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かつて私達を見下した者達へ  作者: A-ten
カスミ視点
7/9

百合の花は冷たく凍りついて

今回はユリちゃんが主体のお話です。

どうぞ!

カスミちゃんが技を編み出して四日が経った。

今は技を強化しつつ、デメリットを減らす為に師匠が厳しく特訓している。

カスミちゃんの猛特訓を横で見ていたが、すぐに私の持つ刀に意識を向ける。



私の刀は、お父さんの蔵から引っ張り出してきた、中々面白い形状の刀だ。

その刀は、手に持つ柄の部分は長めで、両手で握ってもまだ握りこぶし6つほどのスペースが余るほどに長い。

それとは逆に、刀身の部分は異常に短い(・・・・・)

握りこぶし2つ分しか無い短い刀身なのだ。

刀身に描かれているのは青い綺麗な花が描かれている。

しかしその刀身は青い花とは真逆に深紅に染まっている。



そんな美しいが使いづらい刀を私は見つめ、前に見たカスミちゃんのように意識を預け、集中する。

身体の力が刀に流れる感覚。

しかしここから先が上手くいかない。



「━━っはぁ...!はぁ...ふぅ...やっぱり疲れる...」

(ダメだ...カスミちゃんに教えられた通りにイメージしてるのに...全然上手くいかない...)

「ダメダメ!もう一回...刀に...意識を...。」



もう一度。教えられた通りに集中する。

だが、それは横から師匠に声を掛けられた事で集中が途切れる。



「おい、ユリ。何か余計な事考えながら集中してないか?」

「んぇ?余計な事...?考えてないですよ?」

「...カスミのようにやってるだろ、お前。」

「...?はい、そうですけど...」



師匠の言う通りだ。

カスミちゃんのように(・・・・・・・・・・)集中している。

それのどこがいけないのだろう...?



「カスミから教えられた事は大事だ。集中も、刀に意識を預ける事もな。それは私だってしている基本だからだ。だがな、ユリ。真似事じゃ刀はお前を認めないぞ。」

「え...?真似事...?」



そして、私ははっとして気付く。

カスミちゃんから教えられたのは、師匠が言ったように集中する事。刀に意識を預ける事。

その二つ以外に、私は余計な事をしていたと気付かされた。



「カスミちゃんみたいに、なりたいと思って...月と桜もイメージしていたんだ、私は...。」

「そうだ。カスミに追いつきたいなら刀に食らいつけ。自分だけの型を見つけろ。でなきゃお前はいつまで経っても技を編み出せない。」

「っ。はい!」



━━そうだ。私はカスミちゃんに追い付かないといけない。

追い越していくつもりで強くならないといけない。

小さい頃に、守るって誓ったんだから...。



「...ハァァ.......。」



息を吐く。身体から酸素を全て吐き出し、意識も想いも全て刀に込める。

速さも要らない。力で押さない。

これは守る為の技。守る為の力。守る為の刀。

“刀で守り”、“私が護る。”

守る為の強靭な堅さ(・・)を誇る属性。

その冷たく堅い属性が、短かった私の刀身を伸ばす。

冷たい冷気が刀から漏れ出す。



「!これは...青い、花...?」



冷たい冷気と共にユリの周りには青い花が生まれていた。

その花を見つめていると、横からカスミが息を切らして駆けてきていた。



「はあ、はあ...これは...アメリカンブルー?それに、この気は...ユリちゃん、まさか!」

「あぁ。生まれるぞ。あいつだけの刀技が!」



目の前のユリに目を向ける。

カスミが言っていた“アメリカンブルー”という花。

その花と、地面が徐々に凍りついていく。

暑かった辺りは、いつの間にか真冬のように寒かった。

そして、氷で伸びた刀(・・・・・・)が、ユリの前に置いてある案山子を一撫でする。



「...“氷の型-一の舞-”。」



そう呟いた瞬間。目の前の案山子が一瞬で凍りついたと思えば、案山子を中心に大きな氷の柱が生まれた。

その氷の柱を認識したのも束の間。その氷の柱は崩れ落ち、中心にあったはずの案山子が消えていた(・・・・・)



「なんて...技だ。体の魔力全てをこの技に注ぎ込んだのか...!?」

「一撃に全てを込める...ふふっ、ユリちゃんらしい...守る為の力...か。」



そして私は、ユリちゃんの方に目を向ける。

そうすると、ユリちゃんは私と師匠にこう言った。


「刀身は短くて、斬るのが難しいから...氷属性で短い刀身を長くして、対象に接触させる。そうするだけで、一瞬で凍りついて、相手を氷そのものにしちゃう。」



魔力の消費が激しいのだろう、一つ一つ感覚を開けながら話していた。

そして、限界が来たのか、魔力の使いすぎでユリちゃんは倒れた。



「ユリちゃんっ!」

「ユリ!」

「だ、大丈夫...ご飯食べて休めば...この、技...名前...カスミちゃんが、決めて.....すや...。」



そう言って、ユリちゃんは寝息をたてながら眠りについた。

...それにしても、あの技。威力がかなり高めだな...そう私が思うと、師匠が話しかけてくる。



「━はぁ...全く、困った弟子だ...。魔力を全部使った一撃なんて。1日一回しか撃てないだけじゃなく、実戦でも使いづらい。だが、圧倒的に脅威な技。癖があるな...」

「あはは...癖があるのも、ああいう技を使うのも...ユリちゃんらしいです。本当に。」

「魔力の消費を減らしつつ、威力を下げ、連発できるような特訓をさせないとな...先が思いやられるよ...。で、カスミ。技の名前、どうするんだ?」


技名。ユリちゃんは氷の型と言っていた。

技のインパクトさと第一印象で、私はこう名付けた。

多分、私と似たような技名にした方がユリちゃんも喜んでくれるだろうから。


氷の型・一の舞 <存在氷結>、と。

ユリちゃん編でした。

次回は敢えて出さなかった、ユリちゃん達の住む場所の説明と、そこで行われる大会のお話です。

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