小さな小さな彷徨う銃火②
「エルドフィン ボナ ランドヴィーク」
シュウウウウウッ
頭上にサクラ色の光が広がったかと思うと、美しい黒髪が揺れた。
光に包まれたヴァルキュリャが3Dホログラムみたいに姿を現した。
ソグンはふわっと部屋に置かれた肘掛け椅子に着座する。
「御呼びでしょうか?」
「ウィッス! 俺の執事」
「??」
「昨夜はどうも。情報交換、かなりアンフェアだったみたいですねぇ。よく考えたら、俺の質問には大して答えて貰っていませんでしたし? 聞きたいことだけ聞き出していかれたようですねぇ」
俺は努めて、杉下○京のように淡々と語った。
相手のペースに持ち込まれたらダメだ。
こっちのペースに乗せるんだ、主導権を握れっ。
「質問には答えたつもりです。……ここはソルベルグ家ですね、由緒を失わないヴァルキュリャの一族です。何か教えて貰えましたか?」
「聞かれてないからエイケン家のヴァルキュリャが二人いる話はしなかったって? 『þǫgn』、沈黙とはピッタリな通り名ですねぇ」
「私を責めているのですか?」
「いいえー。学習しましたよってお知らせしただけですよ。ですから、もう少しちゃんと教えていただきたいですねぇ。まずは、十一人……いや、十二人ですか? のヴァルキュリャのことから一人ずつ」
やった! 俺の方に持ってこれたぞっっ。できるじゃんっ
「あぁ……紙とペンが欲しいなぁ、せめてメモ帳の入ったスマホがあればなぁ」
「紙とペンとメモ帳とスマホ、知らない用語ですが、説明してくれますか?」
ギョぇっっ! やべっっ
声に出してたか! 部屋で独りで喋ってた癖がこんなところで……っ(汗)
「はいぃ? ん? あぁ、別に大した意味はないよそこにはっ。紙は文字を書き記せる布みたいなやつ。ペンはそれに文字を残す方のインク……、黒い染料みたいなやつ。メモ帳はそーゆー書き記したやつをまとめて持ち歩けるようにしたデータベースみたいので、スマホはそーゆー便利グッズをまとめて代用できる板みたいな物!」
早口で誤魔化す。
データベース言うなって?w また説明要りそう、俺もそう思うww
つか、今までも会話に文明から発生した用語いっぱい出てるんだよな。
ハイファンなんだし、web小説なんだし、そもそも無理なんだって。
そりゃ、別の言葉を使って一見それっぽく雰囲気作ることは出来るだろう、でも
それだとポップさが減る気がするんだよ~
一言で言うとさ、
「野暮」ってやつよ。
誰にともなく言い訳していると
「それではダメなのですか? 貴方の持つ、イーヴル・アイのドロップアイテム」
「???」
俺はソグンの指し示す荷物袋からそれを出す。
手のひらサイズの四角い板。
黒曜石みたいな不思議な四角い石。
四辺を金属っぽい繊細な装飾が囲んでいる。
何か分からなくて、一緒にドロップした黄色いトゲトゲと一緒に袋に突っ込んであった。
黄色いトゲトゲは何個か落ちたし、外形から閃光玉だと勝手に思ってるw
「これ? 何で知ってるんですか?」
「三日前の魔物襲撃の話を教えてくれたではありませんか。ジトレフが部隊と話していた内容を聞きました。貴方がイーヴル・アイを倒しただろうことは容易に分かります」
「なるほど……」
ソグン、やっぱりキレ者なんだろうな。
もともとの情報量が違うし、張り合おうとか無駄ゲー。
永久脱毛全盛世界から来た俺は、ソグンに歯向かう気が瞬で失せた。
柄でもない特命係はもうリタイアしよう、そうしよう。
「OKハルヒコ、これ何なんすか?」
「ハルヒ?」
「違う違う、ハルヒコ。ハルヒはリアルではいいかなぁ、多分俺無理。あ、気にしないで説明どうぞ」
「?? イーヴル・コアと呼ばれるアイテムです。イーヴル・アイは本体が眼球と触手のみなので、記憶や情報処理のための脳部分をアイテムで代用しています。スマホという物に似てはいませんか?」
まぢかっっ!
