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8 シグルドリーヴァの盾 

 ベルゲンに来て五日目、いよいよ開かずの部屋探索も大詰めを迎えていた。

 さぁ、「宝探しゲーム」を始めよう。

 物品についての覚え書きを手に、ホフディが「お宝」を読み上げた。

 

 

「一つ目、『オージンの書』」

 

「オージンの書?」 

  

「書物かな? この部屋にある書物は全部読んだはずだけど……」

 

 

 いきなり難題だ。

 俺とアセウスは顔を見合わせた。

 読んできた書物の内容を思い起こしてみても、「オージンの書」と特別に名づけられそうなものには思い当たらない。(俺についていえば書物の内容の記憶自体が大して思い当たらない……汗)

 あは! 俺とアセウスの表情(かお)のタイミング一緒か。「ギブ」と意見を求めるようにホフディを促した。

 

 

「『普遍の時を超え、望むもの(オースキ)の軌跡を記せり。秘められし知恵であり、大いなる魔術となる。世界樹(ユグドラシル)の一枝を手にせしもの、根源(みなもと)の力を得るだろう』と説明が書かれています」

 

「……エルドフィン、分かる?」

 

「フィネガンズ・ウェイクくらい分からない」

 

「俺にはそれも、ちょっと何言ってるか分からない」

 

 

 アセウス(おまえ)もサンドイッチマン好きなのか、と俺はほくそ笑む。

 せっかくなので、首を傾げるアセウスに「なんで何言ってるか分からないんだよ!」とツッコミを入れてやりたくもなったけど、フィネガンズ・ウェイクがストレート過ぎるくらいマニアックだったからなぁ。

 俺はワイプ芸人みたいに無言で大きく頷いて、MCホフディに丸投げした。

 頼むぞ、ホフディ。初手で決められなかった以上、こっからはアドリブだ。

 ノーお宝ノーアイディア。

 

 

「抽象的過ぎて分かりませんね。後回しにして、他を先に見ましょう。二つ目、『ヴァルキュリャの盾』」

 

これ(・・)じゃない?!」

 

 

 待ってましたとばかりにアセウスが声を弾ませる。

 棚の下の方から取り出した正円形の盾を、俺たちに見せるように構えてみせた。

 そっちにあったかよ~、くっそ~、まんま盾じゃねーか。

 嬉しそうなどや顔がまた悔しさを煽る。

 いやいや、まだ0勝1敗1引き分け。これから、これから。

 余裕な態度の俺様はアセウスが見せる盾を観察した。

 直径50cmくらいだろうか、真鍮色の輝きが装飾品みたいな、シンプルな盾だった。

 

 

「他に盾っぽいのもないしな、それで当たりかな。これの説明はなんて?」

 

「『勝利を決める者(ガグンラーズ)オージンが三番目の乙女に授けり。それは勝利をもたらす(ちかい)。すべての弱きものを恐れおののかす炎の神器。あらゆる邪悪や災厄を払う古の魔力を持ち、いかなる攻撃も傷付けることが出来ぬ至上の盾なり』とあります」

 

 

 少し物がぶつかっただけで傷が付きそうな鏡面を、触ろうと伸ばしかけた手を引っ込める。

 

 

「すげー、めたくそ強そう。説明が本当なら無敵の盾じゃん。オージン様がくれた神器ならありうるのか、って、三番目の乙女って……」

 

「ワルキューレのことかな、ヴァルハラに帰った時に置いていったんだろうか」

 

「そうでしょうね……三番目の乙女とは、ソルベルグ家からワルキューレに選ばれたシグルドリーヴァのことだと思います」

 

 

 三番目のワルキューレ、シグルドリーヴァ・ソルベルグ?!

 ホフディは思い詰めた顔をして盾とアセウスを凝視していた。

 

 

「ホフディ、何か知ってるのか?」

 

 

 アセウスが言い終わるより早く、ホフディは唇を震わせた。

 

 

「《Sigrd hjól(シグルド ヒョル)》」

 

 

 カッッッ――――! 盾が眩しく発光した。

 なんだこれ! まるで太陽っっ、目で見ちゃヤバいやつかっ!!

 とっさに固く閉じた目蓋の上を手で覆う。

 それでも刺すような圧倒的な光が容赦なく襲ってきた。

 

 

「ホフディっっこれって……」

 

「……ソルベルグ家に伝わる魔法です。まさか、ここに(・・・)実在していたなんて……」

 

 

 二人の言葉と、光が弱まったのを感じて、そっと目を開いた。

 なっッ! なんじゃこりゃあァッ!!

 3cm幅くらいの(プレート)が俺のすぐ近くまで、アセウスを中心に円を描いて……揺らめきながら浮いている。

 輪に取り囲まれたアセウスは頭に兜、首から肩そして胴体に鎧を装備していた。

 すべてが淡い黄金色で、曇りなく輝いている。

 アセウスの髪みたいだ、と思った。

 シンプルだった盾は複雑な装飾で重厚さを増し、同じような装飾が鎧の胸当て部にもアシンメトリーにほどこされていた。

 

 

「ほ、ほんまもんかよ……」

 

「困りましたね」

 

「「何故?」」

 

 

 俺とアセウスは声を揃えてホフディを見た。

 このスーパー黄金(ゴールド)聖衣(クロス)にはまだ秘密があるのか?!

 

 

「解除の仕方が分かりません」

 

 

 ……今その心配?

 それこそ、どうでもいいけどカルホフディ……。

 いや、どうでもよくないのか。

 なんかホフディ(こいつ)には勝てないズラ。

 表情から緊張感の解けない(美少年)イケメンに、俺はとりあえず完全白旗を上げた。

 

 


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