生贄達の舞踏曲 Ⅰ
八割がた書き終わったデータが消えてしまい遅延、よく見たら「このページではデータ保存ができません。」って書いてある......。
宇宙暦947年5月27日、星間標準時05:00
ブルネイ星系 惑星ブルネイⅣ軌道上、
惑星連合軍第1088補給警備基地
茫漠たる虚空が広がる宇宙空間、
遠く離れた恒星が届ける弱々しい陽光に照らされて、惑星ブルネイⅣは夜空に浮かぶ千切れ雲のようにその巨影を宙に浮かべていた。
およそ三世紀前、始めてこの星系を訪れた開拓者が自分の故郷に因んで名付けたブルネイⅣは、名付け親となった南洋の港町とは似ても似つかない酷寒の惑星である。
ブルネイ星系を構成する五つの惑星の中で唯一の地球型惑星ではあるものの、少しばかり公転軌道が大き過ぎたせいで氷河に覆われた地表を暴嵐が吹き荒れ、レベルⅡの環境改造を施してなお地球の両極を軽く上回る寒さだ。
第二次宇宙開拓時代の終焉は他の多くの開拓惑星と同じく、ブルネイ星系に速やかな衰退をもたらした。
僅かばかりの天然資源を採掘していた地上施設は閉鎖されて久しく、宇宙暦947年現在、星系に残る人工物は全てこの惑星の軌道上に存在していた。
純白の星の衛星軌道上を周回する合成金属の塊、惑星連合軍第1088補給警備基地、通称“ウルシー”は有史以来多くの宇宙構造物と同じく、無数のモジュールブロックの集合体だった。
全長1kmを超える円筒形の動力区画ではCクラスの大型縮退炉が稼働しており、生成されたマイクロブラックホールがこの基地が消費する莫大なエネルギーを賄っている。
円筒形の本体から外付け式の拡張区画がブロック状に張り出し、十字架を作るように巨大な宇宙桟橋が併設されていた。
軍用基地としては比較的小さい部類に入る”ウルシー”だが、二箇所の軍港におよそ100隻の航宙艦が停泊可能な桟橋を備え、駐留する惑星連合軍第748任務部隊の戦闘艦と支援艦艇が60隻ほど在泊している。
中枢たる動力区画を中心に回転する重力ブロック、俗に”観覧車“と呼ばれる有人エリアでは、それらの艦の乗員と基地要員併せて一万名余りが生活しており、支柱と直径5kmの巨大な輪状の建造物で構成された区画内部は慣性制御によって惑星の地表と同様の重力が再現されている、
基地の司令室から食堂、宿舎まで、ちょっとした街ほどもある区画内にはおよそ文明人が必要とするあらゆる設備が網羅されており、中には娯楽施設や訓練施設も存在し、むしろ基地要員1万数千名が住む小さな都市と言っても過言では無い。
そんな"ウルシー"は、人類が辛うじて保持する星系の最も外側、俗に第一外郭防衛線と呼ばれる危険地帯の一つだった。
航空戦艦にはやっぱり夢がある。
伊勢、日向が航空機を満載した様子は一度見てみたかったですね、憎むべし台湾航空戦。
本作の参考にさせていただいた福井静夫氏の「日本戦艦物語」は航空戦艦の設計思想についてかなり詳細に書かれているので興味のある人はぜひ。