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63 ハナから団子

「姿が見えないが……一緒に剣の稽古をしてたんじゃないのか?」



 何も知らないタクミさんは不思議がっている。

 邪念のない感じがかえって俺には後ろめてーっ。


 

「ジトレフなら買い出しに行ってる」


「ジトレフ一人だけ?」


「あいつ、何にも持ってないんですよ。荷物袋も防寒着とかも。だから、ロンダーネへの準備以前に旅の基本セットを用意してこいって、先に行かせました。午後、俺らも町へ下りて合流します。本来の買い出しをしに、な」


「なるほど」



 タクミさんが何か言いたそうな顔をしている。 

 ま、まさか、また心を読まれたのか?


 今日はそもそも、一日買い出しの予定だったのだ。

 朝食を食べたら町へ出発して、夕食前には帰るつもりでゆっくり買い物をする。

 ロンダーネへの旅の必需品だけでなく、タクミ邸での生活に必要なものも買っておこう、そんな計画だった。

 けど、朝飯を食べながら今日の予定の話になった時、ふと、俺は気づいてしまったのだ。


 え、何、この三人(・・)でぞろぞろお買い物するわけ?

 朝から仲良くお出掛けして? 

 いや、ない! 絶対ないわ! 

 町では手分けして買うにしたって、往復一緒で?

 何にも持ってなさそうなジトレフには買わなきゃいけないもんとか教えて、私物揃えるのを手伝ってやるわけ?

「これなんかいいんじゃない?」「必要か?」「うん、いいじゃんっピッタリだよ」

 っっていちゃいちゃカップルかよっ! 男同士でとかどんだけ仲良しだよっ!

 ないっ! 想像しただけで吐くっ!

 計画変更っっ!! 

 

 買い出しは午後からで間に合うんじゃない? とゴリ押し変更した。

 三人で手分けしたら三倍効率じゃんって今思いついたみたいなフリをして。

 もちろん、始めからジトレフを一人先に行かせるつもりだった。

 その時は言わなかったけど。

 タクミさんには良い顔したい、俺の印象操作だ。


 この(たくら)みが、実はバレてるとか……?

 何を言われるのか、俺は一人、ドキドキ怯えていた。

 だが、タクミさんの口から出てきた言葉は全然予想外の言葉だった。



「じゃあ、ジトレフには後でか。例の料理人を呼んだんだ、紹介しようと思ってさー。今、台所を見てる」


「「えっ?!」」


「軽く昼食を作ってくれるっていうから、一緒に食べよう!」



 うわっ出たっ!! ゆる~い大人の微笑み!

 やっぱカッケーっっ。

 俺は悪巧みがバレてなさそうなことにつくづくホッとした。

 


「俺らも何か手伝うよ、なぁエルドフィン」



 アセウスが腰を浮かせる。

 


「あー、どーだろな。あいつ、逆に嫌がるかもしれないなー」



 そう言いながらタクミさんが立ち上がった時だった。

 台所へと続く廊下から人影が現れた。



「タクミー、問題なく使えそう。もう作って良い? 大人四人だよなー?」



 くだけた様子で話しかけたのは、青年っつーより少年と呼びたくなるような、華奢な男だった。

 いや、少年という印象を受けたのは、外見よりもその声からかもしれない。

 立ち上がった俺たちからの視線を一気に受けて驚いたのか、男は顔を背けるように扉の陰に隠れたからだ。

 顔はほんの一瞬しか見えなかった。



「なんだぁー? しおらしく人見知りか? 大人三人だ。一人は出掛けたらしい。隠れてないで、紹介させてくれよ」



 タクミさんがニコニコ顔で扉の陰の人物へと近寄る。

 あぁ、向こうの心情にシンパシーだよ俺は。



「飯食う時でいーよ。今したところで詳しくはまた後で、だろ。俺はこれから昼飯用意するんだからよ」


「それがさ、手伝いたいって言ってるんだ、こいつら」


「それは無理! 俺の聖域には誰も入らせねぇっ。用意出来たら呼ぶから、それまで来るなよっ」



 少し高めの声がはっきりと拒絶した。

 その後パタパタと走るような足音が去る。



「とゆーことだ。あいつに任せて待っていよう」



 ゆる~い笑みのまま、イケオジは廊下から戻ってきて俺ら二人を座らせた。

 そやね。俺、料理とかなんも出来ねぇし。

 


「俺らより若そうだね。ぱっとしか見えなかったけど」


「だぁーな。何作ってくれるんだろ」



 ほんと一瞬だった。 

 ぼんやりとしか見れてねぇ。

 俺たちより背が低く、圧倒的に細く、色白。

 ジャ◯ーズアイドルみたいな美少年。

 そう、イケメンだったな。またかよ。もう慣れたけど。

 

 そんな風に一瞬を思い出していると、ぼんやりとした記憶が徐々に解像度を増してくる。

 お? これもイーヴル・コア効果か?

 仕事熱心な右手首を俺は撫でてやった。


 少年特有の中性的な顔立ち。

 驚いたようにわずかに見開かれた目。

 瞳の輝きを映したような黄金の髪(ブロンド)

 長い睫毛。


 すげー、そこまで見えるんかお前は。

 イーヴル・コアの映像解析のせいか、初対面じゃないような気になってきた。

 イケメンは皆似てくるからな。

 もーいーよ、見過ぎだろ、キモいっていわれるぞ。

 処理を続けるイーヴル・コアを止めた。 

 俺は人間(ひと)には興味ないんだ、タクミさんには悪いけど。

 

 俺の興味は、食事(メシ)っっ! 

 それを作る人はどーでもいー。

 

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