問い
教室にやってきた 麓は
当然のように言葉を発しようとは
しなかった
椅子に座り直し
麓に
『 お前なにか 隠してるだろ
誰にも言っていない秘密を 』
と 僕は 解いた
彼女は 呆然と立ちすくしていた
『 昨日見たんだ お前と
小さな子供達が笑いながら遊んでいるところを』
麓の表情が変わる
『 ずっと 何も言わず 自分から動こうと
しないお前が なんで 2つの顔を
持っているのか 疑問に思ったんだ 』
麓の 額には少しの汗が 見えた
『 喋らないのはどうでもいいけど
ムカつくんだよ そういうの
何か 隠し事があるなら言えよ 』
僕は 彼女に問いただした
無音の空間に風が吹き荒れた
すると 麓は 震えながら 口を動かした
『 関係ない...』
そう 言い放った瞬間
颯爽と教室の扉を開け
走り去っていった
僕には 何がなんだかわからなかった
その時 僕は 1つの言葉を思い出した。
『 前に進むことは 変わることじゃなくていい
背中を押してくれる分だけの 後悔があれば
充分だ。 』
それは 亡くなる前 父が残した
最後の言葉だった
父は 僕が 幼稚園入学の時に
命を落とした
膵臓癌だった。
父の こともあり 母さんは変わってしまった
のかもしれない
父はいつも僕の味方をしてくれて
少し陽気な所もあり とても優しい人だった
父が亡くなったと知らされた直後
目の前が真っ暗になったような感覚がした
前を見る気力もなく 周りを見るのが
怖くなった、
何も見えない世界でたった1人
何をしていいのかもわからず 何をするのが
正解なのかもわからない
逃げ場の内 迷路の様な。
普段とは違う麓の姿を見た時
何かを感じたのかもしれない
自分と同じ何かを_