この場所で、力を示す為に
そろそろ本格的に物語が動き始め...る...かも!?
今回は2話くらい次のストーリーに繋がるお話です。
「さて、数年も刀を振り続けて、私と刀で語り合った。そして技も編み出した。今のお前達は技を一つしか持っていないが、それでいい。」
ユリちゃんの技が発現して数週間。
いつもの修行場所である師匠の家の庭園で、師匠は真剣な顔で私達に話をしていた。
「ユリ、お前は魔力を抑えて小威力で技を放つ。このデメリットを克服したな?」
ユリちゃんは顔を少し俯かせながら
「できたはできたんですが...3から4発ほどが限界で...」
と悲しそうに言う。
「いや、それでいいさ。1発しか撃てなかった技を3発以上撃てるようになったのは大きな進歩だ。」
そう言うと、ユリちゃんは明るい顔をしてよしっ!と小さい声で呟いていた。
そして師匠は私の方を向いて、
「カスミ、お前の弱点である夜桜一閃を撃った後の大きな筋肉痛と、技発動までの時間短縮。これは克服できたか?」
「いえ...時間の短縮は出来ませんでした。筋肉痛の方は、毎日技を撃っていましたし、多少軽減できました。発動後20秒ほど動けなかったのが、今では8秒前後までに減らせました。」
「む...そうか...8秒...。痛いな...この8秒はかなり大きな時間だ。実戦ではかなり弱点になる。少なくともあと半分は減らしておきたかったが...そこはユリに助けてもらうといい。」
「ユリちゃんに...?どういうことですか?」
もしかしてモンスター達を狩りに実戦しにいくのだろうか...?
私が何故かを問うと師匠は、
「カスミ、ユリ。お前達二人にはペアを組んで私の出ていた此処、日ノ国の武闘大会に出場してもらう。」
「えっ!?武闘大会!?無理無理!まだカスミちゃんも私もさっき言ったようにデメリットも完全に克服できてないですし、技も一つしかないんですよ!?」
驚きと焦りが混ざった声で師匠に反論するユリちゃん。
私も驚いているし、内心焦っている。ユリちゃんと全く同じ意見だ。
「どういうことか説明してください!どうしていきなり武闘大会なんですか!?」
ユリちゃんがそう言うと、師匠は鋭い目付きで私達に言った。
「強くなりたいんだろ。守れる力が欲しいんだろ。冒険者になるのも戦士になるのも、まずは力を示さないといけない。その為には、この日ノ国で力があると示さなきゃならない。そこで武闘大会さ。お前達二人には充分特訓させてきたと思っている。ここで優勝出来る力だって付いているはずだ。だから...私の最後の試練みたいなものさ。」
そこまで言うと、師匠は深く深呼吸し...
「━━武闘大会で優勝してこい。お前達の力の1ピースは、恐らくそこで集まるから。」
そう言って、久しぶりに見た優しげのある顔になり、微笑んだ。
「...っ。わかり、ました。武闘大会、参加します。師匠がそこまで言うのなら、私に言うことはありません。」
「ユリちゃん...。私も、参加します。ですが、お願いがあります。」
私は師匠と目を合わせて、深く礼をして告げた。
「私達の闘いを、どうか見守っていてください。」
それを聞いた師匠は、大きく笑って...
「アッハッハッハ!くっふふ...師匠である私が!お前達の勇姿を見届けないと思ったのか?そんな意地悪はしないさ。ああ。見守っていてやる。」
「っ!...ありがとうございますっ!」
「ありがとうございます...!」
もう一度深く礼をして、感謝を述べる。
私とユリちゃんはお互いに目を合わせて、微笑みながら師匠に背を向けて歩き出す。
「頑張ろうね、カスミ。師匠の為にも、私達が強くなる為にも。勝とう!」
「うん。絶対勝つ。約束。」
「ふふっ!小指出して!約束のおまじない!」
「はいはい、ほんとユリちゃん、このおまじない好きだね。」
互いに約束を誓って、数週間後に開催されるであろう武闘大会に参加受付をする為に会場へ向かう。
恐怖心か、闘争心か、緊張なのか。
胸が痛い。その痛みを隠すように、私はユリちゃんと楽しげに放つ。
━ユリちゃんも、同じ気持ちなのかな。
不安を感じながら。
目前の会場の扉を、私達は開く。
【簡易設定資料】
日ノ国・・・カスミやユリ達の住む場所。外側は和風ながらの街並みに、中心に寄るにつれて東洋のような街並みに変化する不思議な島国であり、島全体が大きな街となっている。
形は完全に北○道。
武闘大会・・・二年に一度開催される日ノ国伝統の大会。ここで優勝すると、冒険者や兵士になる際に大きな手助けになるそう。
カスミとユリの師匠もこの大会で優勝しています。