよな。

 

 ベルゲン一帯を統率したのは、魔物が現れる前から、ソルベルグ家一族だった。

 とはいえ、よりすぐりの荒れくれ者を治めるには、それまで以上の強さが必要になっただろう。

 ソルベルグ家当主直系という肩書きは、そういう格別な意味を持つのだ。

 

 

「美しい見た目とは反対に、戦闘でも他を圧倒する程の力を持っていたと、多くの逸話が残っています。女と侮った者は、皆立ち上がれぬほど叩きのめされたといいます」

 

「ひぇ~っ、ワルキューレになる前から無敵かぁ! そりゃ半神になってからはもう鬼神じゃね? ホフディのお姉さんみたいなのを想像してたけど、もっとあれ(・・)かぁ」

 

「間違ってはいないんじゃない? ローサも強いと思うよ」

 

「いえ、まるで比べられるようなものではありません。姉は祖母に似ていると言われるので、多少は似たところはあるとは思いますが」

 

「お祖母さん? の方が似てんの? て言われてもなぁ」

 

「……前に会わせて貰った先々代当主?」

 

「あー、なんかお前ら二人だけで出掛けた時、会ってんのか」

 

「はい。先々代はシグルドリーヴァの再来といわれるほど似ているらしいです。って、あ、若い時のことですから、まるでお二人の参考にはなりませんけど」

 

「まぁ、そもそも何百年も前の人間捕まえて似てる似てないもねぇもんな。誰が言ってんだよ、んな適当なこと」

 

 

 俺は(・・)分かるけどな。

 本人が(・・・)見え(・・)ちゃいますから!

 ばーさんの若い時は無理だけど、アセウス大好き姉ちゃんと似てるかは見比べられるぜ。

 俺だけが出来る優越感にニヤニヤしていると、ホフディも何か言いたげな顔で笑っていた。

 

 

「エルドフィンの言うとおり、ワルキューレとなってからのシグルドリーヴァの活躍はとても目覚ましかったそうですよ。オージンはそれを喜び、彼の人に勝利を約束し、至上の盾を贈りました。私が試した魔法もこれについての逸話の中にあったものです」

 

「ふーん。出来る奴を可愛がるタイプってことか。盾が本当だったってことは、勝利を約束したってのも本当なんだろなぁ。勝利の約束ってなんだよ、ぜってぇー勝つって……あるかぁ?」

 

「ないよなぁ、普通に考えたら。盾が守る、負けないってことだと考えると、……勝つ、何かしらの攻撃武器のような気はするけど」

 

「……逸話の中には、勝利を約束され知恵と魔術を教わった、というものもあります。神話によれば、オージンは知恵と魔術を得るために、片目を失い、首を吊り、槍に貫かれ、自らを捧げた神ですから、そんな簡単に教えるとは思えませんでしたが……」

 

 

 ホフディが真剣な瞳で俺たちを見つめてくる。

 俺は思わず自分の右手首を掴んだ。

 分かってるから、言うんじゃねぇ。

 おしゃべりな右手首を押さえつけてる左手の方が震えている。

 

『秘められし知恵であり、大いなる魔術』となる『オージンの書』

 

 まんま、じゃねぇか。

 

世界樹(ユグドラシル)の一枝を手にせしもの、根源(みなもと)の力を得るだろう』

 

 ほんと、お節介なおしゃべりコア。

 だったら今どこにあるのかも教えてくれよ。

 勝利を絶対(・・)にしてくれる、チート級のヤバいもんなんだろ?

 そーゆー、気の利かねぇ中途半端なお節介は迷惑なんだよ。

 空気読めって、俺ら見て学べよ。

 

 ホフディが次の話を始めるまで、五分くらいあっただろうか。

 俺たち三人は、多分、同じ可能性(こと)を考えていたけど、誰一人言葉を発することはなかった。

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