初めて出会った頃の記憶・後
後編です。ユリちゃんのロリ母性が発揮されます。
やっぱこの子色んな意味で濃いよね。
私は、傘をさして急いで女の子の元に駆けた。
でもその女の子は、私が近づいて傘をさしてあげても、気づいていないのか。
虚空を見つめている。
「ねえ、きみ!大丈夫?こんな雨の日に外に出ると風邪ひいちゃうよ!こっち来て!」
私はその子が風邪を引かないよう、家に招き入れて、暖かいお風呂へと入れてあげた。
身体を拭いて、暖かい部屋に迎えて、お母さんが用意してくれていたであろうスープを食べさせた。
なんで知らない子にここまでしてあげたのか。
当時の私は分からなかった。
友達が欲しかったか。目の前の子を見捨てられなかったのか。
「ほら、スープ食べて!身体をとにかくあたたかくしないと!」
「...ぁ」
全然食べてくれようとしない。
無理やり食べさせようとすると、彼女が小さく口を開けてくれた。
「なんだ、聞こえてるじゃん!ほら、あーん!」
「...んぅ」
よかった。食べてくれている。
二口目を食べさせようとすると、今まで言葉を発さなかった目の前の女の子が、口を開けた。
「...な、んで...たすけてくれたの...?」
か弱く、細い声だった。まるで、助けを求めているような。そんな、悲しい声色だった。
...幼かった私でも、この時は理解した。
━━もう、手遅れだったのだろう、と。
「...うーん。なんでって言われても。私は!正義の味方なのだ!ってね!あなたを助けなきゃって思って、体が勝手に動いたの!」
「...そう、なんだ.......へんな、ひと」
グサッ。心にダイレクトアタックされた。
「失礼な!変な人とか!名前も分からない人から変な人認定されたのはじめてだよ!」
「名前が分かる人からは変な人認定されたの...?」
「...........................私、ユリって言うの!ねぇ、あなた名前は?」
これ以上はいけない。私のHPがもたない。
泣き出しそうだ。誤魔化すため、目の前の子の名前を聞いた。
「...ふふっ...ごまかした...私の、なまえ...カスミ...。カスミっていうことしか...私のことがわからないの。」
「...そう!分からないなら分からないままでいいの!いつかきっと思い出せるから!」
「...ほんと?」
「うん!私が協力してあげる!だから、私達は今日、今!友達になったの!よろしく、カスミ!」
「...ともだち...」
友達。その言葉を聞いて、カスミは涙を流していた。
眼に光を宿して。
「わああ、どうしたの!?私と友達になるの嫌だった!?」
「ふ、ふふっ...あはははっ!ううん!なんだか、ぽかぽかしてきちゃった!すっごく、嬉しい!」
「...!そ、そう!く、くるしゅうない!」
口調が変になる。目の前のカスミが、本当に心から直接伝わってくるくらい、嬉しいという感情が溢れていた。
それを見て、なんだか気恥ずかしくなってしまった。
いつか、カスミが幸せになれるように。
もう二度と、あんな目をしないように。
私が傍でカスミを守っていないといけないんだ。
ユリちゃんええ子や...
次は本当にユリ視点で技を編み出します。
ユリちゃんの刀、特殊な形状なんですよ。
次回、それに触れます。