少女Aと魔法淑女(どちらも自分自身です)
メイクをしない理由、それは『色気づいている』と言われる事が嫌だからだった。
ロリータファッションを着るようになって直面したのが、メイク出来ない問題。化粧気の無い母にメイクの事を質問出来る筈も無く、Pop teenやKERA!というファッション誌を読んで見様見真似で始めたのが最初だ。厳密に言えば、中学時代の友人達とコスプレをする機会があり、100均のアイテムでなんとなく触った事だけはあった。きちんと理解して使っていた訳では無いので、目の周りを黒くして、大きく見えれば良いのだと思っていた。
しかしロリータファッションに合うメイクとなるとそうはいかない。ファッションなのだから、日常的にしていても変ではないメイクを習得しなければならなかった。ネットにはすっぴんでのロリィタは絶対NGだと書かれており、そうした者は吊し上げにされ、叩かれまくるのだとされていた。
ロリータファッションの為だと思えば『色気づいた』という言葉を無視出来た。大学に上がるまでお洋服の事は秘密にしていたが、実際は両親にバレていたと思う。否定も肯定もせず何も言わずにいてくれた事は、今思えばとても有り難かった。
切長の細い瞳。面長で、決して美人でも愛らしいとも言えない顔。
しかしこの顔を愛してあげられるのは私ひとり。
お気に入りの美しいアイシャドウ。
七色に輝くラメ。
薔薇色の頬紅。
瑞々しい果実のリップを塗れば『ロリィタちゃん』になる事が出来た。
初めのうちは不慣れで見れたものでは無かっただろう。周囲の顔面批評が気になり、自分の容姿に自信が持てなかった。
しかし、メイクをする事そのものが楽しくなり、周りの声より自分の声が大きく聞こえ始めた。
SNSに顔を晒すことなんて怖くて考えられなかったあの頃。
世間的に美人でなくても、可愛くなくとも、私は私のロリィタ姿が世界一だと胸を張って立っていられる。堂々と顔を上げて、自分への賞賛の声だけが届く都合のいい脳味噌へ合法改造。
立ち振る舞いも薔薇の如く淑女然としよう。
コスメは自分に自信をつけてくれる魔法のアイテムであった。
私を嗤う人の声はもはや私の心には届かない。
ロリータを始めたばかり、よく知らない時期を『ロリータ』
こなれてきた時期の描写では『ロリィタ』と表記しています。
とくに深い意味は御座いません。フィーリングで生きています。