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2人の百合百合恋物語  作者: イカリング*7 8 3
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第10話 1人

だんだんと薄れゆく意識の中で、三浦まりか先生の声が微かに聞こえる。


「何か案はある人。発言しなさい。」


今度は誰の声も聞こえない。

もう耳も満足に使えないほど私の意識は奥深くまで沈んでしまったためか、単に教室全体が静かなだけなのかは私には分からないが……。


「なんだ何も無いのか?」


先生の声が私の脳内の中で微かに響くがもうそんなことも気にする気力もないので、このまま意識の流れ着く方へ身を委ねてしまおうかと思っていた時


「じゃあそうだな……白崎。」


唐突に名前を呼ばれ肩をビクリとさせる。反射的に椅子からヨロヨロとした様子で立ち上がり閉じていた瞼を開く。

しばらくの間、光を取り入れていなかった目は、直ぐには周りの明るさに適応することは出来なかったようで、視界がボヤけている。

しかし、だんだん慣れてきたのか徐々に周りの景色に焦点があっていく。それと同時に意識も少しづつだが覚醒していく。


「はい。なんですか?」


まだ意識が完全に覚醒したわけではないので、少し弱々しい声で返事をする。


「なんかないか?」

「いや~ちょっと……」


私が言葉に困っていると、私の声のボリュームや体の動きを見て先生が察したように言ってきた。


「白崎……寝てたな……」

「うぐ」


図星である。正確に言うと寝かけていただが。そのため、生活委員の集まりなので、生活委員に関係することは分かるのだが今何について話し合っているのか分かっていない。

だってしょうがないじゃん。昨日寝るのが遅かったんだから。と言い訳を心の中で呟く。


「はぁ。まぁお前は真面目だからな。今日だけは許してやる。」


と三浦まりか先生は「しょうがないなぁ」というような顔で言う。


「すいませんでした。これから気をつけます。」

「うん。よろしい」


笑顔になった。この人こういう顔でずっといればモテるのにn『シュッ』

チョークが飛んできたからこれ以上その事について考えるのをやめた。私の耳の数ミリ隣に飛んできたのだ。

教室は相変わらず静かだ。ただ先程より空気が重苦しくなっているのは私の気の所為だろうか。いや気の所為ということにしておこう。


「ごほん。来週から始める“清掃真面目にしましょう週間”についての具体的にどういうことをするのかの案が欲しくてな。今のところは『時間いっぱいやる』『自分の担当場所が終わったら他の人を手伝う』

が出ているんだが校長先生が3つは欲しいと言うんでな。白崎なんか考えてくれ。」


と言って黒板を中指の第二関節でコンコンと叩く。そこには『清掃真面目にしましょう週間の案』と書かれていてその下に『・時間いっぱいやる』『・自分の担当場所が終わったら他の人を手伝う』と書かれていた。

丸投げだなぁ~と思いつつせっかく任されたのだから頑張ろうと思い、考える……。

とりあえずぱっと思いついた案があったので言ってみる。


「静かにやるとかどうですか?」

「うん。いいなそれ。じゃあ決定。朝クラスメイトに連絡しといてくれ。じゃあ解散。」


とあらかじめ用意していたからのようなセリフを言って、右手の手を振りながら教室を出ていった。

この人やる気あるのかなと苦笑いしながらとりあえず終わったは終わったので、教室に私も戻ろうとする。すると


「あの白崎さん」


不意に声をかけられた。声のした方を振り返るとそこには私と同じクラスの生活委員。たしか名前は山田光輝くんだ。その子がたっていた。


「ん?何かありましたか?」

「あの~良かったら一緒に教室まで行きませんか?」


どうやら一緒に教室に行こうというお誘いらしい。


「ごめんなさい。私昇降口で友達を待たないといけないので。」


そう友達だ。奈々ちゃんは。そう考えるとまた心が痛くなる。『触れたい』けど触れられない。ずっと隣にいたいけど居てはいけない。そんな行き場のない、どうしようもない気持ちが心の中を渦巻く。


「あっそうでしたか。ごめんなさい。」


その言葉ではっとなり考えを断ち切る。

そしてまたそんなことを考えてしまっている自分に嫌気がさす。

友達と言うくせに、いつまでも好きでいて割り切れない。でも奈々ちゃんの笑っている顔を見ている時や、名前を呼んでくれた時、明らかに胸の鼓動が早くなって奈々ちゃんに『好き』という感情がより膨らんでいく。そんな自分に。

そう考えると心の底が浮いているような気持ちになった。すると胸が締め付けられ、足の裏が何かに触れられているかのような感覚に襲われた。

自然と表情が暗くなる。


「どうしたの白崎さん?大丈夫?」


その言葉ではっとして笑顔を取り繕う。


「大丈夫ですよ。じゃあまた教室で」


そう言うと山田くんは顔をパァーっと輝かせ


「良かったです。また。」


と返事をして教室を出ていった。

何時もならさっきまでの思考を振り切って別のことを考えるだろう。ただ今日はそんな気分になれなかった。

そんな気分もこの気持ちも、奈々ちゃんに会えば無くなるかな?と思い教室を出て、昇降口に向かう。そろそろ奈々ちゃんが来る頃だ。別に奈々ちゃんに頼まれた訳では無いのだが、奈々ちゃんと一緒にいたいと思ったから行くことにしたのだ。 今はその気持ちが凄く強い。

奈々ちゃんに会えばこの気持ちを知れるかもしれないのだ。

奈々ちゃん1人で登校できてるかな?

奈々ちゃん1人で登校して寂しいかな?

私が待ってたら喜ぶかな?

そうやって、幸せそうにしている奈々ちゃんの姿を考える。それと同時にこの分からない気持ちも膨らんでいく。『好き』を考えているはずなのに、心が溶けて無くなっているように感じる。

それを誤魔化すためかわたしは無意識に階段を駆け下りていた。

鼓動が早くなる。階段を駆け下りているせいか、この気持ちのせいかは分からない。

そして1階の下駄箱につき、奈々ちゃんが来るのを待つ。

すると1分もしない内に奈々ちゃんが見えた。佐藤さんと並んで登校している幸せそうな奈々ちゃんを。

いつも読んでいただきありがとうございます。

なんとこの作品がブックマーク件数(?)10件になりました。10件になった時は「やった、やった。」と裏声を出して喜びました。これもここまで読んでいてくれた皆様のおかげです。本当にありがとうございます。


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