鐘の雫
ゴーンゴーンゴーンゴーン......
窓の外から除夜の鐘が聞こえてくる。俺は動かない体を押して、顔を向ける。
夜空には雲一つなく、明るい星空が珍しく広がっていた。
もう永くないかもな、なんて悲観的なことを考え、自嘲する。
らしくないな……すぐにまた動けるようになる。
そう思考を切り替え、眠りにつく。
..........』を取得しました。『祝福の鐘』『呪詛の鐘』『導きの鈴』は『共鳴鐘楼』へと進化しました。スキル『焚火』を習得しました。》
《スキル『共鳴鐘楼』は『迷走者』と統合、『鳴奏者』へ進化しました。『奏者』は吸収、統合されま..........
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恥の多い生涯を送って来ました。
なんて、有名作品のような事を思う。これはきっと走馬灯なのだろう。
普通の生活というものを知らなかった。俺は九州の田舎で生まれ育った。21世紀の現代にあって、想像を絶する秘境というほどではないが、田舎暮らしの移住先に選ばれる程度にはド田舎だ。
子供の頃から病弱で、寝込むことが多かったが、田舎で静養とか嘘だ。いや、こんな農村みたいな場所じゃなく高原の別荘地みたいなところならよかったのかもしれないが、比較的海に近かったにもかかわらず、俺の身体はよくなることはなかった。
俺はいつも地獄の思いでいたのに、周りはいつものことと思うようになっていった。いつの間にか家族ですらも……
学校ではいじめられた。コミュ障になった。
……考えれば考えるほどわからなくなる。自分一人が全く変っているような、不安と恐怖に襲われる。他人とほとんど会話が出来なかった。何を、どう言ったらいいのかわからない。
そこで考え出したのは、道化だった。仮面をかぶり、ホラを吹き、太鼓を持ち、おどけて見せる。
自分の言動に、みじんも自信を持てずにいた。
卒業してからもずっと。
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本当に身体がだるかった。起きていられそうにない。
目を閉じ、意識を手放した。
なにか、予感めいたものがあったのかもしれない。症状の重さだとか、そういう具体的なことだけでなく、いつもの事だと思えないなにかが。
《スキル『福音』を取得しました》
結局、俺は新年を迎えることはできなかった。