Pain Is Love③
【ふりかえり】
幼馴染みのアセウスと俺、エルドフィンはフィヨルドの森ではぐれハイリザードマンと遭遇した。なんとか倒し、手に入れたのは、不思議な青い塊。
その夜、二人が宿泊した町を魔物が襲う。突如現れた超強かつ超絶可愛いゴンドゥルと契約を結び、伝説クラスの魔物イーヴル・アイを倒し、球体に捕えられたアセウスを救ったエルドフィン。
二人を怪しむオッダ部隊のジトレフに監視されながら、アセウスが狙われた理由を求めて北へと旅立ったのだが魔物に取り囲まれて……
地面にさした剣から数本の稲妻がほとばしるっっ
橙色の蛇に捕らえられたトロルは身体を跳ね上げ、大地に倒れた。
よっしゃっ!! いけるか?!
むくり、むくり、と頭や手足を振りながら
倒れたトロルは忌ま忌ましそうに立ち上がる。
ダメじゃぁ~んっっっっ 全然効いてないっ
ってかっっ、さっきより物凄ぉぉぉおい悪意を向けられてるんですけどっ!!
稲妻が当たってないやつまで、みんなして俺に飛びかかってきそう
何故何故何故っっ……って、待って…
取り囲まれた最初から一体も減ってなくね……?
俺とジトレフの攻撃じゃぁ、トロルになんにも出来ないんじゃ……
俺の頭に死の恐怖がよぎった時、ふわっと右腕に気持ちの良い感触がした。
セーラーコスチュームのゴンドゥルが絡みついて、
俺の右手をゆっくり開かせる。
そして、何かをゆっくり握らせると、
そのまま自分の手で包みこんだ。
「いや、悪くはない。いま一度……?」
至近距離で上目遣いに見上げられる。
……うさぎたんっっっっ
全然効かなかったのは分かってるけど、出ることは分かったんだ。
おねだりされたら出さねぇ訳にはいかねーよなっ!
さっきよりもつえぇやつ出してやるっっ
俺は握らされたアセウスの剣を地面にぶっさすと
さっきよりも思いっきり叫んだっっ
「ライトニング・フォール・スウィーピングエッジッッ!!!!」
ドオォォォンッッッッ!!!!
天と、魔剣がささる大地とを、一本の白く太い電光が貫いた。
魔剣から放たれる無数の稲光が周囲を埋め尽くしたかと思うと、
蒼白い龍が雷鳴と共に出現し、雷のような速さでトロルに襲いかかった。
稲光と龍に襲われたトロルは全身を黒焦げにして次々と消滅していく。
あまりの激しさに唖然とする俺。
まさに電光石火の勢いでトロルは一体残らず塵と化した。
「ぇ……なにこれ……」
「なかなか良かったぞ」
蠱惑的な微笑みを見せながらゴンドゥルはふわりと飛び上がる。
俺が声をかける間も無く、夜の闇に溶けて消えて行った。
……まぢか……トロル全滅させたのか……。
ハッとして、慌てて焚き火のほうへ走ると、アセウスは敷かれた獣皮の上で静かに眠っていた。
……均衡が戻ると召喚も解かれるのか?
なんとなく、俺はホッとしている自分に気がついた。
ゴンドゥル……ゴンドゥルのやつ……
「屍になれ」って言ったっっっ……涙
すっげーハート傷ついたっっ……
……断然アセウスの方がいいっっ
俺は、その日、真の意味で友情の尊さを知った。(と思う)
さて、気を取り直した俺は、焚き火から作ったたいまつと荷物袋を持って
トロルが落としたアイテムを回収することにした。
敵の数を数えていなかったのは失敗だったな。
こう闇夜だと、回収するのも難しいかもしれない。
お! おぉ! なにやら見たことない薬品小瓶に、金属加工品だと?!
目についたところを拾い集めただけでも、
腕輪、指輪、柄頭、拳保護具……
そういえばトロルって、物語によってはアイテム貢献してくれる味方で出てたりしてたっけ。
俺はうきうきしながら地面を探し始めた。
と、仁王立ちの黒剣士に気がついた。
あ……そうだ、こいつのこと忘れてた。
…………やべぇ、ゴンドゥルのことも見られたし、俺のチート魔力のことも……
あの夜の魔力のことを疑ってたんだ……バレたら、どう出る??