ソグンの説明を聞く限りは、すっげーすっげーそれっぽいっっ
「どーやったら使えるんだ?!」
とゆーか、ソフトの問題もあるか……
「とても貴重なアイテムなので、使い方はまだそれほど解明されていません。ただ、イーヴル・アイと同様の使い方であれば、私の神の力が貸せると思いますが……どうしますか?」
「イーヴル・アイの使い方って?」
「身体に繋げて一部にします。どの程度の機能が使えるのかは不明、逆に元々のイーヴル・アイの情報が残っていれば……取り込まれる可能性もあります」
「ソグンの見解は? ソグンが俺だったらどうする?」
「それほど心配はないと思います。でなければそもそも言及しません。私がエルドフィンなら試してみます」
「なら、使ってみるよ。お願いします」
「分かりました」
ソグンが何か呟きながら両手をイーヴル・コアにかざすと、
イーヴル・コアから黒い光がもやもやと渦巻いて広がる。
禍々しいっ……
早まったかっ?!
もやが50センチ立方くらいまで広がると、その周囲を縁取るように、群青色の円光が回転し出した。
円光はもやを捕らえるように縮小しながら回転を続け、俺の手のひらに真っ黒な球体を描いた。
と思ったら激しい痛みと不快感が右手首から先を襲った。
う゛ぐぅぁあ゛っっっ!!
俺は思わず左手で右手首を強く握りしめた。
右手、あるか? 残ってるか?
溶けて捥げたかと思う感覚だった。
乱れる呼吸をしずませながら、恐る恐る右手に目をやると、
何事もなかったように、右手首から先がそこにあった。
そっと指を動かしてみるが、いつもと何も変わらない。
赤く跡がつくほどに握りしめていた左手をゆっくり離すと、
リスカゾーンに黒光りする1センチ幅程の線が出来ていた。
触るとつるつるしていて、皮膚が深いところから石化しているように見える。
正常な皮膚との境目に金属装飾の名残が残っていて、かさぶたみたいだ。
手首を動かしてみたが違和感はない。
身体の一部になったのか?
現世の俺は左利きだけど、やっぱり「ミギー」なのか。
ソグンに付けられた腕鎖も黒く右手首に光っている。
俺の右手、どうなっちまうんだろ。
「使い方は分かりそうですか?」
ソグンの声にはっと我に返らされる。
「どうだろな。メモ帳出来るか?」
俺は無意識に右手に問いかけた。
すると手のひらからホログラフィー映像みたいな紙が投影される。
すげぇっっっ!!( ̄□ ̄;)!!
『ヴァルキュリャメモ、とメモる』
『一旦終う』
『ヴァルキュリャメモを見る』
と脳内で命じてみると、投影された紙に「ヴァルキュリャメモ」と文字が浮かび、
映像が消え、また投影された。そこには「ヴァルキュリャメモ」の文字がしっかりあった。
「すげぇぇェェエーーッッ!!!!」
俺は思わず叫んだ。
ソグンはにこにこ見ている。
だからーっ。
母性溢れる微笑み。可愛い。好きっ。
「ぐふふふぁっ! そんな風に笑っていられるのも今のうちだぜっ。これを手に入れたからには、とことん答えて貰う。泣いて許してくれって言っても、俺を満足させるまで許してやらないんだからなっ。(夕飯まで)時間はたっぷりたぁーっぷりあるぞっ覚悟するんだな!!」
変な妄想がミックスされたセリフを俺は吐いた。……心の中で。
そんなキモオタテンプレのことなど知るよしもなく
ソグンはにこにこ笑って俺の言葉を待っていた。
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【獲得していたアイテム(イーヴル・アイからドロップ)】
イーヴル・コア 1個
閃光玉っぽい黄色いトゲトゲ 6個
【冒険を共にするイケメン】
戦乙女ゴンドゥルの形代 アセウス
オッダ部隊第二分隊長 ジトレフ
【冒険の協力者イケメン】
ローセンダールの魔術師 タクミ
ソルベルグ家当主 カルホフディ
【冒険のアイテム】
アセウスの魔剣
青い塊
黒い石の腕鎖
【冒険の目的地】
ベルゲン(現在地)