俺は恐る恐るジトレフの前に立ち上がると、ジトレフが何か言うのを待った。
ジトレフは面頬を下ろしたまま、微動だにせず突っ立っている。
長身の膝近くまで届く黒いマントが闇に溶けるように翻る。
夜の静けさに、ジトレフの兜から漏れる息づかいだけが聞こえるようだ。
兜のせいか? そういやダース・ベイダーみてぇだな。
さっきの活躍で、悔しいけど俺の中でのジトレフの評価は上がっていた。
高圧的で頑固なのは硬派の弊害でなのかもしれない……
…………………………………
………………
3分経過……(前世の食生活修行により俺は3分を時計なしで計測できる能力を持っている)
「おいっっ!! なんか言えよっっ!!」
さっきのトロル戦でマウントを取れたと思った俺は、強気になっていた。
だって、ジトレフが一体も倒せなかったトロルを、俺は20体以上瞬殺したんだぜ!
「スーハースーハー言ってねぇでっっ、なんか言いたいことあるんだろっ?! つーか、ずっとムカついてるから言うけど、人と話す時はこんなん脱げよっ!! お前ぇの仏頂面なんて(イケメンだから)別に見たくもねぇけど、失礼なんだよっっ」
黒い兜を掴んで、無理矢理脱がせた俺は、ジトレフをキッと睨んだ。
え?!?!?!
兜の下のジトレフはオッダ部隊兵営で見たジトレフとはまるで別人だった。
首から耳まで暗闇でも分かるくらいに真っ赤だ。
赤面した顔は荒い呼吸を抑えようと必死で、どっかの中学生みたいだ。
「お前……なにその顔……」
「……ッ!!?」
やっと俺の声が聞こえたのか、ジトレフはバッと両腕で顔を隠した。
「ねっ……熱がっっ……こもったようだ……、顔が熱すぎて、……ぼぉ……っと、していた……」
「ぁ、あぁ……熱そうだな……」
なんだか途端にジトレフがかわいく思えて
(そっちの意味じゃねーぞ、他愛ないやつって意味だ)
俺は荷物袋から取り出した獣皮を団扇代わりにあおいでやった。
…………………………………
………………
3分経過……(いつまであおがせてンだよ……)
使う? と獣皮をジトレフに差し出すと、ジトレフは少し迷った後、受け取った。
「俺、トロルの落としたアイテム拾うから、話あるならその間にして」
俺はそう言うと、しゃがみこんでアイテム探しに専念した。
「……あの夜も今と同じようだったのだな?」
しばらくすると、落ち着いたのか、ジトレフが聞いてきた。
低音ボイスの力がない。まぁ、あんだけ赤面してればそうか。
俺は黙って様子を見る。
「オッダ部隊の調査結果によると、あの夜、あの宿屋に出現した魔力は3つ。まず、大きなものと中くらいのものが2つ。そして、少し遅れて大きなものがもう1つ」
あぁ、やっぱり3つ目感知されてんじゃん。
「3つ目が出現した時に中くらいのものは消えている。アセウス殿の話によれば、中くらいのものは球体だろう。だが、大きな2つは共には消えていない。わずかな時間ではあるが、後から現れた魔力が大きく揺らいで、もう一方を飲み込んだと聞いている。そして消えた」
あらあら、そーですか。
随分優秀な魔力持ちがいるんだな。そんな細かいことまで自信持って分かるなんて。
少し探したけど20体分は拾えたので、俺は立ち上がってジトレフに向き直った。
「今も同じだ。魔物の魔力と大きな魔力、大きい方が揺らいで、魔物の魔力を飲み込んだ直後に消えた」
真っ直ぐにジトレフが俺に向かってくる。
バレた。
さぁ、どう出る。最強魔力を持ってる雑魚の存在に。
ジトレフは俺の前で立ち止まると、ぐわしっっと俺の両肩を両手で掴んで言った。
低音ボイスは復活していて、面頬なしでもサブウーファーがビリビリきいていた。
「あの美しい方が倒したのだろう!? あの方は何者だ?! 仲間か?! お二人とどういう関係だ?! もう一度会いたいっ!! いや会わせてくれっっ!! 部隊を捨ててお二人の仲間になってもいいっっ!!」
俺は42年で初めて、「今まさに恋に落ちた男」(無駄にイケメン)の顔を至近距離(たぶん10cm)で見たのだった。
―――――――――――――――――――
【倒した魔物】
トロル
【獲得したアイテム】
薬品と金属加工品 20個
【獲得したイケメン】
戦乙女ゴンドゥルの虜 ジトレフ
【冒険を共にするイケメン】
戦乙女ゴンドゥルの形代 アセウス
【冒険のアイテム】
アセウスの魔剣
青い塊
【冒険の目的地】
ベルゲン
【冒険の経由地】
ローセンダール




